俺たちは、茉莉花と千紘ちゃんこと蒼井さんと合流し、テーブルを挟んで男女三人ずつ、向かい合って座っていた。 ……とはいえ、肝心の当人たち。日向くんと蒼井さんは、そろってうつむいたまま、ぴくりとも動かない。 「楓、教科書のこと聞きたいんじゃないのか? なんで黙ってんだよ」 しびれを切らした真司が、小声で日向くんに声をかけた。 「いや、まさかこんな急に目の前に本人が現れるなんて思ってなくて……。心の準備が……っス……」 ……さっきまでの、あの体育会系・元気系のノリはどこへやら。今は見事にうじうじモードだ。 「はぁ~もう、らちがあかない! ねぇ君、千紘ちゃんに聞きたいことがあるなら、シャキッとしなさいよ!」 ついに堪忍袋の緒が切れた茉莉花が、バンッと両手をテーブルに置いて、ズイッと日向くんに詰め寄る。 「は、はいっス!」 慌てて背筋を伸ばす日向くん。ビビりすぎて少しのけぞってた。 それでも、呼吸を整え、覚悟を決めたように口を開いた。 「千紘……お前が、教科書貸してくれたのか?」 その問いに、蒼井さんは一瞬ピクリと反応し、うつむいたまま小さく頷いた。 「うん……」 「そっか。ありがとな。でも、なんであんな回りくどいやり方を?」 その問いには、沈黙。 だけど今度は、茉莉花がやさしい声で背中を押した。 「千紘ちゃん、さっき話してくれたこと。ここでもう、言っちゃおっか? 逃げたら、またきっと後悔するよ? ……ある意味、今がチャンスなんじゃない?」
Last Updated : 2025-11-08 Read more