The kiss of death!!〜イケメン悪魔5兄弟VS私!!〜

The kiss of death!!〜イケメン悪魔5兄弟VS私!!〜

last updateLast Updated : 2025-11-21
By:  朝比奈未涼Completed
Language: Japanese
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ある日突然何故か魔界に強制召喚された咲良(24)はそこで魔界の王である悪魔に特級悪魔のとある兄弟たちと良好な関係を築かなければ人間界には帰さないと言われてしまう。 しかし咲良が良好な関係を築かなければならない特級悪魔の兄弟たちはもれなく全員、個性が強い上に欲望に忠実なクセしかない男たちであった。 咲良は無事特級悪魔兄弟たちと〝良好な関係〟を築き人間界へ帰れるのか?

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Chapter 1

1.Welcome to Devil's world!!

「奥様!」「奥様ぁー!」

叫び声が下から響いた。

人々の視線が一斉に、城で最も高い塔へと向けられる。

そこには、血に染まった白いドレスを身にまとい、一人の女性の姿があった。

セレーネ・モロー・レヴェンティス。

レヴェンティス公爵夫人。

いつもは穏やかで従順な彼女が、今この城で最も危険な場所に立っている。

背後では近衛兵たちが息を殺し、一歩の誤りが彼女を本当に飛び降りてしまうことを恐れ、慎重に距離を保っていた。

嗚咽が、はっきりと、胸を裂くように夜気を震わせる。

セレーネは痛みに顔を歪め、腹部を強く押さえていた。

五度目の流産。

今回は、彼女は真実を知っていた。

それは病でも、身体の弱さでもない。

すべては、跡継ぎを望まなかった、夫自身の仕業だった。

「セレーネ!」

低く重い声が背後から響いた。

振り向かなくても分かる――ディリアン――彼女の夫であり、この国の公爵だ。

セレーネは声を聞いても、振り返らなかった。

失望は、もはや振り向くことすら許さないほど深かった。

「俺の注意を引くための、またくだらない芝居か?」

冷たい声。

彼は面倒ごとを嫌う男だった。

ここへ来たのも、妻が塔に立っているという噂に耐えられなかっただけ。

セレーネは、かすかに苦笑した。かすれた声で、静かに答える。

「……まず、謝罪なさるべきではございませんか?」

視線の先には、侍女たちに囲まれて立つ一人の美しい女性がいた。

整った身なり。乱れた自分とは正反対。

ディリアンに愛される女。

彼の目には、決して自分など映らない存在。

「狂ったのか?」

嘲るような声。

セレーネはゆっくりと振り返り、夫を見つめた。

彼の目は赤く染まっていたが、その奥は氷のように冷たい。

「はい、狂っておりますわ」

そう、はっきりと告げる。

「あなたを愛してしまったがゆえに。そして、自分の五人の子どもを、あなた自身が殺されたからです!」

夜気が凍りついた。

近衛兵たちが息を呑み、ディリアンも一瞬言葉を失う。

「セレーネ、馬鹿なことを言うな」

感情を抑えようとする声。

セレーネは、血に染まるドレスのまま、哀しげに笑った。

「一度でも、わたくしを愛してくださったことはございますか?」

縋るような視線。

沈黙。

そして、彼は視線を逸らした。

「やはり、一度もございませんね」

自分の口から出た言葉が、刃となって胸に突き刺さる。

セレーネは震える息を吸い込んだ。

「もういい。降りろ、休養が必要だ」

「そのような偽りのご配慮はおやめください!」

セレーネは叫び、涙を零す。

「いっそ、わたくしを殺してくださればよろしかったのです!なぜ、何の罪もない子どもたちを……!」

