この秋は、遥禾から母親を奪い去った。あの日から、彼女の時間は止まってしまったかのようだった。カーテンを閉め切り、真っ暗な部屋に一日中閉じこもるのが彼女の日常になった。母と過ごした日々が走馬灯のように遥禾の目の前を駆け巡る。喧嘩もしたけれど、それ以上に二人で寄り添って生きてきた。これからの人生、母と一緒に過ごす時間はまだまだたくさんあると、そう信じて疑わなかった。しかし、残酷な現実が彼女を打ちのめした。今なら、あの言葉の意味が痛いほどわかる。「孝行のしたい時分に親はなし」と。深い自責の念が蔓のように遥禾に絡みつき、彼女はそこから抜け出せなくなった。次第に、彼女は何もかもに興味を失い始め、時雨が部屋に届けた食事でさえ、手つかずのままだった。時雨は焦燥に駆られた。かつてはわざと食事をひっくり返し、彼女が残飯を健気に片付ける姿を見て楽しんでいた自分がいた。だが今、遥禾を前にして時雨の胸を占めるのは、ただひたすらに胸が張り裂けそうな痛みだけだった。彼女を苦しめた6年間、償うべきは俺なのだ。日が経つにつれ、遥禾の症状は悪化していった。一日中ベッドに座り、窓の外をぼんやりと眺めるようになった。時雨はそんな彼女のそばで、床に座って静かに寄り添った。遥禾が自分の世界に閉じこもらないようにと、彼はウサギのぬいぐるみと、大切に保管していた小さな木製のドールハウスを部屋に運び込んだ。毎日飽きることなく遥禾に話しかけ、外で起きた面白い出来事を語り、あの手この手で彼女を元気づけようとした。たとえ返事がなくても、決して諦めなかった。夜は遥禾のベッドのそばの床に寝床を作り、とにかく彼女を一人にはさせなかった。徐々に、遥禾は部屋に差し込む陽光を受け入れるようになり、骨と皮だけになるほど痩せてしまった体にも、ようやく肉がつき始めた。そしてついに、ある日、どういうわけか遥禾が突然口を開いた。「お日様に当たりたいね」それはあまりにもありふれた一言だった。だが、その言葉を聞いた時雨は目頭を熱くし、慌てて遥禾を支え、外へと歩き出した。家の中に漂っていた重苦しい空気が、ようやく晴れやかになった。今、遥禾が一番好きな時間は、縁側に座って、暖かい日差しを浴びながら、時雨と哲也の二人がじゃれ合っているのを眺めることだった。「そっち行けよ、
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