Semua Bab 捨てる旦那あれば拾うホテル王あり~身籠もったら幸せが待っていました~: Bab 1 - Bab 10

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序章 早朝の神社

朝、早く起きられたので、駅までの道をちょっと遠回りした。「おっ」いい雰囲気にレトロな喫茶店を発見したが、惜しいなー。明日、私は新婚旅行を兼ねたハワイ挙式で日本を発つ。帰ってきた翌日は新居への引っ越し予定なので、ここに来るにはわざわざになってしまう。「もっと早く発見してればな……」あまり住んでいるマンションの周りを探索しなかった私が悪いので、文句を言っても仕方ない。さらにふらふらと歩き、今度は小さな神社を発見した。「神社とかあったんだ……」なんとなく興味が湧いて境内へ足を踏み入れる。小さいながらによく手入れされていた。「ここ、パワースポットだったりして?」傍らに生えている木の枝から差し込む朝日がキラキラして、とても綺麗。少し朝早い時間の静謐な空気が、さらに神秘的に感じさせた。「五円……あった」お賽銭箱の前に立ち、お財布から出した五円玉を投げ入れる。「お願い……。幸せな家庭が築けますように!」柏手を打って神様にお願いした。彼と温かくて幸せな家庭を築く。それが今、私一番の目標だ。ここの神様ならなんか、叶えてくれそうな気がする。「いいお散歩ができたなー」きっと、明日からの新婚生活は光り輝く明るいものになるだろうなんて思っていたけれど。……まさか、あんなことになるなんて予想もしていなかった。
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-10-31
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第一章 挙式予定のハワイまできて式目前で彼と別れました 1

ぼーっと見ているビーチでは、楽しそうに男女や家族連れが遊んでいる。……なんで、こんなことになっているんだっけ。傍らにはでっかいスーツケース。いかにも今、ハワイの地に降り立ちましたといった出で立ちだ。事実、今日の昼に着いたばかり。でもそのときはひとりじゃなかったのだ。……これからどうしよ。はぁーっと明るい空気のハワイには不釣り合いな、陰鬱なため息が漏れる。日本を発ったときは、これからの未来に期待で胸を膨らませていた。しかし着いた途端、不幸のどん底に突き落とされるだなんて誰が思う?『俺、お前やめてこの人と結婚するから!じゃあなー』笑って手を振りながら去っていった元夫を思い出し、またため息が落ちた。新婚旅行を兼ねたハワイでの挙式……のハズだった。しかし飛行機の中で隣に座っていた彼女と意気投合し、私と別れて彼女と結婚することにしたそうだ。それに私が反対したかといえば。『あ、そう、なんだ。お幸せに、ね……』なんて曖昧に笑って送りだす始末。そうしてホテルも追い出されて今、ビーチで途方に暮れて座り込んでいる。「どう、しよ」ため息ばかりが口から落ちていく。そろそろ私がついたため息で雲ができ、局地的に雨でも降りだしそうだ。もしかしたら彼が私から離れる予兆は、前からあったのかもしれない。このひと月は仕事とこの準備で忙しく、それ以外でほとんど顔を合わせなかった。その間に、いやもっと前から。考えだすとドツボに嵌まっていく。よかったのは、入籍と引っ越しは帰ってからの予定だったのくらいだ。目の前では太陽がだんだんと海へ沈んでいく。今晩の宿をどうにかしなければとは思うが、ちっとも身体は動かない。「……はぁーっ」「なにか困っているのか?」もう何度目かのため息を落としたら、日本語で声をかけられた。顔を上げると、日本人男性が立っている。「どうかしたのか?具合でも悪いのか?」私よりも少し年上に見えるスーツ姿で眼鏡をかけた男性は私を心配してくれていた。「あ、えっと。なんでもない、です……」それに対して私は、ただ笑うしかできなかった。「なんでもないわけがないだろう。もう暗くなったのに、こんな場所に女性ひとりで」気づけば日はすっかり暮れ、辺りは暗くなっている。「その、あの、えっと」理由を聞かれたところで、知らない人間にハ
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第一章 挙式予定のハワイまできて式目前で彼と別れました 2