「セレーネ、やめろ! 今すぐ降りろ!」

命令の声。

しかし、セレーネは一歩、後ろへ下がった。

「わたくしは飛び降り、死んで参ります。そして、子どもたちに謝るのです。

守れなかった母として、父親に殺されたことを」

「やめろ、セレーネ! 死ぬな!」

珍しく焦りを滲ませた声。

だが、セレーネは微笑んだ。

「わたくしの子どもたちの魂に誓います。あなたは必ず報いを受けるでしょう。

一生、後悔と苦しみに苛まれ続けるのです」

そして――

彼女は、身を投げた。

「セレーネ!」

ディリアンが叫び、兵たちと共に塔の縁へ駆け寄る。しかし、間に合わなかった。

骨が砕ける音。

血が地に広がる音。

セレーネの瞳は、まだ開いていた。

最後に映ったのは、塔の上から覗き込む、取り乱したディリアンの顔。

悲鳴が、夜を引き裂く。

星一つもない暗い空が、レヴェンティス公爵夫人の悲劇を静かに見下ろしていた。

……

「……セレーネ!」

はっとして、セレーネは目を見開いた。

息が荒く、溺死から救われた人のようだった。

目の前に立っているのは、ディリアン・レヴェンティス。

冷静で、冷酷で、鋭い眼差し。

背後には医師と侍女たち。薬の匂いが部屋に満ちている。

すべてが現実のように感じられた。

まるで、かつて彼女の命が尽きたあの舞台と同じように。

視線を横に向け、小さな机の上の時計を見つめた。

この日は、彼女が死ぬ二年前だ。

夜風が、わずかに開いた窓から入り込み、塔から落ちたあの夜と同じ匂いを運んできた。

記憶が蘇る。

体は地面に激突し、凄まじい痛み、そして暗闇に包まれた。

腹部に手を伸ばす。

包帯に覆われ、温かく、血が滲んでいる。

死んだはずなのに、生きている。

「奥様、手から出血しております。すぐに点滴を」

医師の声に、セレーネは硬直したまま頷く。

「医者の邪魔をするな」

ディリアンの苛立った声。

セレーネは深く息を吸った。

脳裏に浮かぶのは、自分の亡骸、人々の悲鳴、そして――

生まれることのなかった、五つの命。

ゆっくりと、夫を見上げる。

静かで、はっきりとした声。

「ディリアン様」

「何だ」

セレーネは、真っ直ぐ彼の目を見つめた。

「離婚しましょう」

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1.Welcome to Devil's world!!
短大を卒業して4度目の春が来た。社会人4年目、24歳にもなると毎年少しずつ後輩ができ、すっかり会社での私の立ち位置は新人から中堅になった。つまり任される仕事が増えた。疲労感しかない顔で一歩一歩何とか足を踏み出して、一人暮らしのマンションの階段を登る。仕事帰りにこの階段を登る度に引っ越しが頭の中をチラつく。家賃と部屋の綺麗さを優先した結果がこれだ。そろそろせめてエレベーターのあるマンションに引っ越そう。今日も決意を固めたところでやっと自分の家の前に着き、ふぅと一息をつく。それから鞄から予め出しておいた鍵で家の鍵を開けると私はいつものようにドアノブを回し扉を開けた。ここからはいわゆるナイトルーティーンだ。4年も見てきた玄関で靴を脱いで…、て、あれ?いつものように機械的に靴を脱いで、家に入って、鞄をソファに投げて…とやりたいところだがそれができない。何故なら目の前に広がっているのは私の家の中ではなく、全く見覚えのない薄暗い大きな部屋だったからだ。それに気づいた私はバタンッと一度扉を閉めた。疲れすぎて帰る家を間違えたか?そう思って家の番号を確認してみるが、扉の横のプレートに書かれてある家の番号は私の家の番号302だ。じーっと間違いのないように注意深く見てもその数字が変わることはない。疲れてるんだな。