「ずいぶん大した腕前じゃない」若菜は皮肉たっぷりに言った。「こんなに大勢にかばわせるなんて。男をたぶらかすのが相当うまいみたいね。略奪女オーナーって呼んだ方がいいかしら?」紗綾の表情がわずかに沈む。「お客様、人格攻撃はおやめください」トラブルを起こす客は見慣れている。だが、この女は最初から妙な態度で、酒を一口飲んだ途端に難癖をつけ始め、今はあからさまに自分を「略奪女」と罵っている。紗綾にははっきり分かった。――この女は、最初から自分を狙って来ている。だが最近、誰かに恨まれるようなことをした覚えはない。店内の客たちがこちらを見て、ざわざわと何か噂しているのを感じる。紗綾は深く息を吸い、気持ちを落ち着かせた。「お客様、もしお話があるなら、奥の休憩室でお聞きします」「どうして休憩室に行かなきゃいけないの?ここで言うわよ!」若菜は怒りでいっぱいだった。吐き出さずにはいられない。「バーなんて口実にして、どれだけ男を引っ掛けてるの?彼女がいる男まで狙うなんて、恥ずかしくないの?」その言葉に、店員さえ怒りを抑えきれなかった。「いい加減にしてください!オーナーが男をたぶらかしたことなんて一度もありません!そんなこと、勝手に言わないでください!」「ふん、やったことを認めないだけでしょ?」店員は焦って紗綾を見た。店には客がたくさんいる。もし誰かがこの女の言葉を信じてしまい、それが外に広まったら――オーナーの評判はどうなるのか。紗綾は普段から店員たちにとても良くしている。だからこそ彼らも本気で紗綾を心配していた。だが、さっきまでの怒りはすでに消え、紗綾の表情は落ち着いていた。「その発言には証拠がありますか?」紗綾は少しもひるまず、まっすぐ若菜を見据える。「もし根拠のない中傷で、さらに謝罪も拒否されるのであれば、弁護士に連絡して法的措置を取ります」その冷静さと堂々とした態度は、若菜の態度とは対照的だった。店内の多くの人の気持ちは、自然と紗綾の側へ傾いていく。「俺、この店よく来るけど、黒沢さんが誰かを口説いてるのなんて見たことないぞ。逆に男が彼女を口説いて、全部断られてるのは何度も見たけど」「見た感じ、黒沢さんはそんな人じゃないよな。むしろあの女の方が最初から喧嘩売りに来てる」「そうだよ、誰が彼女の彼氏なんか
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