All Chapters of R18 転生して森で暮らしていたら王女様を拾いました2章: Chapter 61 - Chapter 70

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第61話 野心と妬みが招く破滅

 後日――穏やかな市場の喧騒の中、俺は八百屋で過ごしていた。 すると、衛兵が慌ただしくやってきて、報せを伝えてきた。「領主に捕らえられた者は、もともと領主へ野菜を卸していた八百屋の者でした。」 不穏な情報だった。 どうやら、エドウィンに任せた八百屋を捕らえ尋問をしているようだ。俺たちが卸先や客を不当に奪ったという理由らしい。なので嫌がらせをし、デマを流していたらしい。 それだけでは終わらず、盗賊や落ちぶれた冒険者を雇い、単なる嫌がらせを超えた"人攫い"や"危害"を企んでいたという。 その企みの現場が押さえられ、現在厳しく取り調べが進んでいる最中らしい。 ミリーナもその話を聞くと、すぐに同行を申し出た。「私も行きます!」 役場の隣にある裁判所のような建物へ向かうと、緊迫した空気が漂っていた。 結果的に、交渉というよりは―― 一方的な命令のもと、新たな仕入先に卸先を手に入れる形となった。 領主の意向に逆らい、悪党を雇うような者と取引をしたいと考える者はほとんどいないだろう。 今回の一件を知った者は、もしその八百屋の者が気に入らないと思ったら、何のためらいもなく危害を加えてくる可能性があると考えるはずだ。 さらに、領主に逆らい、すでに目をつけられている者と取引を続けていれば、いずれは自分たちまで巻き込まれることになる――。 うちの店は、かなり急成長しているな……もはや町の中心的な商家のようだ。 ただの小さな八百屋だったはずが、今や領主、貴族、宿屋、料理屋、商家と幅広く取引を行う規模へと拡大している。 扱う品も野菜だけではなくなり、商売の幅は次第に広がっていた。「魔石や素材も売る」というアイデアは興味深い。 高級な宿や料理屋では、魔石を使った特殊な調理器具が求められることもあるし、貴族や商家は魔道具の取引を頻繁に行う。 さらに、戦士や冒険者向けの素材を扱えば、新たな市場を開拓できるだろう。 問題は、どう流通させ
last updateLast Updated : 2025-10-21
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第62話 ノアの能力

 魔石がなにやら反応し、魔石の魔力が蠢き徐々にきれいな輝きに変化する。魔石が透き通るようなきれいな見た目に変わった。俺が持っていた物とは、まるで別物になった。「……え? お、お前、なんか特殊なスキル持ちなんじゃないのか?」ノアが今まで、魔石なんて触る事や見ることもなかっただろうし。気づかないよな。っていうか、こんな短時間で魔石の純度を上げたっぽい。純度を上げたことにより、魔石の魔力が安定してるな……かなりすごいんじゃ? 俺には、魔法の付与や魔力の増幅はできるけど。あ、あと融合か。能力というより収納の機能で細かな魔石の融合に調合だ。俺も純度を上げようと思えば、できなくはない。だが、面倒な工程が多そうな気がする。「疲れとか、体がだるいとかないか?」俺は、子どもの頃に気配を消すスキルを使い続けて気を失ったからな……「うん? だいじょうぶだぞぉ! げんきぃー♪」にこっっと笑顔で言ってきた。 こんなスキルというか能力があると分かってしまった。ノアの想いを聞き、保護をしなければ……他の奴に知られればノアの身が危険にさらされることになる。「何度も聞くが、ホントに俺で良いのか?」真剣な表情で確認した。「あはは、うん。何度も答えてるぞぉ。ユウ兄が良いぃ。だってぇ、優しいしカッコいいし、大好きだぞぉ♡ なんだも言わせるなよぉ……いちおう、これでも恥ずかしいんだぞっ。」ノアが言っている通りに、実際恥ずかしそうに頬を赤くさせていた。「俺と一緒に仕事をするか? 金が儲かるかもだぞ? お金に困る暮らしをしなくて済むかもな」ノアの将来も考えないとな。「するぅ♪ でも、お金儲け……は、やめとく。こぇーって。お金は、ユウ兄に任せるぅ……おれ、お金にこまってねぇしぃ……。今のままで良いやぁ。」と言い、俺に寄り添ってきた。 これ、レイも同じことを言ってたよな……「自立して、自分
last updateLast Updated : 2025-10-22
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第63話 ノアとの二人の時間