それも相当。あんな幻覚を見るほど疲れているのだと自分を納得させて再び扉を開ける。「…」しかし私の目の前に広がっていたのは先程と同じ全く見覚えのない薄暗い大きな部屋だった。何だ、ここ。何度も扉を開け閉めし続ける訳にもいかないのでとりあえず疑問に思いながらも一応私の家に入ってみる。よく見るとこの大きな部屋は薄暗いだけではなく所々にギラギラと輝く装飾品があり、すごく豪華絢爛な部屋に見えた。私が立っている足元にはレッドカーペットのようなものが敷いてあり、その先にはでかでかと王様が座るような豪華な椅子がある。そしてその椅子には誰かが深々と腰を下ろしていた。まるでお伽噺話に出てくるあるファンタジーな国を治める王様の謁見の間のような雰囲気がここにはある。薄暗いし、魔王城、とかどうだろか。いーや!冷静に分析している場合か!ここどこ!?私の家に何があった!?「桐堂咲良」訳がわからないまま立ち尽くしていると王座のような
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2.胡散臭い魔王の右腕
「失礼するぞ、テオ」大きな扉が開かれ、そこに立っていた美青年が自称魔王に淡々と声をかける。短すぎず長すぎない綺麗な丁寧にセットされた漆黒の黒髪に、切れ長の赤い瞳。彼も自称魔王に負けず劣らずとても美しいがこちらを黙って見つめる姿は氷のように冷たい。年齢は私と同じくらいかその落ち着いた雰囲気から年上にも見える。何だこの世界。イケメンであることとカラフルな目であることがここに住む条件なのか?「待っていたよ、ヘンリー。紹介するよ、彼女が今回の留学生だ」「…?」おっと?美しいが冷たい印象の少年…自称魔王がヘンリーと呼ばれた男に声をかけられた瞬間柔らかく笑う。先程まで冷たい表情しか浮かべていなかったのでそのギャップに思わず自称魔王を二度見した。え?二重人格?人変わりすぎじゃない?「初めまして。俺の名前はヘンリー・ハワードだ。今日から君の留学生活をサポートするハワード家の長男でもある」こちらに歩み寄り、微笑みながらも右手を出してきたヘンリーの手を私は取る。「初めまして。この度学院に留学させて頂くことになりました、桐堂 咲良と申します。これからいろいろとお世話になります。どうぞよろしくお願い致します」そして私もヘンリーと同じように微笑んだ。まるで取引先との挨拶である。お互いに営業スマイルが板についている。「敬語など必要ない。俺たちはこれから共に過ごすのだから。遠慮はしないで欲しい。よろしく、咲良」「わかった。よろしく、ヘンリー」社交辞令をお互い交わしたところで手を離す。なーんかこのヘンリーって人、すごく胡散臭い感じがするんだよね。いい人ではなさそうな感じがすごくする。「咲良、彼は私の右腕でもある優秀な悪魔だ。困ったことがあれば何でも彼に聞くといい。ヘンリー、彼女にはまだ何も説明してやれていない。帰る道中にでも説明をしてくれ」私たちの挨拶が終わったタイミングを見て自称魔王が私、ヘンリーと順番に声をかけ微笑む。なーにが!〝咲良〟だ!さっきまで〝お前〟だったでしょうが!やはり二重人格確定!「わかった。じゃあ行こう、咲良」「うん」自称魔王に慣れた様子で返事をし、私に声をかけてからヘンリーが歩き始める。私はそんなヘンリーの後を追うように一緒に歩き始めた。ちらりと謁見の間のような部屋から出る前に自称…いや自称ではなくおそらく魔
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3.私のうるさいお世話係