彼がいったい、なにを言っているのかわからない。戸惑っているうちに車は豪華なホテルの玄関に止まっていた。「降りろ」「あっ」追い出されるように車を降ろされる。「こい」どんどん歩いていく彼を慌てて追う。すれ違うホテルスタッフのほぼ全員が、彼に頭を下げた。真っ直ぐにエレベーターに向かい、乗る。「あの……」エレベーターの中、彼は壁に寄りかかり腕を組んでなにも言わない。どこに連れていこうというんだろうか。彼はいい人そうに見えたが、本当に私は騙されていた?それならそれで、かまわない。「入れ」彼が私を連れてきたのは、スイートルームだった。ここに泊まっているんだろうか。リムジンに乗り、身に纏うのは仕立てのよさそうなスーツ。いまさらながら彼の正体が謎だ。「ハワイ滞在中、ここに泊まるといい」「えっ、私、お金ないですから……!」この旅行代と新居への引っ越し費用で、かなりのお金を使った。それにあの人と別れた今、帰国したら新しい家を探して引っ越ししなければいけないし、少しでも節約したい。「ハワイ滞在中の費用は僕が全部見てやるから心配しなくていい」ソファーに座った彼が私へと目を向ける。そこに座れという意味だと気づき、L字型ソファーに距離を取って腰を下ろした。すぐに彼が身体をずらし、距離を詰めてくる。「そんな、見ず知らずの方にご迷惑をおかけするわけには……!」次の瞬間、いきなり唇が重なっていた。目を閉じる間もなく、彼の顔が離れていく。「これで君と僕はキスをした仲だ。見ず知らずではない」「……最低」ぐいっと唇を拭い、思いっきり睨みつける。「そんな顔もできるんだな。ますます気に入った」しかし、彼にふふっとおかしそうに小さく笑っていて、まったく効いていなかった。「この理由が気に入らないというのなら、今、君の唇を無理矢理奪った償いとしてハワイ滞在中の費用を僕がみてやる。それならどうだ?」どうだ?もなにも、レンズの向こうから私を見つめる瞳は、これで文句ないよなと有無を言わせない。「なんでそこまで、私の面倒を見たがるんですか?」出会ったのはつい少し前。なのにどうして、ここまで彼がしてくれるのかわからない。「君が気に入ったからだ。それ以外に理由はない」きっぱり言い切った彼は、いっそ清々しかった。「だから僕は君を甘やかせ
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第一章 挙式予定のハワイまできて式目前で彼と別れました 3

「……夢じゃない」目が覚めたら広いベッドの上だった。自分のマンションとは言わない、せめて安ホテルの硬いベッドの上であってほしいなどという私の願いは無残に打ち砕かれた。「いや、顔を洗って完全に目が覚めたら……って可能性はないよね……」我ながら往生際の悪い自分に自嘲し、洗面所へと向かう。しかし通過しようとしたリビングで信じられないものを見て、足が止まった。「おはよう」私に気づいた彼が、読んでいた新聞から顔を上げる。「お、おはようって、なんであなたがここに……!」オートロックだから鍵はかかっているはず。そして部屋の鍵は確かに昨晩、テーブルの上に置いて寝た。なのにどうして昨日の彼がここにいるの!?「なんでって、今日は観光に連れていってやると約束しただろ」私は怒っているというのに彼は平然と、また新聞へ視線を戻した。「ほら、顔を洗ってこい。準備が済んだら朝食を食べに行こう」「昨日も言いましたけど、私はあなたのお世話になる気はこれっぽっちもないですから」「いいから顔を洗ってこい。僕は君が起きるのを待ちくたびれて、腹が減っているんだ」「それはなんか、すみません……」つい謝ったが、これは私が詫びなければいけないのか?しかも彼の顔は新聞から上がらず、私のほうをちっとも見ない。「あーもー、腹が減って死にそうだー」わざとらしく言い、ようやく私の顔を見た彼は、右の口端だけをつり上げてニヤリと笑った。からかわれた、そう気づいて頬がカッと熱くなる。「……意地悪ですね、あなたは」「そうか?」軽く言って今度は、彼は新聞を畳んだ。「いいからほら、顔を洗って着替えてこい。いつまで経ってもしないというのなら、僕がやってやるが?」「けっこうです!」本当に実行されそうで、とっとと洗面所に逃げ込む。なんなんだろう、あの人。ヤるのが目的ならまだ理解できるが、昨晩は私をおいてさっさと出ていった。そして今日は朝から、朝食を食べに行こうと私を待っている。「……ほんと、わかんない」はぁーっと私の口から落ちていったため息は、どこまでも憂鬱だった。着替えて寝室から出てきた私を見て、彼がひと言発する。「地味だな」それはぐさっとナイフになって私の胸に突き刺さった。お洒落だと思って買った、シンプルなフレンチスリーブの黒ワンピース。でも私が着たらいま
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第一章 挙式予定のハワイまできて式目前で彼と別れました 4