 隣に座るノアを持ち上げて膝の上に座らせた。普段は、なかなかイチャイチャできない。ノアが男の子として過ごしているからだ。 堂々と男の子でも、俺の膝の上に座り甘えてくるレオは特別だ。王子に文句を言える者などいない。ユナやレイでも。あぁ、でもエリーは言うか。「い、いいのかぁ? おれたち、恋人……なのか、わぁぁ、ユウ兄ぃ……すきぃ♡」慌てていたノアだったが、膝の上に座った途端に甘えだした。「しかも、今なぁ……俺たち二人っきりだったりするんだが?」膝の上に座る、ノアのお腹を撫でるように触った。「わっ、え……あぅ♡ ユウ兄ぃ……変なこと言うなよぉ……。んぅ……♡ なんか、ムズムズするぅ……。これ、ユウ兄ぃのせいだからなぁぁ! ん、んぅ……♡」 ノアが目をキラッと輝かせクルっと向きを変え、俺の胸に抱き着くと俺の唇にちゅぅぅ♡ と唇を重ねた。ずっと我慢していたようで、目が潤んで輝いて見える。と言っても、ノアとは面倒を見るという名目で、風呂はいつもいっしょだ。それに普段からベタベタしてくるし、キスやエッチをしているんだが……。 毎回、隠れてイチャイチャしていて、こう堂々とイチャイチャできることは少ない。 ちゅっ♡ ちゅぅ♡ と軽く俺にキスを繰り返し、満足そうな顔をして徐々に蕩けそうな顔をしているノア。興奮してきたのか、俺に跨りアソコを押し付け動き出した。「ユウ兄ぃ……ん、んぅ。な、なぁ……ユウ兄ぃ……も、興奮してるのかぁ? んふふぅ♡ 大きくなってるぞぉ……。」俺の胸に頬を着け、はぁ、はぁ……と息を荒くする。 ノアはショートパンツにシャツ姿で中性的だ。一見、男の子に見えるので町中を歩いていれば、女の子の視線を集めるくらい可
last updateLast Updated : 2025-10-23
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第64話 ノアが解放感で

 俺に抱き着くノアが、膝をがくがくと震わせ力なく俺の膝に座った。「ご、ごめんなぁ。気持ち良くてぇ……でちゃった。……お、おわびにぃ……何でもしてやるぞ。」少し期待をした顔をして言ってきた。 とはいえ、何でもしてもらってるしな。むしろ、なにをされたいんだ?「そうだなぁ……思いつかないから、頼みたいことがあったらでいいか?」「え? ま、まぁ……いいけどぉ、お手伝いとかじゃなくて……その、えっちな……お願い限定だぞぉ?」ノアもエロくなったな……お年頃だもんな。「それ、いいな。ゆっくり考えてお願いするな。」「ユウ兄ぃのお願いかぁ~なんか、こえーなぁ……♡」何やら期待をした顔で呟いた。 再びくちゅくちゅ……♡ と腰を動かし、俺のズボンがノアの愛液でシミが出来濡れる。 ノアは、そうとう興奮してるんだな。「直接、擦らなくても良いのか?」「直接が……いいけどよぉ……。ユウ兄ぃが脱がねーんだもんっ。嫌なのかと思ってぇ……」どうやら、俺に気を使ってくれたらしい。目を逸らし恥ずかしそうに言った。「嫌なわけないだろ。ノアが落ちないように支えてて、手が塞がってるだけだしな。嫌だったら膝に乗せないだろ?」「んふふ。だよなぁ~! 嫌だったらぁ……舐めたりもしないかぁ……♡ 来たねぇって思うだろうしぃ……」そう納得すると顔を赤くさせた。「ユウ兄ぃ……が、おれをなぁ……ほんとに好きなんだなぁ? えへへ♪ じゃ、おれが……脱がしてやるよ。」 ノアが、ちょこんと地面に降りると俺のズボンに手を掛け、俺が腰を上げるとスルッとズボンを脱がせた。 息子が顔を出すと、蕩けそうな顔で息子にキスをして呟いた。「……これから、おれの中に……これが入るのかぁ♡ ちゅ♡」 キスをすると、先ほどと同じ膝の上に座り向かい合わせの体勢になった。「なんだか、ドキドキするなぁ。はじめは、擦って……でも、そのまま入っちゃいそー♡」ノアの声は、興奮とドキドキした好奇心の感情が入り混じっていた。 ノアの宣言通りにゆっくりと俺の息子に、
last updateLast Updated : 2025-10-24
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第65話 エリーたちにバレた

