慎の表情は、どこか陰りを帯びていた。眼下に広がる混乱を見下ろしながら、紬がまだ見つかっていないという事実に、胸の奥が重く沈み込んでいた。己の命を狙う者が潜んでいることは、すでに明白だった。これからはより一層、慎重に動かなければならない。前方の操作台に向かう理斗へ、慎は静かに問いかけた。「清水さんが来るとは思わなかった」理斗は操作の手を止めずに答えた。「笑美に頼まれたんです。てっきり一緒にいると思っていました」その言葉が、鉛のように慎の胸に重く落ちた。つまり――紬の行方は、まだ分からない。「……まだ見つかっていない」慎は伏し目がちに、薬指の結婚指輪を見つめた。「西と南は探しました。温井さんの痕跡は今のところ何も。長谷川代表はどちらから?」このエリアは、広いともいえないが狭くもない。しかも今は混乱の最中にあり、身動きの取れない人々があちこちに散らばっている。人を探すには、あまりにも条件が悪すぎた。慎は眉根を寄せ、しばらく考え込んだ。「では、お互いに逆方向から探してきたことになるね」理斗は方位を確認しながら続けた。「温井さんと一緒にいたのは現地の関係者たちで、同僚ばかりです。チームで避難していたはずなんですが……一人なら難しくても、チームなら本部に連絡の一つくらい入れられるはず。それが全員、今も沈黙したままで」慎の目が、すっと細くなった。「チームで動いていれば、誰かしら報告を上げているはずだ。それが誰一人として何も言ってこないとなると、単純な話ではなくなる」紬一人だけなら、何かのトラブルに巻き込まれた可能性が高い。だが、これだけ大勢が同時に音信不通となれば、話はまったく別になってくる。これだけの人数だ。探せば必ずどこかに痕跡が残っているはずだ。それでも見つからないなら――慎の瞳に、静かな危険の色が宿った。まさか……「もしかして……彼女たちはもう、ここにはいないんじゃないか」理斗は黙って考えを巡らせた。三十分ほど前、彼のもとにも連絡が来ていた。政府がすでに捜索に入っているが、そちらからもまだ何も届いていない。そうなれば、慎の指摘する可能性も、十分にあり得る。慎はポケットから携帯を取り出し、紬へ発信を試みながら告げた。「手間をかけるが、先に安全な場所へ移動してくれ」新たな策が浮かび
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