夢ならば覚めて欲しいと何度も願った。だが目覚めて周りを何度見渡しても、そこに広がっていたのは見慣れた私の部屋ではなく、見慣れない薄汚い小さな部屋だった。はーい!私、桐堂咲良!24歳!社会人4年目!今日も元気に会社に出社しまーす!と言えないのが現状だ。昨晩のことは夢ではなかった。目を覚まして部屋の中を何度も何度も歩いて改めて私は今の状況を飲み込んだ。それからとりあえずいつものように身支度を整え始めた。顔を洗った後カバンにたまたま入っていた携帯用のスキンケア用品で何とか肌を整えて制服に着替える。赤と黒のブレザーの制服を着た感想はコスプレだ。24歳ではとてもじゃないが着こなせない。不満しかないが仕方ないのでそのまま今度はメイクを始める。これもまたカバンにいつも入れていた必要最低限のメイク用品で顔を仕上げた。鏡に映る私を改めて見つめる。昨日出会った魔王やヘンリーのように真っ赤ではなく日本人らしい真っ黒な見慣れた瞳がこちらを休んだにも関わらず疲れた目で見ている。胸まである栗色の直毛は癖ひとつなく正直時間のない朝には助かる髪質だ。直毛すぎて巻き髪とかはあまり楽しめないけれど。もちろん地毛は黒だ。染めている。「…はぁ」今日の化粧のできに思わず朝からため息が溢れる。もっと大人っぽい化粧が好きなのだが、今手元にあるものではこのくらいの化粧しかできない。化粧により完成した顔は少しだけ背伸びをした幼さの残る女の顔だった。私の持ち物はカバンの中にあったものが全てだった。基礎化粧品とスマホとスマホの充電器と財布。後は仕事に必要なものとかお父さんに無理矢理持たされている塩とか。こんなことになるならもっとちゃんとしたものを持っていたのに。ガンガンガン!と突然扉の外から非常に激しく扉を叩かれ、思わず私は肩を揺らす。ただでさえ壊れそうな扉が今にも破壊されそうな勢いだ。「おおい!人間!朝だぞ!この俺様エドガー様が迎えに来てやったぞ!1秒たりとも俺を待たせるんじゃねぇ!今すぐ出て来い!」扉の向こうから苛立った様子のエドガーと名乗る男の声が聞こえる。それと同時にずっと破壊しそうな勢いで扉も叩かれる。壊さないでくれ!そう思った私は急いで扉の方へ向かい、扉を開けた。「おうおうおう!人間!俺様を待たせるとはどういう了見してんだ?おい!」扉を開くとそこに
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4.ご兄弟とご対面
エドガーと特に何か話すでもなくやってきたのは家の中にある食堂だ。そこにはすでに他の兄弟たちも来ており、私たちが着いた時には席に座って私たちを待っている状態だった。「咲良、おはよう。昨日はよく眠れたか?」まず私にそう声をかけてきたのは長兄、ヘンリーだ。相変わらず何を考えているわからない笑顔で私を見つめるヘンリーにもうすでに思うところがあるがぐっとそれを堪える。ほぼ小屋のような埃っぽい場所によく客人を招いたな、と言葉が出そうになるが我慢だ。「おかげさまで。昨日はありがとう」「それはよかった。昨日と少々顔が違うから何かあったのかと思ったよ。昨日はもう少し落ち着いた雰囲気に見えたからな」「ふふふ、ご心配どうも。何もなかったですよー」にっこりと笑う私に少しだけ安心したように笑うヘンリーに殺意が湧く。顔が違うって化粧のこと言ってるよね?化粧詐欺師で悪かったな!おい!「それでは食事の前に自己紹介といこうか」ヘンリーに挨拶をした後、私が席についたタイミングを見てヘンリーが兄弟たちにそう声をかける。そしてヘンリーを含む兄弟たちの自己紹介が始まった。「まずは俺だな。昨日も言ったがもう一度。俺の名前はヘンリー・ハワード。ハワード家の長男だ」最初に口を開いたのはヘンリーだ。にっこりと笑っているが腹では何を考えているかわからない、何なら目までは笑っていないところが怖い。「俺は次男のエドガー・ハワードだ。お前の不本意だが世話係にされた哀れな男だよ」次に口を開いたのはエドガーだった。本当に嫌そうな顔で天を仰ぐ姿は美しいし絵になるが普通に腹が立つ。こちらもこんな男では哀れである。被害者面すんな!「…三男のギャレット・ハワード。