「…」次の日の朝。私は不本意だが、クラウスの腕の中で目を覚ました。クラウスが起きる前に化粧をしなければ。クラウスを起こさないように私は慎重に体を動かして何とか腕の中から抜け出そうする。「…んー」「…」だがしかし私はクラウスの腕の中から抜け出せなかった。自分の腕の中から抜け出そうとする私をクラウスが抜け出せないように強く抱きしめてきたからだ。離せ!と声を大にして言いたいところだが、今クラウスに起きられると非常に困る。すっぴんだけはあまり見られたくない。昨日の夜ある程度見られていたとしても。何とか抜け出せないかといろいろ試してみたが、とうとう私はクラウスの腕の中から逃れることができなかった。いや、これ、クラウス、起きてないか?「…ん、さくら?」「…」クラウスが起きている可能性が頭をチラつき始めたところでクラウスの眠たそうな声が私の耳に届く。…今起きたようだ。「…おはよ、咲良」クラウスはとろんとした目で私を見つめ、私の耳元に唇を近づけると甘ったるい声でそう囁いた。「…おはよう、クラウス」 朝から刺激的すぎるし、心臓に悪い。そもそも私はクラウスと同じベッドで寝ようとは微塵も思っていなかった。むしろ床ででもいいから別々に寝ようとしていた。だが、それを申し出ると、『契約したいんでしょ?本命彼女なら一緒のベッドでしょ?』と、クラウスに言われ、一緒に寝る選択を選ばざるを得なかった。もちろん一緒に寝ただけで何かされた訳ではない。クラウスなので隙あらば襲ってくる可能性もあるぞ、と警戒していたが、その必要はなかったようだ。そこは拍子抜けというか意外な面でもあった。クラウスは私が本気で嫌がることや望まないことはしないようだ。「…クラウス、化粧したいから離してくれない?」そろそろ化粧をし始めなければ朝食に間に合わない。そう思ってもう起きているクラウスに私を離すようにお願いする。「えー。もうちょっと一緒に寝ていようよ。あと咲良の顔、もっとよく見たいなぁ」「嫌。離して。時間ないから。あとこっち見んな」だがしかしクラウスは私の願いなど聞き入れようともせず、むしろ絶対に離れられないようにさらに自身の腕に力を込めた。そんなクラウスの腕の中から逃れようと私は試みるがもちろん逃れられない。寝ているクラウス相手でも無理だったのだ。
최신 업데이트 : 2025-10-14 더 보기