車の運転は、かなり久しぶりだった。大学に行くにも、蓮の神社に参るにも電車か徒歩だから。 神様を乗せるなんて未知の経験なので、とても緊張する。そんなことを考えているうちに、神社に到着した。”蓮、迎えに来ましたよ” そう心に呼びかけると、目の前に二柱が現れた。「何だこれは?」 蓮は車を興味津々に観察している。もしかして、車を知らないのか? 神様だし、やはり現代には疎いのかもしれない。「移動手段です」 車をいちいち説明するのも面倒くさかったので、やめておいた。「早く乗ってください」 後部座席のドアを開け、急かす。一刻も早く出発したいのは、全員同じはずだ。 二柱が乗り込んだのを確認して、僕も運転席に座る。ここからは長距離運転だ。気を引き締めないと。「移動中は、私の加護がある。事故はない。安心して急げ」「心強いですね」 アクセルを踏む。車が動き始めた。蓮と雷斗は感動するでもなく、ただ無言を貫いている。未知への感動が、あまりないのだろうか。 こちらから話しかける必要もないので、車内は無言だった。田舎から田舎への移動なので、景色が極端に変わることもない。退屈な運転だ。 水戸市で一応都会らしきところにも出るのだが、急いでいるのに渋滞に巻き込まれるので二柱の機嫌が悪化するだけだった。「これなら、飛んだ方が良かったな」「アマツミカホシが私たちを認識していなければ、そうだっただろうな……」 勘弁してくれ……。水戸市を越えても、しばらくは道が詰まっていた。車社会なのか、茨城県は。僕が住んでいる千葉県よりも酷い。アマツミカホシがいるのは、日立市。もう峠は越えたのに、時間を長く感じる。精々三時間くらいだと思うのだが……神と一緒というのは辛い。これが一柱ならともかく、気難しい二柱だ。嫌になってきた……。 勝田を越えたあたりから、少しずつ道が空いてきた。これなら、間もなく着きそうだ。「む、アマツミカホシの気配を感じる」 蓮がそう言いだしたのは、日立市に入った時のことだった。「確かに。何世紀も前に感じたことのある、奴の気配だな」 雷斗も同調する。やはり、僕の見立ては正しかったらしい。関連性があるのかはわからないが、天気が悪化してきている。嫌な感じだ。「アマツミカホシ、私たちに気がついたな」「わかるんですか?」 やはり神同士だから、わかるのだろ
Last Updated : 2025-10-01 Read more