話しかけてくるなよな、人間」エドガーの次に口を開いたのは暗そうな印象のあるギャレットと名乗る男だった。ギャレットはこちらをチラリと見て、すぐに視線を逸らす。深緑色の真っ直ぐな髪と灰色の瞳。おまけに顔も綺麗で見た目は暗さを吹き飛ばす勢いで派手で明るい。悪魔はカラフルな瞳だけではなく綺麗なことも条件なのだろうか。「はいはーい。次僕ね!四男のクラウス・ハワードだよ!いろいろ仲良くやっていこーね!夜とか特に!」次に口を開いたのは明るい笑顔が印象的なクラウスと名乗る男だった。妖艶に微笑み私にウインク&投げキスをする姿にどんなに美し
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5.24歳学院へ行く(不本意)
「あー。お腹空いた」「はぁ?お前体調悪いから飯食えねぇんだろ?」朝食後、一応朝らしいが全く太陽の出ていない薄暗い街を私の世話係らしいエドガーと共に学院へ行くために歩く。思わずポツリと出た私の本音にエドガーは眉間にしわを寄せた。おっといけない。そう言えばそうだった。よく考えれば昨日の昼から私はご飯を食べていない。いろいろあって忘れていたが流石にお腹が空いてくる。「だいぶ回復してきたの。昼食はどうすればいいの?」私を変なものでも見るような目で見るエドガーに適当にそう言って私は昼食のことをエドガーに聞いてみることにした。流石に一日断食はキツい。そろそろ固形の何かをお腹に入れたい。「あ?そんなもん学院の食堂で食べるかその辺の売店とかで買って食べるかだろ」「…食堂ってまさかお金いる?」「人間の食堂は無料で飯食べれるのか?」「まあ、食べられないところの方が多いかな」「ふーん。学院の食堂は有料だ」魔界の金なんてないのだが?エドガーのめんどくさそうな昼食の説明を受けて心の中で私は思わずきつめにツッコミを入れた。こんなにも違う文明、生物なのに通貨だけ日本円だとは考えにくい。人間の世界の中だけでも数えきれないほどの通貨が使われているというのに。このままでは兄弟たちと良好な関係を築く前に餓死エンドだ。働かなければ。せめて自分の食だけでも自立できるように。そんなことを思いながら街を歩いているとふとある求人の広告が目に留まった。「ちょいちょい。エドガー。ストップ」「あ?」求人の広告をよく見たいので私を学院へ連れて行かなければならないエドガーを止めて求人の内容を確認する。エドガーは不満そうだが無視だ。人間メイド喫茶店、可愛い子募集中!賄い付き!時給2000ペールから!求人にはそう書かれてあった。「…」これ人間である私に向きすぎな案件じゃない?「エドガー。時給2000ペールってどうなの?」「ん?そりゃあ随分いい時給だろ。働くのか?」「…まぁ」「じゃあ俺がもっといい時給の仕事紹介してやるから取り分半分寄越せ」「はぁ?」私に背を向けたまま一応私を待っているエドガーに時給のことを聞いてみるとエドガーがどこか悪そうな笑みを浮かべてこちらに振り向く。そんなエドガーの台詞に私は思わず呆れた声を出した。何で取り分半分も渡さなければい
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6.素敵なバイト先
そしてあっという間に放課後になった。今日は一日中兄弟たちと同じ教室で座学を受けていたが朝のエドガーとの交流以外特に彼らと交流することはなかった。それよりも悪魔の学問とは一体なんだ!一応短大まで学んできた身だが内容が一切理解できない。人間と学ぶことが根本的に違いすぎる。魔法学とか魔界歴史学とかならまあ言葉だけだがわからないこともない。だが契約学とか生物欲望学とかその辺になると訳がわからない。そもそもこれを真面目に受けることが果たして正解なのか?「…」本日一日の文句を心に秘めながら帰り支度をする。学院から家への道は兄弟の誰かが送迎することになっているらしい。