All Chapters of ポンコツ悪役令嬢の観察記録 ~腹黒執事は、最高のショーを所望する~: Chapter 71 - Chapter 80

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第71話 騎士のハートを縫い留めて!

「あっ、ダメそうだったら、わたしが責任とって男装エスコートしましょうか!」「ギャニミード男爵家って、男装して夜会出席許されるの!?」 つまり、わたくしの浮気相手はルチアってこと!?ええっ!? でも、バージル殿下もルチアと仲良さそうなのに、これじゃ小説のドロドロの三角関係みたいですわ!?「えと、バージル殿下は、わたしに恋愛感情とか全然ないと思いますけど」「……そうかしら?」 そんなことを突っ込まれてしまったけど。あなた、婚約者のわたくしより、遥かに優遇されてたのは、紛れもない事実ですからね? ルチアとそんなおしゃべりをしていたら、カツカツと、規律正しい足音が近づいてきた。 やはり現れたのは、近衛騎士の制服に身を包んだ、ローラント殿。片膝をつき、まるで女王に対するかのように、恭しく一礼。「ベアトリーチェ様。ご機嫌麗しゅうございます」 正直、やめて欲しい。「ごきげんよう。ローラント殿。……本日は、何用かしら?」「はっ! 本日、アカデミー周辺に異常はありません。ですが、もし何か、貴女様の慧眼に触れるような異変がございましたら、是非とも、愚かな私にご教示いただきたく!」 キリッとした顔で、そんなことを言うローラント殿。そういうのは上司になさいよ!「わたくしは、ただのいち学生。警備報告を受ける立場にはありませんわよ?」「ご謙遜を! その慧眼、インクテロ事件の警鐘は真実でした。化けウサギ事件での采配、続く図書館事件での機転。……貴女様のお力には、畏敬の念を抱いております!」 熱い、熱すぎるわ。 でも、ローラント殿が熱弁すればするほど、他の騎士様たちの視線は冷ややかになっていくのよね。「戦えない女は引っ込んでろ」って顔で。(仕方がないことですわよね。今まで、杖捌きで後れを取る気は無かったのですけれど……。実際、どの状況でも、わたくしは何もできなかった) 杖魔術なんて、貴族の嗜み。所詮は、温室育ち
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第72話 オセローかしら? いいえ、あうあう令嬢ですの(前半)

 辺りがざわついて、学生たちの注目が集まる。「“燃える薔薇”が、自ら刺しゅうを施したハンカチ?!」「なんてことだ! あの騎士が、その寵愛を受けていると言うのか!」「まさか、殿下を差し置いて……あの方が?」 あー、もう。みんな、勝手な解釈で盛り上がらないで欲しいわっ!(なんで、ルチアのハンカチは『ありがとう』で済むのに、わたくしのは『スキャンダル』みたいになるわけっ!?) なんやかんやローラント殿は「絶対に優勝を、お捧げします! この命に代えても!」と、涙ながらに敬礼していった。 ……結局、何しに来たのよ。あなたの優勝も命もいらないわよ。「はぁ……疲れるわ」 どっと疲れが出て、ため息をつく。 隣で、一部始終を見ていたルチアが、ウフフと笑いながらつついてきた。「ビーチェ様ったら、バージル殿下にも、ローラント殿にも愛されてますね~! うらやましいです!」「うらやましいなら、変わってくださる?」 ……まあ、いいわ。 見ていなさい、ローラント殿、そしてバージル殿下。 きっと、わたくしが連れてくるパートナーを見たら、あなたたち、腰を抜かすに違いないわ。 でも、その作戦もうまくいくとは限らないのよね。……とにかく、恥を掻く覚悟だけはしておかなくちゃ。 結果が出るのを待つのは、あまり良い気分ではないわ。(はあ。……気を取り直して、そろそろ次の講義に行かなくちゃね) と、立ち上がろうとした。「――待ちなさいよっ!」 鋭い声が、テラスに響く。腰に手を当て、仁王立ちするツェツィーリア様。 相も変わらず、挑戦的な眼で、こちらを睨みつけてくる。ああ、もう。次から次へと。「あら、ごきげんよう。ツェツィーリア様」「あ、ツェツィちゃんだ~♪」 わたく
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第73話 オセローかしら? いいえ、あうあう令嬢ですの(後半)

