それから、しばらく時が流れて。 テスト週間に突入し、活動は一時休止。明日からいよいよ期末テストが始まるということで、俺たち四人は“追い込み”の真っ最中だった。 場所はもちろん、喫茶アンサンブル。いつもの日当たりのいい席で、それぞれがノートや教科書と格闘していた。 真司はというと―― 「……グラマトン? グラマティカ……えーと、グラ……なんだっけ?」 虚ろな目で単語をぶつぶつ繰り返している。どうやら、昨日やっとテスト範囲のノートを写し終えたらしく、今日から本格的に暗記作業に入ったらしい。まったく、毎回どうしてそうなるのか。自業自得だ。 一方、茉莉花はというと、ちょっと疲れた顔をしているものの、真司とは比べ物にならないくらい余裕がある。 すでに範囲の勉強は一通り終えていて、今はチェックテストや要点の確認。完全に“定着率フェーズ”だ。さすが体育会系のわりには(?)、やることはしっかりしている。 俺はというと、まだ頭に入っていない初日の科目を、今まさに詰め込んでいる最中。黙々と暗記中……だが、集中力が時々切れて、ついエリカに視線がいってしまう。 ……エリカはというと。 「ふんふふ〜ん♪」 鼻唄まじりに、明日のテスト範囲をサクサクと要点まとめ中。 しかもそのノート、びっくりするくらい的確で簡潔。だが、その量は膨大でテストの範囲を全て網羅していた。実はエリカは、俺たちの中でいちばん成績がいい。 「エリカ、ずるいよな〜。普段はちょっと“あれ”な感じなのに、実は頭いいとか。なんか毎回、裏切られてる気がするんだけど」 真司が肩を落としながら、苦々しくぼやく。 「たしかにね。漫画とかだと、エリカみたいな“あれ”な子ってテスト壊滅か、よくても普通レベルなはずなのに。エリカ、毎回上位だもんね」
最終更新日 : 2025-10-23 続きを読む