そうヘンリーが言っていた。だがもうこの教室には兄弟の誰もいない。そもそも兄弟の誰かというよりも買収されて私の世話係になったエドガーがちゃんと報酬分働くべきなのでは?もちろんエドガーもこの教室にはもういない。ちゃんと報酬分働けー!バカ野郎ー!そう思ったが仕方ない。朝来た道を帰ればよいのだと気にしないことにした。それに誰もいない方がこちらも好都合だ。とりあえず今朝見た求人の喫茶店に今すぐ向かおう!お腹が減って死にそう!私は気を取り直して求人広告に書いてあった喫茶店に向かうことにした。街行く人たちに場所を聞きながら。そうして素敵で親切な人に恵まれた私は割とすぐに喫茶店ナイトメアに着いた。喫茶店ナイトメアの外観はピンクと白で統一されており、ものすごく可愛い。早速ここで働かせてもらう。そう思って扉に手をかけようとした時だった。「もしかしてバイト希望の子?」少しだけハスキーな声に後ろから声をかけられたのは。「はい、そうです」何とタイミングがいいのだろうと私は振り向く。するとそこには可愛らしいメイド服に身を包んだ女の子が立っていた。ハスキーな声の感じ的に少年くらいだと思ったがどうやら私の後ろに立っていたのは美少女だったようだ。明るいふわふわのピンク色の髪はまとめてポニーテールされており、私を見つめる瞳は青色でまるでビー玉のようだ。年齢はおそらく中学生から高校生くらいの年齢だろうか。とんでもなく美少女で愛らしい彼女だが何故か見覚えがある。んー?こんな美少女すぎる知人いたかな?「表からだと目立ってしまうからこっちから入って!お話聞かせて!」美少女をまじまじと
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7.ストレスしかない晩ごはん
side咲良魔界にやって来て1週間が経った。私は今日も栄養失調で倒れることなく、元気にやっている。これも全てミアとユリアさんのおかげだった。決してたった今留学の決まり事の為に共に晩ご飯を食べている5兄弟のおかげではない。むしろ彼らは私をずっと放置している。初日からずっと。…エドガー仕事しろよ。まあ、放置されている分自由にできるからいいんだけど。「咲良、今日も食欲がないのか?」「まぁ、うん。そう」今日も今日とて一切晩ご飯に手を付けようとしない私を不思議そうに五男バッカスが見つめる。相変わらず無表情なので何を考えているかわからないが逆に言えばヘンリーのような意地の悪さを感じず気分を害されることもない。 「じゃあ俺が食べる」「…え?まだ食べるの?しかもその…」ただでさえめちゃくちゃな量を1人で平らげているのにまだ食べようとするバッカスに思わず笑顔が引き攣る。そのついでにこの料理たちのことを〝ゲテモノ〟と呼びそうになったがそれはぐっと堪えた。この料理たちはあくまでヘンリーが私を思って好意で作らせている料理だから表立って悪口は言えない。そうこう考えている内にいつの間にかバッカスは私のお皿を取り、その中身を全て平らげていた。バッカスの閉じられた口の中から、バキバキと音が鳴るたびに鳥肌が立つ。いくら食べることが好きだからってあんなものまで平らげるとは恐ろしすぎる。「咲良はここに来てからずっと体調が悪いな。しっかり休めているのか?」バッカスの食べっぷりをげっそりしながら見ていると、今度は品はあるが意地の悪い笑みを浮かべている長男ヘンリーに声をかけられた。はい、今晩も始まりますよー。ヘンリーと腹の探り合いタイム。「ええ、まあ。慣れない環境なのが大きいのかな…」「そうか。俺はテオに咲良を任されているからな。何かあればいつでも言ってくれ」「…ありがとう。とりあえず日本料理が食べたい…です」「ああ。料理長にそう伝えておこう」笑顔のヘンリーに私もいつものように笑顔で返す。ヘンリーの思ってもいない言葉に私はすぐにでも反論したかったがそれをまたぐっと堪えた。ヘンリーは善人面をしてあんなことを言っているがこれはいつも言っていることで私の願いなど一度も聞いたことなどない。いつもいつもいつも!日本料理が食べたいと言っているのに出てくる
