なぜか、わたくしの高笑いで……ローラント殿の動きが、わずかに鈍る。 よくわからないけど、効いてるわっ!「あなた、自分が何をしたか分かってますの!? ヒュプシュ卿を傷つけ、殿下を悲しませ、あまつさえ、“わたくしのイヅル”にまで手を出すなんて! 万死に値しますわよ!」「それがなにか? 私は、情を断ち切ったのです。主君への敬愛も、友情も、貴女様への……思慕も。ハンノキの王への恩義のために。勝利のために」「バカおっしゃい! 何が勝利よ! 何が『情を断つ』よ!」 わたくしは、扇をバシッと閉じて、彼を指さした。「“真の己”ですって! 情を持たないことが? 違うわ、あなたは空回りばかりしているけど、いつも真っすぐで……それこそが、本当のあなたなんじゃなくて? 剣術を鈍らせるほどの、優しさこそが!」「だとするならば、その“本当のローラント”という男が、この世に不要だったのですよ」「なっ!? なによっ、それがボイズ家の家訓だとでもいうのかしらっ!」 イヅルが刃を止めれば、他の方向から雨あられと弾幕がローラント殿に迫り、拮抗する時間がもたらされる。 わたくしは、皆様が作ってくれたこの時間で――この心の戦いに勝つっ!「家訓。まあ、そうかもしれませんね」 なおも、ローラント殿は、息一つ乱さない。「亡命者の一族など、後ろ盾がなければ、ひどいものです。……私は、そんななかで生まれた使用人の子でした」「使用人の子? ……今や、護衛騎士筆頭なのに?」「ええ、そうです。実子として、認知だけはされましたが……物心ついた時から、『女に生まれれば、政略結婚に使えたのに』と、父や兄たちから、不要な男子として虐げられて育ったのですよ」 想像だにしていなかった言葉だった。ローラント殿が育ってきた背景。「そんなの…&he
Last Updated : 2026-01-07 Read more