 ノアと隠れてイチャイチャとしていたが、あの勘の良いエリーだ。当然すぐにバレた。「随分と、ノアくんと仲が良いんですね。……ノアちゃんですかね。最近、胸が目立っていますよ。それに……恋する女の子の表情ですしね。もぉ……黙っているなんてひどいですよ。」 どうやらバレてしまったようだ。「ここを追い出されたら、行く場所もないしな。それに、ノアは魔石の純度を上げれる能力があるんだ。他の奴に捕まり悪用されると最悪だしな。軍事利用、荒稼ぎされて出回った物で悪用されたら面倒だぞ。」「……そうでしたか。それならば仕方ありません。お互いに幸運だったのですね。」 エリーがそう言うと、ノアの着替えを渡してきた。女の子用に加工されたノアの服だった。それに、なんだかんだ言っていたユナも気づいていたらしい。「……わたしの服、あげるぅ。小さくなったやつぅ。」と、恥ずかしそうに渡していた。 恥ずかしそうにノアがワンピースを着た。その姿は完全に女の子で、しかも美少女の部類に入る。「ふぅーん……かなり、似合うねぇ……このリボンもあげるぅ。ちょっとまってて……しょっと。できたぁ。」 ユナが、可愛く髪の毛を結ってあげるとさらに可愛くなり、まるで別人のようになった。 髪の毛を結われた本人のノアが、俺をチラチラと見て何か言ってほしそうにしていた。「ユウ兄。可愛くなったでしょ?」ユナが気を利かせて聞いてきた。「あぁ、まるで別人だな。可愛くなったな。」 最近はノアの魔石に付与した結界で、ノアが八百屋まで送り迎えをしていた。俺は、野菜と魔石の実験で家に残っていた。魔石で光と温度、風をコントロールするイメージの実験をしていた。 バレバレだったが、ノアが後ろから忍び足で近づいてくる気配を感じた。「ユウ兄ぃっ!!」と大声で脅かされた。「まったく&
last updateLast Updated : 2025-10-25
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第66話 侯爵令嬢エリシア

 エリシアは、王子に会うため、両親とともに少し離れたエドウィン侯爵領の領主城へ向かった。 目的は、王子への正式な挨拶。 しかし、それだけではない――王子がなぜエドウィンの領地にこれほど長く滞在しているのか、その真意を探ることも重要だった。 本来、視察は数日、長くても一週間ほどで終わるもの。それにもかかわらず、王子はすでに数週間も滞在している。 これほどの長期滞在は異例――そして、不自然。父が極秘裏に情報を収集し、得たものらしい。 同じ侯爵家の者として、この事態を見過ごすわけにはいかない。 エリシアはルミナス侯爵家の一人娘であり、エドウィン侯爵と並ぶ権力を持つ三大貴族の一角を担っている。両親から溺愛され、何不自由なく育てられてきた。 そんな緊張感のある道中、両親は穏やかな笑みを浮かべながら、エリシアにこう告げた。「エリシア、これは王子と親しくなる絶好の機会かもしれぬ。 お前の優しさと美貌があれば、王子の目に留まることは間違いない。 王子の側へ行ける機会が訪れたなら、その縁を大切にするのだ。」 静かに、しかし確実に彼女へ期待を寄せるような言葉。 エリシアは、車窓の向こうへと視線を向ける。 王子がここに留まる理由――それがただの視察ではないのなら、いったい何が起こっているのだろうか。 目的地に着くと、王子は不在だった。 話を聞けば、近くの森へ同行者と共に狩りへ出ているという。 侯爵家として、この長すぎる滞在の理由を探る必要がある――そう思っていたが、結局これは王子の視察という名の気晴らしだったのかもしれない。 確かに、王子とはいえ、まだ幼い男の子だ。 宮廷の格式ばった生活を離れ、本物の大地と自然に触れたいと思ったのだろう。 そう考えると、エリシアは小さく呟き、わずかに肩の力を抜いた。「ホッとしたわ……。」 だが、それも束の間だった。 目の前の光景に、思わず言葉を失った――。 王子殿下が、自分と同じ年齢の見知らぬ男にべったりと
last updateLast Updated : 2025-11-01
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第67話 エリシアの困惑