 すると、ツェツィーリア様は、素っ頓狂な声を上げる。慌てて口にした。「ほ、ほら! アレだったら、その……今からでも、バージル殿下に謝ってきなさいよ!」「……謝る?」「そうよ! 今からでも遅くないわよ! このままじゃ、やっていけなくなるわよ!」 ううう……バージル殿下に、謝る? 啖呵切ったのも、なにもかもなかったことにして? パパも、“格”を守ったと褒めてくれたのに? 想像してみる。殿下に、わたくしが「エスコートしてください」って頭を下げる姿を。そんなの……そんなのっ!?「それだけは、ずぇ~~ったいっに嫌ですわっ! パートナーを見つけますのっ!」「くっ! ほんっとうに生意気な女ね!せっかく、忠告しに来てあげたのに!」 だって、無理なんですもの! やっちゃいけないことってあるもの! わたくし、嘘をたくさんついてしまってるけど! 『燃える薔薇』とか言う評判も、嘘っぱちのメッキだけれど! それをしてしまったら、全部が嘘になるじゃないのっ!「なによ! なら、もし見つからなかったら……あんたの無様な一人歩きを、最前列で笑ってあげるわよ! 覚悟したらいいわ!」 高笑いと共に、宣言するツェツィーリア様。 でも、わたくし、わかってしまうのよね。 微かに心配の色が混じっていることを。「もし、誰もいなかったら、本当にどうするの?」と、揺らぎが常に混じっていることを。(……本当に、不器用な方) 思わずわたくしは、ツェツィーリア様に駆け寄る。「な、なによ!? 文句があるなら――」 むぎゅっ。そのまま、衝動的に手を握ってしまった。「あなたは……そのままでいてくださいましねっ。変わらずにっ」「――えっ!?」 お願い、出来たら嫌わないで! せめて、軽蔑だけはしないで! 
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第74話 釣られた大魚は、薔薇を狙うか

「なによこれっ!? バカにしてるでしょ!」 「いえいえ。一部の例外を除き。人は、自らに向けられた好意を、無下にはできない生き物でございます。特に、プライドが高く、孤独な人間ほど」 「……孤独?」 「ええ。ツェツィーリア様もまた、公爵令嬢として、常に周囲から崇められ、同時に利用されてきたお方。対等に、本音でぶつかってくる相手など、これまで一人もいなかったのでしょう」 イヅルの言葉に、はっとする。  そういえば、あの方。いつも取り巻きに囲まれているけれど、本当に心を許しているようには見えなかった。  ――ルチアが来るまでは。(……わたくしと、同じ?) そう思うと、なんだか胸の奥がちくりと痛む。  ツェツィーリア様もまた、この華やかで残酷な貴族社会で、必死に戦っている、一人の女の子なのだとしたら。  思い出すのは、ルチアの言葉。『わたし、最初からツェツィちゃんと仲が良かったわけじゃないんです』 『だから、何度、喧嘩しちゃっても、わたしの方から捕まえに行っちゃう』 きっと素直に、なれなかったのね。立場もあり、最初はどうしたらいいのか、わからなかったのだわ。  今のわたくしには、その気持ちがよくわかった。「好意の吐露とは、予想外で偶然に満ちたものほど、響くものですよ。逆もまた、然りですが」 「……なら、もっと響いてそうな顔で言いなさいよ~」 涼し気な顔で言われても、ちょっとなー。  この腹黒執事、感動からほど遠い性格の癖に、なんで人間心理に詳しいんだろうって、つくづく不思議になるわ。「さて。それはさておき、です」 イヅルはパンと手を叩き、話題を変えた。「問題は、ヒュプシュ卿ですよ。そろそろ、撒いた餌に、食いついてくる頃合いかと」 「ええ、そうね。……あっちのほうが、よっぽど問題よ」 偽の手紙と、日記の切れ端。  あれから数日経つけれど、まだ何の音沙汰もない。無視されたのか、それとも……。 丁度、そこでコンコン、と控えめなノックの音。「お嬢
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第75話 愛(ミンネ)の練習、夜の蝶にときめいて?

