──10月の初め まだまだ、ポカポカと暖かい日が多く、 日中は、汗ばむほどの陽気だ。 晴れた朝は、心地良く過ごしやすい気候で嬉しい。 私は、いつもより早く目が覚めたので、 少しだけ早めに出社した。 早く着いたせいか、まだ人も疎らでエレベーターも空いている。 5階でエレベーターを降りて、 「おはようございます」 と、社内で会った人に挨拶をしながら、自分の部署である工事部へと続く長い廊下を歩いて行く。 前から来た男性にも挨拶をしようとした。 「おはようござい……えっ?」 思わず固まってしまった。 「みあり!」 と、私の名前を呼ぶその男は…… まさかの…… 2年ぶりに会う元カレだった。 「えっ! どうして?」 私たちは、とんでもない場所で再会してしまった。 佐藤 みあり 28歳 私には、以前4年間お付き合いをして、結婚を考えていた彼氏が居た。 当時、結婚の話を両親にした彼は、 お母様から私に『ブライダルチェックを受けるよう伝えて欲しい』と言われたようなので、私は病院でそれを受けたのだ。 すると、どうも私には子どもを授かることが、難しいということが判明した。 『もちろん0%ではないですが……』と、医師からの気休めの言葉を受け取った。 目の前が真っ暗になり、かなり落ち込んだ。 子どもが好きだから、将来子どもの居る暮らしを夢見ていたのに…… それでも彼は『子どもが出来なくても良い! 2人で幸せになろう』と言ってくれたのだが、当然彼のご両親は結婚に猛反対。 子どもが授かりにくいというショックと、彼のご両親の反対。 私は、Wでショックを受けた。 それでも私たちは、しばらくは一緒に過ごしていた。 でも、しだいに親に反抗してまで、私と一緒に居る彼のことを見ていると、申し訳なく思えたし、 私自身も彼と一緒に居ることが辛くなってきてしまっていた。 そんな時、あんなことが起こってしまい、良い機会だと思って自ら離れてしまったのだ。 26歳の秋だった。 あれから2年、 ようやく私は、落ち着きかけたところだったのに。 なのに、なのに… その彼が、また目の前に現れた。 「えっ! どうして?」 「久しぶり!」と、ニコやかな笑顔を私に向ける彼は…… 塩谷 律樹28歳 大学時代の同級生だ。
Last Updated : 2025-09-18 Read more