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8.悪魔たちからの嫌がらせ
おかしいんだよな、ここ数日。主に私に対する学院の学生たちの様子が。放課後、学院の階段を一歩ずつ降りながら、最近のおかしいことについて1人考える。私が学院に来て最初の1週間は私に害を及ぼすことなどせず普通に接していたはずの学生たちがここ数日何故か私に嫌がらせ…いじめのようなことをするようになった。例えば少し目を離した隙に支給品の教科書やノートがボロボロにされていたり、私が歩いている上から泥水が降ってきたり。教科書とかが犠牲になるのはどうでもいい。そもそも私は別にここで何かを学びたい訳ではない。強制的に通わされている身だ。はっきり言って必要なものではない。それにボロボロになった教科書を教師に見せれば代わりのものを渡されるし、特に困ることはなかった。泥水に関しても別に困っていない。ここ数日何度も狙われたが狙われる度に華麗に避けてみせた。昔から勘には自信があるのでこちらも一切困っていない。一体何を思って急に人間いじめなんて始めたのか…。いや、黒幕は何となくわかってはいるんだけど。「…っ!」早速後ろから嫌な気配を感じ、咄嗟に左へ避けながら後ろを振り向く。すると私を今まさに突き飛ばそうと手を突き出していた男の学生と目が合った。誰かに階段から突き落とされそうになったのはこれで通算10回目くらいだ。「…危ないでしょうが!」私は手を突き出している男の学生の腕を掴んでそのまま下へ落ちるように引っ張る。元々私を突き落とす為に前のめりになっていた男の学生を落とすことは簡単なことだった。「わああああ!?」私に無理矢理引っ張られたことにより男の学生がそのまま階段の下へ落ちる。私はその後を追うように階段からゆっくり降りた。「もう私を落とそうとしないでね?また同じ目に遭いたくなければ。他の私を落とそうとしている子たちにもそう伝えなさい」「は、はいぃぃぃぃぃ!!!!」男の学生を見下ろすように仁王立ちで私は男の学生を脅す。男の学生はそんな私を恐怖でいっぱいになった目で見て叫びながらどこかへ行ってしまった。人間がこの階段から落ちると最悪骨折でもしそうなものだが悪魔だと特に何も起こらないらしい。もう何度も同じような学生を返り討ちにしてきたが大怪我をしている者はいなかった。あの様子から見て階段から落ちること自体は痛いらしいが。やはり悪魔と人間では体
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9.毒と最初の契約
「なぁ、ジャパニーズモリソルトって知ってるか?」朝、いつものように食堂で5兄弟たちと朝食を待っているとエドガーが唐突にそんなことを言い出した。私は思わず聞き覚えしかない〝ジャパニーズモリソルト〟に反応しそうになるが、何とか堪えとりあえず知らないフリをする。何故、エドガーがお父さんの盛り塩のことを知っているんだ?「知ってるよー。どこかのクラブでその話聞いたなぁ。今結構話題だよねぇ」そんなエドガーにまず反応したのはクラウスだ。え!今話題になってるの!?あの袋叩き事件があったのはたった3日ほど前だ。その時にたまたま適当に言った私の〝ジャパニーズモリソルト〟がたった数日でまさか話題になるとは。ある意味インフルエンサーじゃん、私。「あれだよな、なんかすげぇ由緒正しい高価な聖なる塩で退魔効果がヤバいっていう」「うんうん。だーれが魔界に悪魔にとっての毒を持ち込んだんだろうねぇ。怖いよねぇ」「何かまた情報あったら教えろよな。いい値段で売り捌くから」「はいはーい。