弘人の顔色が変わった。紳士的な態度などかなぐり捨て、詩織の手首を掴みかかる。その瞳の奥には隠しきれない獰猛さが浮かんでいた。「許さん。詩織、俺は許さんぞ!」朔は詩織の前に立ちはだかり、弘人を突き放した。そして詩織を自分の車に乗せ、狂人と化した弘人から遠ざかる。猛スピードで走り去る車を見つめ、弘人の瞳は虚ろだ。心の中も空白で、どうすればいいのか分からない。弘人はふらりとどこかへ歩き出した。しかし、心の中の波は一向に収まる気配がない。なぜだ!そして、なぜ相手が朔なんだ!朔は詩織の兄だろう。養子だとしても兄は兄だ!そう考えると、弘人の顔に凶暴な色が浮かんだ。そういうことなら、その愛とやらを試させてもらおう。二人の言う、永遠の愛が本物かどうかを。世間の批判の嵐の中で、なおも固く立っていられるのかを。だが、弘人は信じている。絶対にありえないと。詩織は最後には必ず大人しく俺の元に戻り、俺の妻になるのだと。翌日、ニュースのトップを飾ったのは朔と詩織が親しげに手をつないでいる写真だった。このニュースは爆弾のように、人々の間で炸裂した。朝霧家。あれほどの権勢を誇る一族が、こんなことで笑いものになるとは。朔はニュースを見て、何度か詩織の部屋のドアをノックしようとしたが、ためらってしまう。しかし、ドアを開けたのは詩織の方だった。詩織は不思議そうな顔で、朔の不安げな表情を見ている。「どうしたの?何かあったの?」「ニュース、見たか?」詩織は次の瞬間、ふわりと微笑んだ。「そのこと?何事かと思ったわ。ちょうど私たちの関係を公表する、いい機会じゃない。あなたが朝霧家から籍を抜くことを発表すれば、私たちは晴れて一緒になれる」朔はまだ心配そうだが、詩織の固い決意に満ちた瞳を見て、詩織を腕の中に抱きしめた。詩織の両親も想像とは違い、この全てをごく平然と受け入れた。朔が詩織を好きになった時、朔はすでに朝霧家を出ることを申し出ていた。しかし、長年連れ添ったことで、二人はとっくに朔を実の息子のように思っていたのだ。もし詩織も望むなら、二人がずっとそばにいて、自分たちの老後を見てくれることに異存はない。この騒動は数日間続いた。弘人はメディアを買収までしたが、待っていたの
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