だが、心のどこかで否定しきれない思いがあった。「もしかして……本当のわたしを見てくれている?」 その考えは、まるで焚火の炎のようにゆらめき、消えそうになりながらも、確かにそこにあった。 彼が他の貴族とは違う。 彼は社交界で交わされる虚飾の言葉ではなく、ただの「エリシア」として声をかけている――。 その気づきが、彼女の心をさらに揺さぶっていた。 ――あれ……? わたし、返事をしたかしら? お礼を言った? ドキドキするあまり、さっきの出来事がうまく思い出せない。 鼓動の音ばかりが気になって、考えがまとまらない。「焼けたぞ、食べるだろ? 俺の手作りだぞ?」 ユウの声が、すぐ隣から聞こえた。「レオも旨いって言ってたほどだぞ! あ、手で持つと汚れるな……ほら、持っててやるから、かじってくれ。」 エリシアは、目を丸くする。 ……え!? そんな、はしたない……ことなんて、できる訳…… ――俺の手作り……ユウ様の手作り……頭の中で何度も繰り返される言葉。 悩んでいたことなど、まるで気にも留めず、彼はいつもの調子で話しかけてくる。 その無邪気さに、戸惑う。 だが――「うぅぅ、あ、あぁ~ん……はむっ。」 かじった瞬間、口いっぱいに広がる香ばしさに、思わず目を輝かせた。「……うわぁ。おいしいっ。 おいしいわ、これ!」 驚きと喜びが入り混じる声が、自然にこぼれた。 焚火の温もりの中、彼女はただ、味を楽しんでいた。 そして、彼の隣で過ごすこの瞬間を――。 はぅぅ……これ、恋人同士みたいじゃない…&hel
Last Updated : 2025-11-06 Read more