 夜の帳が下りる頃。 シャーデフロイ家の裏門から、一台の地味な馬車が、ひっそりと滑り出した。 紋章もない、黒塗りの質素な箱馬車。 窓には厚いカーテンが引かれ、外からは中の様子は窺えない。そんな、二人きりの密室で。「どうかしら? イヅル」 わたくしは、羽織っていたショールを、バサッ!と肩から落とした。 現れたのは、今宵の決戦のために用意した、勝負ドレス。色は、闇夜にも鮮烈な、深いバーガンディ。燃える薔薇を冠したなら、こうでしょう? だけどね、そのデザインは――。「とっても大胆……でしょう?」 ピクリ、とイヅルの眉が動いた。ええ、そうでしょうとも! 肩から背中にかけてが、大きく開いたバックレス・スタイル。胸元も、いつもと違い、危ういラインを描いている。この肩紐も心もとない感じね! 動くたびに、スリットから白足が覗く。ニクシー夫人特注の、傾国の悪女仕様よっ!「ほう。非常に、前衛的な装いです、が……」 向かいの席に座るイヅルは、片眉を上げ、まじまじとわたくしを見つめた。黒曜石の瞳が、ゆっくりと舐めるように這っていく。 なんか恥ずかしいわっ!? でも、ど、どうかしらっ? さすがのイヅルも、このわたくしの色香に、見惚れてしまったんじゃなくて?「……お風邪を召されますよ?」「そこじゃないわよっ!」 すかさずブランケットを差し出してくるイヅルに、わたくしは全力でツッコミを入れる。「見てなさいよ、この背中のライン! このデコルテ! 『まあ、なんて大胆な! 君のような清純令嬢が、こんな格好をするギャップ……そそるねっ(キラリン)』って! ヒュプシュ卿をイチコロにする、計算され尽くしたドレスなのよ!」 わざとらしく髪を掻きあげて、ウインクする! どう!? これで落ちない男なんて、この世にいないでしょう!?「冬眠から目覚めた、子熊が欠伸をするポーズ?」「セクシーな誘惑
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第76話 赤ドレスちゃん、鷲狼狙う(前半)

「いえいえ、滅相もない! ただ、あまりにもお嬢様らしくて……ふふっ、最高でございます。ええ、ご期待以上でしたとも」 なによそれ! どこがおかしいのよ! わたくしは、顔から火が出るような恥ずかしさに、わなわな震えた。「もういいわっ! やめやめ! 二度とやらないわよ、こんなこと!」 手を引っ込め、ブランケットを頭からかぶる。もうっ、今すぐこの馬車から飛び降りたいわっ!「おやおや。拗ねないでくださいませ」 イヅルの声が、優しく響く。 ブランケット越し。手が、わたくしの頭をぽん、と撫でた。「実際、悪くはありませんでしたよ。強いて言えば……そう、とても一生懸命なところが」「うっさい! 褒めてないでしょ!」「いえ、褒めておりますとも。……ただ」 ふと、しっとりトーンが下がる。「あまり今の熱量で、口になさらぬ方がよろしいかと」「……なんでよ」「遥か東の果て、我らが故郷によれば、言葉には力。即ち“言霊”が宿ると申します。時に、お嬢様のような方が、本気で誰かを縛ろうとしたなら――その鎖は、二度と解けないものになるやもしれません」 ドキリ、とした。 ブランケットの隙間から覗き見ると、イヅルは、もう笑っていなかった。「ですから、お嬢様」 イヅルは口を寄せると、耳奥が痺れるほどに甘ったるく囁いた。「あまり、己を晒さぬことです。……狼とは、血の匂いだけでなく、無垢な獲物の“白さ”にも、ひどく興奮するものですから」 ――ぞくり。 含まれた危険な響きに、身動きが取れなくなる。それってどういう意味? 答えを聞く前に、馬車が止まった。「到着いたしました。王立アカデミー、旧温室の前でございます」 イヅルは、何事もなかったかのように離れ、扉を開ける。 入り込む
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第77話 赤ドレスちゃん、鷲狼狙う(後半)

