一方その頃、紗奈はマンションの部屋で落ち着かず、胸の奥で何かが起きそうな予感に包まれていた。 昼寝から目を覚ました時、部屋にはもう彼女一人しかいなかった。 「直人、まだ帰ってきてないの?」紗奈は小声でつぶやき、不安がじわりと広がっていく。 気付かないうちに、直人が傍にいるのが当たり前になっていたのだ。 彼女はスマートフォンを取り出し、直人の番号を押した。 コール音が長く鳴り続けても、誰も出ない。 紗奈の眉間に深いしわが寄る。 「まさか何かあったんじゃ……?」鼓動が早まる中、再び直人に電話をかける。 今度はようやく通じた。 「もしもし、直人?どこにいるの?どうしてこんなに遅く出たの?」紗奈の声は焦りで震えていた。 「隼翔と体育館にいるんだ。心配するな、いい子で待ってろよ」 電話を切ると同時に、紗奈はコートとバッグを掴み、そのまま飛び出していった。 ――その頃、市の体育館のバスケットコートでは、隼翔と直人の試合が激しく続いていた。 点数は交互に伸び、互いに全力を尽くしている。 だが進むにつれ、隼翔の体力は目に見えて落ちていった。 昨夜は酒をかなり飲み、睡眠もろくに取っていない。体力で直人に敵うはずもなかった。 直人はフェイントで隼翔をかわし、そのままゴールへ突っ込む。 焦った隼翔は慌てて身を翻し、止めようとした。 しかし不用意に直人の足首に引っかかってしまった。 「うっ!」直人は苦鳴を上げ、バランスを失って床に叩きつけられる。 隼翔は呆然と立ち尽くす。その隙に点差が逆転した。 「クソッ、わざとやったのかよ!」直人が怒鳴る。額から冷や汗が滲み出る。 足首には鋭い痛み。間違いなく捻挫だ。 ほどなくして、息を切らした紗奈が駆け込んできた。 直人の苦しそうな顔を見て、胸が締め付けられる。 「大丈夫、ちょっと足首をひねっただけだ」直人は無理に笑みを浮かべてみせる。 「これで大丈夫って言えるの?」紗奈は彼を睨むと、「病院に連れて行くわ」 「いいよ、ちょっと休めば平気だ」 「ダメ、絶対に病院」 紗奈はしゃがみ込み、直人を支えようと手を伸ばす。 慌てた隼翔も近づく。 しかし紗奈は冷えた声で突き放した。
อ่านเพิ่มเติม