「竜也、また時間通りに来なかったのね。私たちはもう病院にはいない」病院にいないってどういうことだ?竜也は胸騒ぎを覚え、「理恵に電話を渡せ。彼女に会いたい」と言った。花梨はスマホを持つ左手を震わせながら、「彼女はもう電話には出ない」と告げた。「会いたいなら、城南火葬場に来て」竜也の心の中で、何かが崩れ落ちていくのを感じた。電話に出ないって、どういう意味だ?元気だった人が、なぜ火葬場にいるんだ?深く考えたくはない。しかし、すでに答えは出ていた。突然、足に力が入らなくなった。そして、嫌な予感を必死に打ち消そうとした。理恵はきっと冗談を言っているに違いない。彼女は昔からよく自分をからかって、心配させていた。今回だって、子供に気づかなかった自分への罰として、またからかっているんだ。まるで現実のことではないように感じながら、竜也は火葬場へと向かった。到着すると、花梨は小さな箱を抱え、目を真っ赤に腫らしていた。「やっと来たのね。理恵がどれだけあなたを待っていたか、知っているの?なぜ彼女に会いに来なかったの?彼女は死ぬ間際まで、あなたに謝りたがっていた。でも、最後まであなたの許しを聞くことはできなかった」竜也は、その場に凍りついた。全てがまるで夢のように目の前で繰り広げられ、小さな箱を信じられないといった様子で見つめ、喉に何かが詰まったような感覚に襲われた。「理恵はどこだ?」花梨は箱を抱えたまま、彼の前に差し出した。「どうしたの?今、目の前にいるのに、認められないの?彼女を死に追いやったのは、あなたよ、あなたなの!」竜也は頭を抱え、目は血走っていた。「いや、これは彼女じゃない。つい先日会ったばかりだ。彼女は俺を責めて、会いたくないんだ。こんな冗談、やめてくれ」竜也は茫然自失となり、あたりに理恵の名前を叫んだ。しかし、空虚な風の音だけが返ってくるだけだった。花梨は涙を拭った。「有名な弁護士でしょ、信じられないなら、どこへでも調べてよ。ところで、おめでとう、石田先生。娘さん、生まれたね!」竜也は我に返った。昨夜、理恵たちは佳奈が娘を産んだことを知ったんだ……だから、昨夜病院に……そして、佳奈はバッグから封筒を取り出した。「これは理恵からあなたに渡すように言
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