 青く澄んだ瞳は、静かな湖のように深く、その中にはどこか冷えた静寂がある。 だが、その奥には確かに何かが息づいている――感情を閉じ込め、慎重に保たれた思いが。 彼女は微笑んでいた。 その微笑は決して大げさなものではなく、ただそこにあるだけの静かな光。 しかし、それがあるだけで、周囲の空気が穏やかになり、視線を奪われる。 近づくのをためらうほどの存在感――それが、彼女の持つ「高貴さ」だった。 王族ではないはずなのに、王族以上の品格を纏っている。 彼女がただそこに立っているだけで、空間の重みが変わった気がした。 ユウは目をそらさなかった。「……これは、近づけば……どうなる?」 ふと、そんな思いが胸の奥をかすめた。 その瞬間、レオが何か話しかけられていたようだが――。「しさつぅ? なにそれ、ボク、ユウ兄と遊んでるだけだよ?」 ……おい、レオ。 そんな美女に塩対応するのか!? もう少し優しくしてやれよ。 いや、待てよ。 相手は貴族だ。 見た目に惑わされてはいけない。 見た目だけで性格が最悪な場合もある――そんな例を何度も見てきた。 それを思えば、レオの対応は間違っていないのかもしれない。 それでも、ユウは視線を外せなかった。 金色の髪が揺れるたび、光を受けて艶やかに輝く。 透き通った青い瞳は、一見冷たい静寂を宿しているが、奥には微かな感情の波がある――。 侯爵令嬢、エリシア・フォン・ルミナス。 この場の空気が変わる。くすんだ灰色の空間に、一瞬で鮮やかな色が混ざったようだった。 彼女の姿は、まるで無機質な部屋に添えられた華のようで、 その場の空気を明るく染め上げていく。 ユウは静かに場を見つめながら、その答えを探していた。 だが――関係なしにレオが甘えてくる。「ねぇ、ユウ兄ぃ~明日も、狩りに行こぉ?」「はぁ? いやいや…&hel
last updateLast Updated : 2025-11-02
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第68話 ウトウトする王子、困惑を深めるエリシア

 はしゃいでいたレオも、徐々にまぶたが重くなり、ウトウトし始めていた。「疲れたのか? 部屋で休んでろよ。ここで寝ると風邪をひくぞ?」 そう声をかけると、レオは頬をふにっと膨らませ、甘えたような声を出す。「いやぁ~。ユウ兄と一緒がいぃー!」 ……まったく、こいつは。「そっか。まぁ、だったら俺の膝で寝るか?」「うん。そーするぅぅ♪ にひひぃ♪」 嬉しそうに笑いながら、レオはそのままユウの膝にころんと横になり、甘えるように目を閉じた。 この自然な甘え――いつものことだ。 だが、その様子を見ていたエリシアの反応は違った。「……えっと、いつもなのですか? そのように、甘えてるのですか?」 彼女は困惑した表情を浮かべながら、戸惑い気味に尋ねてきた。 王子への膝枕――しかも、相手はただの臣下ではなく、まるで兄弟のように振る舞うユウ。 この光景が、彼女の常識と大きく食い違っていたのだろう。 エリシアの瞳が、ごくわずかに揺れる。 その静かな違和感を、俺は感じ取った。 その時、この領主城の主であるエドウィンと、王国の幹部が数人やってきた。 エドウィンは穏やかな笑みを浮かべながら、ユウへと視線を向ける。「ユウ様、お疲れさまでした。……殿下はお休みになられたのですね。さっそくお部屋にお運びいたしますね。」 その言葉に、ユウは軽く手を上げた。「いや、このままで。それより、掛けるモノを持って来いよ。レオに風邪ひかせるぞ。」 ごく当たり前のように言ったつもりだった。 だが――エリシアは、その瞬間、目を見開いた。 エドウィン侯爵は、何の疑問も持たず使用人へと指示を出す。 さらに――他の王国幹部も、一切不快な様子を見せず、ごく自然にその光景を受け入れていた。♢♢♢ エリシア視点 ♢♢♢ エリシアの胸に、強い違和感が走る。
last updateLast Updated : 2025-11-03
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第69話 焚火を囲んで

