「高校でも直央くんと一緒でよかったわね、エリカ」 海風が窓から入り込む。助手席に座る私――海堂(かいどう)エリカは、うなずきながら笑顔をこぼした。 大好きな幼馴染みの男の子と、高校も同じ学校に通えることに胸を踊らせていた。 「うん! しかも大学も一緒に行こうって、ふたりで決めたんだ」 「ふふっ、気が早いわね。でも、そういうの……いいと思うわ」 ママが目を細めて笑う。ハンドルを持つ手が、優しく揺れていた。 金髪に青い瞳。肩までのウェーブヘアに、澄んだ白い肌。春の陽射しによく映える青いカーディガンと白シャツ。黒のスキニーパンツがその足の長さを際立たせている。 私も一応金髪と青い目だけど、肌はパパに似てママほど白くはない、スタイルも……うん、まだまだ。けど、それが逆に「私だけの形」って気もして、ちょっとだけ誇らしい。 「ねぇ、エリカ」 ふいに、ママが真面目な声で聞いてきた。 「なに?」 「直央くんとは、どうなの? なにか進展は?」 「な、なにそれ……!」 心臓がドクンと跳ねた。顔が熱くなるのがわかる。 「ま、まだ……何もないっていうか……!」 「やれやれ。あなた、美人なんだから積極的にならなきゃ。直央くんだって優しくて、可愛い顔してるし、女の子から人気あるんじゃない?」 「そ、そんなことないよ……!」 本当は、わかってる。優しくて、いざという時には頼りになって。そして、誰よりまっすぐで。 まるで……王子様みたい、なんて。思ってても絶対に言えない。 ママがくすっと笑った。 「実はね、ちょっと前に耳にしたの。“直央くんのこと、好きだった”っていう子……何人かいたらしいわよ?」 「……えっ? うそ、だれ? ホントに誰……っ!」 急に焦ってる自分がちょっとおかしくて、だけどどこか、嬉しくもあった。 こうして、ママと恋の話ができて。同じ高校に、直央くんと通えて。 今が、夢みたいに幸せで。 ふと、前方の道がカーブを描いた。 ……静かだった。波の音と、タイヤがアスファルトを滑る音だけ。 その先で、何かが見えた。 前方の対向車線。大型トラックが、中央線を越えそうなほどに寄ってくる――ハンドルが逸れた? 違う、まっすぐこっちに――! 「え……?」 異常に気づいた直後、マ
Last Updated : 2025-10-09 Read more