エドガーはお金のことしか頭にないねぇ」「うっせ。クラウスは自分と女のことしか頭にねぇだろ」マジか。エドガーとクラウスの会話を聞きながらお父さんの盛り塩が何だかすごいことになっていることに驚く。今度からあまり〝ジャパニーズモリソルト〟とか言わないでおこう。エドガーみたいな輩に盛り塩を強奪されかねない。そのついでに酷い目に遭う可能性も十分にあり得る。〝ジャパニーズモリソルト〟を私の中で固く封印したところで私は再びエドガーたちの会話に耳を傾けた。「とりあえず出所を調べて、ジャパニーズモリソルトの独占販売でも始めようかと思ったんだけどよ。ジャパニーズモリソルトの意味がわかんねぇんだわ」困った様子で首を傾げながらも真剣に〝ジャパニーズモリソルト〟について考えているエドガーの姿が目に入る。私が適当に言った〝ジャパニーズモリソルト〟に真剣に向き合っているエドガーの姿があまりにも滑稽で笑えてしまう。本人には死んでも言えないけど。「ネットで調べても出てこねぇしよぉ。ジャパニーズが日本で、ソルトが塩だろぉ?モリは何だ?おい、ギャレット何かわかんねぇのかよ。日本お前好きだろ?」〝ジャパニーズモリソルト〟の答えを求めてエドガーが今度はギャレットに話しかける。「…確かに日本は好きだよ。オタクとしては
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10.怒りの一発
「…っ!生命力ゾンビかよ」毒を盛られて3日後。約3日ぶりに夕飯時の食堂に現れた私を見てエドガーは心底驚いたような顔してそう言った。…大変失礼である。今こうしてここへ居られるのもミアの素早い対応のおかげだ。実は毒を盛られたあの日、最初こそは毒の影響を受けていたが、1日寝ていれば私の体力はほぼ回復していた。次の日から普通に動けたがミアに止められ、今やっとミアから許可が出て私はここにいる。ミアは3日間仕事を休んでまでずっと私の看病をしてくれた命の恩人だ。「…チートじゃん」私が現れたことに驚いたのはエドガーだけではない。ギャレットもエドガーと同じ反応をしていた。「「…」」クラウス、バッカスも黙ったまま同じような反応をしている。この場にいる全員、毒を私に盛ったことを隠す気が微塵もないらしい。もちろんヘンリーもだ。「体調はもう大丈夫なのか?咲良」ただただ驚くだけで私に声をかけようとはしない兄弟たちの中でヘンリーだけはおかしそうに笑いながら私にそう声をかけた。「まあ、おかげさまで。先日はありがとう」怒りの気持ちを抑えて私はヘンリーに作り笑いを向ける。毒で倒れたあの日。ヘンリーは私の小屋へたまたまミアが席を外している時に現れた。夕食の時間になっても現れなかった私を心配して来た、とヘンリーは言っていたが、おそらくそれは嘘だろう。あの力なく横になる私を愉快そうに見下していたヘンリーの瞳が未だに忘れられない。心配して来たというのは建前で、私が苦しんでいる姿を見に来たに違いないと察するには十分な表情だった。「何故、咲良があんな目にあったのかこちらでも調べたよ。原因はおそらく朝食時に混じってしまった魔界のスパイスだ。あれは人間には猛毒になる。兄弟たちもそれを知っていたから君の復帰の早さに驚いているんだ」私の疑いの目をすぐに察したのだろう。ヘンリーはその疑いが晴れるようにすぐに笑顔で最もらしいことを言う。「こちらの不手際だ。本当に申し訳ないことをした」そしてヘンリーは申し訳なさそうな表情でだがどこか愉快そうにそう言った。絶対にそんなこと思っていない。そう思っていたのなら私が小屋から出られなかったあの数日間にちゃんとした形で謝罪に来たはずだ。一応は謝りました、というヘンリーの抜かりない形だけの気持ちなど微塵もこもっていない謝罪にどん
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