 しかし――その行為を目の当たりにしたエリシアは、目を丸くした。「え、わっ、えぇ!? だ、ダメですって。ここは、エドウィン侯爵の領主城ですよ!? 勝手に庭で焚火とか……獲物を焼くなどと! そんなことをしては……」 彼女は慌てて止めようとするが、ユウはまるで意に介さない。 ……いや、それどころか、周囲の反応が妙だ。 近くの衛兵たちは、明らかにこの行動に気づいている。 しかし、誰も咎めようとはしない。「また、何か始めたな……」 その程度の認識で、チラッと見た後は黙認している。 エリシアの眉が、わずかに寄る。 この場にいる者たちが、ユウの行動を「異常なもの」「無礼なもの」として捉えていないのだ。(ここまで許されるものなのでしょうか……?) 領主城の庭先で、まるで自分の領地のように焚火を始めようとするユウ。 それに対し、何の疑問も持たず、黙認している周囲。 その違和感が、静かに胸の奥で広がり続けていた――。「ううぅ……おかしい、おかしいですよ。こんな好き放題、許されるものなのでしょうか?」エリシアが小さな声で呟いた。そして、今の状況に顔を真っ赤にしてしまう。 慌てユウの行動を止めようとユウの腕を掴み、体を密着させていて慌てて離れた。「大丈夫だって、エドウィンにも分ければ問題ないだろ。」「ちがう、ちがーうぅ……そういう問題じゃ……ないよぅ……。なんでこんな人が、ここに入り込んでいるのよぅ? はぁ……」エリシアが小さく呟く。 煌々と焚火の火が燃え上がる。 その明るさは、庭の静寂を押し広げるように夜空へと揺らめいていた。 そんな中、気づいたエドウィンが声を掛けてきた。「ユウ様、獲物でも焼かれるのでしょうか? 出来れば、わたくしにも少
last updateLast Updated : 2025-11-04
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第70話 エリシアの戸惑いと心の目覚め

 彼の何気ない言葉が、まるで心の奥底まで響くようだった。 最高の……笑顔……? 微笑むことは、貴族にとって当たり前だ。 誰にでも向けられる礼儀のようなもの。 けれど――今の笑顔は違う、とユウは言った。 それは、まるで彼に「本当の自分」を見透かされているようで。 視線を落としながら、エリシアは小さく息を吸った。「……ちがう……」 焚火の温もりが、揺れる心を包み込んでいた。・♢・♢・♢・ それは、エリシアの人格形成に深く影響を与えた重要な過去――。 彼女は幼い頃から侯爵家の長女として、完璧な礼儀作法と知識を叩き込まれてきた。しかし、その一方で、ある出来事が彼女の心に静かな影を落とした。 沈黙の微笑――幼少期の転機。 幼い頃、エリシアは天真爛漫な性格だった。笑顔が絶えず、何にでも興味を示す子供。しかし、ある晩餐会での出来事が彼女の振る舞いを大きく変えた。 その日、貴族たちの集まりが開かれ、彼女は初めて公の場に立つことになった。親しい家族とともに楽しげに話していたが、ある貴族が「子供らしい振る舞いは醜い」と冷たい視線を向けた。 彼女はその言葉に衝撃を受けた。笑顔を見せるたびに周囲の視線が鋭くなり、期待される「完璧な侯爵令嬢」の姿とは異なることを痛感した。 その日から、エリシアは感情表現を控えるようになり、必要以上に話さず、ただ静かに微笑むようになった。彼女は無口になったわけではない――ただ、言葉を慎重に選ぶようになったのだ。 しかし、彼女の微笑みは決して消えなかった。無口でありながら、その笑顔は誰よりも優雅で、穏やかで、まるで王女のような存在感を放つものとなった。「静寂の微笑――求め続けた存在」 エリシアは侯爵令嬢として完璧に振る舞っていた。優雅な微笑、落ち着いた言葉遣い、誰もが憧れる金色の輝く髪と澄んだ青の瞳。その姿はまさに高貴そのものだった。 しかし、心の
last updateLast Updated : 2025-11-05
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