 思わず、足に忍ばせた|護身用具《ディスツプリーン》に手を伸ばす。硬質な感触が、少しだけ安心させてくれた。「良い夜ですわね、ヒュプシュ卿。随分と、熱烈なお誘いをいただいたものですから、飛んでまいりましたわ」 わたくしも負けじと、扇を広げ、妖艶な笑みを返す。……躓きそうになって、グラッとしかけたのは内緒よ。 ……でも、マジマジと顔を見て、なんだか。あれれ? 最近、会ったことがある気がして来たわね。結構、ご無沙汰してるはずなのだけれど。 記憶と格闘している合間に、彼は優雅に微笑むと、恭しく一礼。「ふふ。貴女のような可憐な蝶が、応じてくださるとは光栄の極み。きっと、その輝きに、月も恥じて隠れてしまうだろう」 自然に手を取ってきて、手の甲へキス。そのままの姿勢で、ゆっくりと視線を上げ……眼を見つめてきた。 これが社交界で数多の貴婦人を虜にしてきた、魔性の色男なのね。これは勉強になるわー(全然平気) もしかしたら、嘘でもドレスを褒められるだけ、今の婚約者よりマシかもなー?(本音)「えー。それで。わたくしの“落とし物”を拾ったというのは、本当かしら?」「ああ、もちろんだとも。……これだろう?」 ヒュプシュ卿が懐から取り出したのは、あの日記の切れ端。ひらひらと、見せつけるように揺らしてみせる。『ああ、この許されざる恋。なんと麗しき――わが愛、ヒュプシュ卿』 わたくしの筆跡で書かれた、ニセモノの恋物語。 すると、ヒュプシュ卿の唇が、三日月のように歪んだ。「さあ、私は、これを貴女の本心と信じてよいのだろうか。いずれにせよ、これが私の手元にあるのは、もしや……貴女にとって、都合が悪いのかもしれないな?」「……それは、あなたのお気持ち次第じゃないかしら?」 人選、間違えたかもしれない。手玉にとれないかも。「私の気持ちか。そうだな、貴女の想
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第78話 破滅の女が、終わりを告げる(前半)

「あの、大丈夫? ……あっ、最近、会ったことない?」「だから、何の話をしてるんだ、さっきから!」 怒られちゃった。ツェツィーリア様にそっくりね。なに、シューベルト家ってみなさん気が短いの?  わたくしは、扇をパタパタあおぎながら、内心で舌を出す。「うーん。深呼吸してみましょう? 温室の香りを胸いっぱいに吸えば、きっと落ち着くわ」「もういい。……単刀直入に言う」「あら、前置きは終わり?」「ああ、取引だ。企みはわからないが、貴女をエスコートしてもいい。全力でな」「本当にっ!?」 やったー! ついにっ、ついに、相手を見つけたわ! 大魚も釣っちゃう、わたくしの魅力、恐るべし!「ただし、条件がある」「……条件?」「簡単なことだ。貴女が夜会で、私の隣に立ち、“ある証言”をしてくださればいい」「証言ってなんの?」「一連の王太子暗殺未遂……『化けウサギ事件』と『図書館事件』の真犯人は、バージル殿下の側近。騎士ローラントであったと言え」 ――は? わたくしは、耳を疑った。 ローラント殿が、犯人? なに、その三流作家みたいな筋書きは。「そんな嘘、誰が信じると……」「別に、嘘のつもりもないがな。被害者であり、功労者である貴女が、涙ながらに証言すれば、世論は動く。そこまでするなら、貴女の“恋心”を信じよう」 コイツ、わたくしを利用する気満々じゃないの! しかも、あのローラント殿を陥れて、バージル殿下の孤立を狙うなんて! この乙女の恋心(偽だけど)を、そんな汚い政争の道具にする気なのっ!? 信じらんないっ!「お断りしますわ。わたくし、そのような卑劣な真似には加担いたしません!」「今でも貴女は、私に明らかな嘘を吐いてるだろうが。今さら、虚偽証言の一つや二つが何だ」「そ
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第79話 破滅の女が、終わりを告げる(後半)

