「え?」正修はまだ少し寝ぼけた様子で、目の奥に、珍しく戸惑いの色が浮かんでいた。奈穂はそんな彼の様子に思わずくすっと笑う。「なんでもないよ」彼の頬にそっと触れながら、やわらかく言った。「もう少し寝てていいよ」昨日帰宅してからというもの、彼女はネクストスター芸能でルナと鉢合わせたことなどすっかり忘れていた。だから当然、そのことを正修に話してもいない。彼が知らない以上、急に人を使ってルナの件を処理させるはずもない。――じゃあ、誰?もしネクストスター社内の人間がやったのなら、事前に自分へ報告がないはずがない。そこでふと、奈穂は昨日ネクストスターで見かけたもう一人の人物を思い出した。政野。――となると、やったのは彼?正修は彼女の様子を一目見ただけで、何か考え込んでいると察した。もう眠気など吹き飛んでいる。「何か隠してること、あるんじゃないか?」「もう、ないってば」奈穂はにこにこと笑う。「昨日、会社でちょっと態度の悪いタレントと揉めただけ。それにスキャンダルも多い人だったから、会社に契約解除させたの。ほんと、たいしたことじゃないよ」正修は的確に要点を突いた。「どんな揉め事だ?そいつにいじめられたのか?」奈穂は呆れたように口元を引きつらせて笑い、彼の頬をつまむ。「ネクストスターで私がいじめられると思う?あそこ、私の会社なんだけど?」そう言われても、正修の眉間の皺は消えない。「本当に何でもないって」奈穂は続けた。「ただ……昨日、ネクストスターで九条政野にも会ったの」その一言で、正修の表情はさらに険しくなる。「でも、ほとんど話してないよ」彼女は無垢な目で彼を見つめる。「ほんと、挨拶しただけ」その様子に、正修は苦笑した。「分かってる」彼女を疑う気など、もとよりない。ただ――政野のことを思い出すと、過去に政野がしてきたこと、口にした言葉が脳裏をよぎる。どうしても気分がよくはならない。なにしろ、奈穂は自分の婚約者だ。そして政野は、ずっと彼女を狙っている。「えへへ、やっぱり無駄にヤキモチなんて焼かないよね。ほんと優しい」奈穂は彼の首に腕を回し、頬に「ちゅっ」と軽くキスをした。その瞬間、正修の目がすっと深くなる。彼の手はゆっくりと腰へ滑り、彼女の下腹部に触れた。掌の熱に、奈穂は思わ
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