静江の強い後押しもあって、怜司はしぶしぶ沙羅を家に残すしかなかった。沙羅は今や完全に後ろ盾がいることで、家の中では女王気取り。あの頃の、おどおどしていた面影はどこにもない。「ちょっと、もっと丁寧に運びなさいよ!それ、数千万円もするヘステンスのマットレスなんだから!主寝室のボロいベッドはさっさと捨てて。ねぇ、あなた本当にベビーシッター?天城家は大金払ってるのよ?ちゃんと仕事してよ。そっちのあなた、なんでそんな仏頂面してるの?もしあなたのせいで母乳が止まったら、おばあちゃんが黙ってないからね!」……使用人たちはみんな不満そうな顔をしながらも、口には出せず、陰では「成り上がり」や「愛人」と呼んでいた。怜司は遥を探すことで頭がいっぱいで、沙羅のことは完全に放置して、そのまま会社に寝泊まりする生活が続いていた。そんなある日、秘書の三浦が慌ただしくオフィスに飛び込んでくる。「社長、奥さまが見つかりました!」怜司は即座に立ち上がる。「すぐに車を回せ。移動しながら話そう」車は猛スピードで市内を駆け抜けていく。怜司はスマホに表示された遥と遼のツーショット写真を食い入るように見つめている。「遥が遼と知り合いだったなんて、一度も聞いたことがない。なぜ二人で食事を?」三浦も首をかしげながら正直に答える。「それが、うちの者が写真を撮ったあと、すぐに位置情報も送ってきまして……詳しいことはまだ分かりません」怜司は眉間にしわを寄せ、不安と焦燥が胸の中でどんどん膨らんでいく。車が完全に止まるのも待てず、ドアが開いた瞬間、彼は飛び出してレストランの中へ駆け込んだ。キャンドルが揺れ、バイオリンが優しく奏でられる。店内にはロマンチックな空気が満ちていた。遥はほんのりと頬を赤らめ、艶やかな目で遼を見つめる。グラスを傾けながら、いたずらっぽく問いかける。「ねえ、遼さん、もしかして私のこと、好きなんじゃない?」遼は一瞬驚いたように目を見開く。「どうして分かった?まあ、好きな相手の気持ちって、自然と伝わるもんだろ?もしかして、君も俺のこと、気になってる?」遥が答えようとした、その瞬間。扉がバンと開き、怜司が息を荒げて飛び込んできた。遥はすぐに席を立ち、テーブルの向こう側に回り込むと、あえて遼の首に腕を回し、親しげに寄
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