「ベアトリーチェが己を囮に、この事件を解決しようとしていたのは、もうわかっているのだ。貴様が卑怯な手で、彼女を呼び出し、罠に掛けたこともな!」「なっ!? 覚えが! 私は覚えが全然ないっ!」「しらを切るか。貴様が外国勢力に、怪しい根回ししていた証拠も挙がっているのだぞっ!」「それとこれとはっ!? 今、この状況と全然関係ないやつじゃないかっ!」 あれ、バージル殿下が「宰相派が、わたくしを罠に嵌めた」と、斜め上の深読みをしている??? ん……改めて、ジッと見る。ローラント殿やルチアがいるなかで、ヒュプシュ卿を。「あーーーーっ!!」 思わず、大声上げちゃった。全員が一斉に、わたくしに注目。でも、それくらいビックリしたのですもの。「いえ。あのー……ヒュプシュ卿って、この間、王立アカデミーにいましたわよね?」 みんなポカンとしたけれど、ヒュプシュ卿だけ青ざめる。「髪や瞳の色も、変えてらっしゃいましたけれど。男子学生たちと、一緒にどこかへと、向かわれておりましたわね」 そう、わたくしが、都合のいい殿方なんて、落ちてはいないのかしら。なんて、周囲を見渡した時。 どこかへ向かう学生の一団に混じって、見覚えのあるイケメンが目についたのよ。「どこで見たのか、今までわからなかったのですけれど――アレこそが、魔法薬で外見を変えた、ヒュプシュ卿だったのですわっ!」 いやー、スッキリした。なんだか、喉につっかえていた骨が取れたみたい。 ローラント殿が、近寄って来てそっと尋ねて来る。「ベアトリーチェ様、それはいつ頃のことですか?」「えっと。ほら、ローラント殿が、わたくしを尋ねて来た時。エスコート役の、お願いした日のことですわ。……断られちゃったけど」「あの日は――ハッ!? ちょうど、魔王崇拝者たちの集会があった日では?」「なんだと? ローラント、今すぐこの男を引っ立ていっ!」「ははっ、直ちに!」 魔王崇拝? &hell
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第80話 お気に召さないまま

「例えば、バージル殿下に理解を求めていらっしゃいますか? よく言うではありませんか、“腹が立つのは、相手に期待しているから”だ、と」 わたくしが、バージル殿下に期待?「知った風なことを言うのね。あのね、それはさすがに単純化し過ぎよ。人間なんて躓いたら、小石だって憎くなるのに」 腹が立つにも、色々あるわよ。そんなの。「なれば、バージル殿下には、ご理解を求めてはいらっしゃらない?」「もはや、ね。前は、違ったけど」 バージル殿下には、以前から苦手意識があった。 それでも、わたくしだって、シャーデフロイ家の娘。不安、不満があったとしても、精一杯、愛情や尊敬を以て、殿方を支えていこうと思った。「そうね、わたくしは“嘘だとしても”、仲睦まじくするべきだと思っていたのよ。きっと、だからこそ、そんな気持ちすら、踏みにじられるなんて、思ってもみなかったのね」 でも、実際は、わたくしは我慢したのに、相手は警戒を取り繕いもしなかった。「もし、バージル殿下さえ、最初からほんの少しでも優しかったら。こんな面倒な回り道する必要はなかったわね。でも――」 『あの時、そうしてくれたら、良かったのに』は思うけど。 『今から、そうして欲しい』とは思わない。 きっと、バージル殿下に感謝すべき点があるとしたら、わたくしを婚約者として歓迎しなかったことだわ。「……ビーチェお嬢様は、王妃の地位を望まれていたのでは? 幼少期、最も偉い女になってみたい。と、仰っていたではありませんか」「そりゃ、小さい頃は言ったわね。国母なんて栄誉じゃないの。だからそうね、今でも悪い気はしないわ」 わたくしほど、才色兼備の令嬢なんてそうはいないもの。別に、手を抜いて生きてきたわけじゃないし。「でも、わたくし。今は、嫌よ。出来れば、シャーデフロイ家を継ぎたいし、無理でも……殿下と、結婚はしたくない」「それほどまでに、バージル殿下が、お嫌いで?」「そりゃ、
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