高代は、それが自分の身分を探ろうとする視線だと分かっていた。気にもならず、ティーカップを持ち上げ、ひと口そっと含む。もう、あの頃の若い娘ではない。もし三十年近く前の自分だったら、きっとこう怒鳴っていただろう――「何見てるの?私は将来、原田夫人になる人間よ……」そう思うと可笑しくなる。あの頃の自分に、どうして武也を離婚させて自分と結婚させようなどと考える勇気があっただろうか。今の自分の願いはただ一つ。息子が無事でいてくれること、それだけだ。それほど待つこともなく、応接室の扉が押し開けられた。高代は振り向き、来客の姿を目にした瞬間、わずかに意識が揺らいだ。このところ連絡は取っていたが、それも電話やメッセージだけ。三十年近く前に別れて以来、彼の姿を実際に目にするのはこれが初めてだった。「あなた……」高代は思わず感慨を漏らす。「老けたわね」「はは」武也はかすかに笑った。「もうすぐ八十歳だ。老けないほうが不自然だろう?」健康にはずっと気を配ってきた。だが三十年前の姿と比べ物にならない。「そうね」高代はため息をつく。「時間が経つのは本当に早い……私ももう五十歳よ」「本題に入ろう」武也は感傷に浸る気などない。彼女の向かいに腰を下ろす。使用人が茶を出したが、手を付けず、眉をひそめて尋ねた。「わざわざ会いに来たのは、いったい何の用だ?」「決まってるでしょう。息子のことよ」高代はこめかみを押さえた。鈍い痛みが続いている。「今の私に他の望みはない。ただ、あの子が無事でいてくれればいいの」「無事でいられるかどうかは、わしではなく君たち次第だ」武也は冷たく言う。「正修と水戸奈穂を引き離せと言えば手を貸した。伊集院グループの新製品完成を助けろと言えば、それもやった。結果はどうだ?あいつは何度も愚かな真似をして、有害物質を含む原料まで使った。あの程度の金がそんなに惜しかったのか?」高代は反論できない。「……もう自分の過ちには気づいているわ」「気づいているなら、京市に無理に来ようとはしない」「止められなかったのよ。今、あの子は水戸奈穂に執着している」武也は答えず、ただ笑った。その笑みには、あからさまな嘲りと軽蔑が滲んでいる。「私は怖いのよ」高代の声が震える。「また何か馬鹿なことをしないかって。けれど、も
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