結月はこの日の夜はよく眠れた。目が覚めて、見覚えはないが、すこし馴染みのある寝室を見て、結月は一瞬ぽかんとした。そしてすぐに悩んだ様子で頭をかいた。結月は昨日は数分しか寝ないつもりだったのだ。しかし、颯真の隣にいると何だか不思議と安心感を覚えたから、結月は家についたことにも気づかず、朝まで寝てしまった。おまけに萩原家にもきちんと挨拶できなかった。このことを思い立ち、結月は枕に顔をうずめて悲鳴を上げた。そうしていると、慌ただしくドアを叩く音がした。すると、颯真が焦ってドアを開けて入ってきた。「どうした、何かあったのか?」この瞬間、結月は呆然としてしまった。颯真はこの時やっと気がついたようで、部屋の外へ出た。そして不自然な表情で言った。「その、ごめん。結月さんが叫んでいたから、何かあったのかと思って」結月は顔が真っ赤になった。幸いなことに、結月はちゃんと服を着ていたから、人に見せられない姿ではなかった。結月は深く息を吸い、気持ちを切り替えた。「違うの。ただ昨日はちゃんとおじ様とおば様に挨拶できなかったから、失礼だなと思って……」結月が言い終わるまえに、颯真が笑みを浮かべるのが見えた。さらに恥ずかしくなった結月は口を閉じて、しゃべらないようにした。結月が恥ずかしそうにしているのを見て、颯真は笑いを押し殺して、まじめに説明した。「みんな寝るのが早いから、結月さんは昨夜起きていても挨拶はできなかったはずだよ。だから失礼にはなってないさ」ほっとした結月は起きて着替えると、颯真と一緒に下の階へ降りていった。萩原家はかなり大きな一族である。結月が京坂市に来るのを知って、萩原家のおじやおば等みんな後継者の妻を見るためにここに揃っていた。結月の緊張を察して、颯真は彼女の手を繋ぎ、一人一人紹介してあげた。萩原家の人間はみんな優しい人ばかりだった。簡単に挨拶を済ませると、みんな結月に初対面の贈り物を渡し始めた。ジュエリーに、不動産やアクセサリー。30分も過ぎないで財産が倍に増えた結月は萩原家の人間の太っ腹さに唖然としていた。ここにいる人の中で、結月と一番親しいのが颯真だった。結月は颯真の裾を掴んだ。節約しないで自分にプレゼントをするのは止めてと家族たちに伝えてほしかったのだ。すると颯真は彼女の手を見て、握りしめて彼女を
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