「それでは盛大な拍手でお迎えください――夢装置の開発者・江口結衣さん、そして投資元である秦テクノロジーのCEO・秦真也さんです!」スポットライトの光に包まれながら、真也は自然に結衣の手を取り、二人並んで発表会のレッドカーペットを歩いた。集まった記者たちはざわめき、二人が席に着くより早く、矢継ぎ早に手を挙げた。「江口さんと秦さんのご関係は?」「ノーコメント」と答えようとした結衣からマイクを奪い、真也は微笑んだ。「交際関係です」その一言に、会場がざわついた。「では、江口さんと園田教授は......?」「彼はもう過去の人です」結衣は会場を見渡し、軽やかに言った。「ご覧のとおり、今日は招待もしていませんから」軽妙な質疑応答のおかげで、発表会の雰囲気は一気に和んだ。司会者の誘導で、結衣は来場者に夢装置の体験を呼びかける。「しかし......安全性は保障されているのですか?」「江口さんは新しいテクノロジー分野の旗手とはいえ、元は心理学出身でしょう。果たしてその発明品を信じていいものか......」熱気を帯びた会場の空気が一気に冷え込む。夢装置は革新的であるがゆえに、保守的な学者たちには受け入れがたかった。頭部に装着する機器となれば、安全面への懸念も募るばかりだった。場内は静まり返り、誰一人壇上に上がろうとしない。「これまで数百回にわたって安全実験を繰り返し、問題は一切ありません。どうかご安心ください」結衣は必死に訴えるが、それでも会場は沈黙を崩さなかった。「仕方ない、僕が一緒にやろう」真也が結衣の手を強く握り、温もりを伝える。結衣は小さく首を振った。「私たちは仲間内でしょう。事前に打ち合わせたと思われるだけよ」二人で相談していたままで時間が過ぎたその時、会場入り口で騒ぎが起こった。「結衣!俺だ!」扉を押し開け、警備員に押しとどめられながらも声を張り上げる男――清志だった。目を赤くし、周囲を顧みず叫ぶ。「結衣、俺がやる!夢装置、俺に試させてくれ!」「まさか......園田教授?」「元夫と新しいパートナー、これは面白いことになりそうだ」記者たちが色めき立つ。結衣は唇を噛み、逡巡した。彼を入れれば、この空気を打開できる。だが、
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