福井隼翔(ふくい はやと)が盛装して、腹違いの妹川村真奈(かわむら まな)との結婚式に現れたのを見て、川村紗奈(かわむら さな)は呆然とした。ほんの30分前、真奈から隼翔との結婚披露宴に招待されたばかりだったのだ。紗奈は胸が締め付けられる思いで、真奈から送られてきた住所へ車を走らせた。案内されて控え室に入ると、隼翔が真奈のウェディングドレスの裾を、とても大切そうに整えているところだった。結婚式を控えた二人の姿。そして部屋いっぱいに飾られた、自分の婚約者と妹が写るウェディングフォト。その光景に耐えきれず、紗奈は涙を滲ませて声を上げた。「隼翔、今週は実家に帰るって言ってたのに、ここで何してるの!」紗奈の声に、隼翔はぴたりと動きを止め、笑みを浮かべていた唇から血の気が引いた。「紗奈、どうしてここへ?」彼は、無意識に真奈をかばうように前に立ち、紗奈を見る目は警戒心に満ちていた。その目に傷つけられた紗奈は、悔しそうに口を開いた。「私の婚約者が他の女と結婚するのに、私は何も知らされない……なのに、どうしてここにいるのかってあなたに聞かれなきゃいけないの!」感情が高ぶって、紗奈はよろめきそうになった。隼翔は真奈をさらにしっかりと背後に隠した。彼が紗奈に向ける視線は冷たく、そして淡々としていて、紗奈がまるで理不尽にわめくヒステリックな女に見えた。ドアの外から司会者が急かす声が聞こえ、隼翔は真奈の手を掴むと、振り返って静かに言った。「あの時、お前が何も告げずに姿を消した。その間、ずっと真奈がそばにいてくれた。今の彼女は不治の病を抱えていて、唯一の願いが俺と結婚することなんだ。だからその望みを叶えてやるのは当然だろ。ここは引いてくれ。披露宴が終わったら、すぐに戻る」その言葉を聞き、紗奈は二人が繋いだ手を見つめながら、苦笑を浮かべるしかなかった。視線を隼翔の背後へ移すと、得意げに微笑む真奈の姿があった。四年前、彼女に諭されて隼翔の元を去った時の言葉が、耳元に蘇る。紗奈は母から先天性の心臓病を受け継いでいて、治る確率は限りなく低い。それでも隼翔のそばにいたいと願い続けた。けれど、その頃の隼翔は会社のトラブル続きで忙殺されていた。そこへ真奈が現れ、取引を持ちかけた。「もしあんたが彼のもとを去る
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