「その。……あなたの、お名前は?」「僕の、名前?」不思議そうに彼が、眼鏡の下でぱちぱちと何度かまばたきをする。「そうだった、まだ名乗ってなかったな」くすくすとおかしそうに笑いながら彼は手を差し出してきた。「僕は和家。和家悠将だ。よろしく、初見李依さん」「短い間ですが、よろしくお願いします」その手を笑って握り返した。名前を聞いたところで、頼んだ料理が出てくる。「食べようか」「そうですね」促されてナイフとフォークを取った。ベリーがたっぷりのったパンケーキは美味しそうだ。「和家さんはお仕事でいらしてるんですか?」「仕事と言えば仕事だな」悪戯っぽく彼は言うが、それで信じろだなんて難しい。「こちらにはいつまで滞在予定なんですか?」「特に決めてない」「お仕事はなにをしてらっしゃるんですか?」「んー、内緒」とか言われて安心できるわけがない。「あのー、……カタギの方、……ですよね?」仕事は謎、それでいてきっとかなりのお金持ち。まともな職業な人間だとは思えない。「誓って、やましい仕事はしていない。人よりちょーっと、稼いでいるだけだ」なんでもない顔をして和家さんは言うが、……ちょーっと、ね。ちょっとでリムジンを乗り回し、私を高級ホテルのスイートに連泊させられるとは思えない。「わかりました、これ以上聞きません」これ以上、詮索するのはやめよう。この人を頼って、一時の夢をみる。それでいい。「うん、そうしてくれると嬉しい」これでこの話はおしまい。あとは美味しいパンケーキを堪能した。朝食のあとはショッピングセンターへ連れていかれた。「あのー」「李依の服を買うって言っただろ?」私の手を引き、和家さんは歩いていく。適当な店で足を止めて、中へと連れ込まれた。「そんな、服なんて買ってもらえません」「まだ遠慮するんだ?」服を選んでいた手を止め、彼が振り返る。「李依は本当に可愛いな!」「えっ、あっ!」いきなり抱き締められて、どぎまぎしてしまう。「よし、この店買い占めるか」和家さんはご機嫌だが、私はなんかまた彼のスイッチを押してしまったのかな?「さすがに店買い占めは……」「そうか?」彼は怪訝そうだが、もしかしていつもそういう買い方をしているんだろうか……?店買い物は
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第一章 挙式予定のハワイまできて式目前で彼と別れました 5

「いや、いい」しかし和家さんはそれだけ言い、またショーケースへと視線を戻した。その隣に並びながら、じっと指環を見つめる。これをもらったときは、とても幸せだった。まだここに嵌まっているのは私の未練だ。外すべきだとわかっている。でも、今はまだできない。「こういうのはどうだ?」和家さんが指した先には、三日月にルビーをあしらったペンダントが飾ってあった。「今、李依はあの三日月みたいに欠けているが、僕が満たして満月にしてやる」じっとレンズの向こうから和家さんが私を見つめている。きっと彼は私に同情してくれているんだと思う。そうじゃなきゃ、こんな好意を向けるわけがない。「……そうなったら素敵ですね」ぽっかり空いてしまった私のこの心が、満たされるときなんてくるんだろうか。ううん、今は考えない。和家さんと束の間の非日常を楽しむだけだ。夜は海が見える、素敵なレストランだった。「それ、似合ってるな」「……ありがとうございます」褒められるのはなんだかくすぐったい。帰ってきて、和家さんに買ってくれたドレスに着替えた。濃紺の、背中が大胆に開いたドレスは恥ずかしいが、たまにはいいと思う。「うん、そのペンダントもいい」「……よかったです」私の胸もとには三日月が揺れている。和家さんの〝三日月みたいに欠けている〟というのが今の私にぴったりで、それで気に入って自分で買おうとしたが、現金どころかカードも和家さんの持つ、私のお財布の中。押し問答の末、最終的に渋々彼に買ってもらった。食事はフレンチだった。「李依は今日、二十七になったんだっけ?僕は三十六だから九つ下なのか」ワイン片手に和家さんは楽しそうに話し続ける。「あー……。そうですね」『李依の誕生日に挙式なんて素敵だろ?』なんて言っていたあの人の顔がよぎって、胸の奥がずきんと痛んだが、感情を隠して笑顔を作った。「……そんな顔をするな」悲しそうに和家さんがぽつりと落とし、そこから微妙な沈黙がテーブルを支配する。ハワイにいる間――和家さんと一緒にいる間は、暗くなりたくない。「でも、今日は和家さんが付き合ってくれて、たくさんいろいろ買ってくださったので、そんなに悪い誕生日じゃないと思います」きっと彼がいなければ、安いホテルの狭いベッドの上で、膝を抱えて丸くなって過ごしていただろう。
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第一章 挙式予定のハワイまできて式目前で彼と別れました 6

「おはよう、李依」次の日も起きたら、リビングで和家さんが新聞を読んでいた。それになにか言っても無駄なので、ちらっとだけ見て洗面所へと足を向ける。「なんだ、ぐっすり眠れなかったのか?もしかして枕でも合わないのか?」冗談めかして彼がくすくす笑う。それになにかがプチンと切れた。「そうですよ!うちの枕に比べたらここの枕、最悪なんですから!」「……は?」予想外の反応だったのか、和家さんが笑いを止めて私の顔をまじまじと見る。しかしかまわずに、私はさらに続けた。「それなりの枕を使っているんでしょうが、うちの会社の枕の足下にも及びませんね。我が社の枕は頭を包み込むように柔らかく、どの方向を向いても首に負担をかけない設計なんです。あの枕を知ったら、他の枕では眠れません。ただ、弱小会社なのであまり世に知られていないのが大変惜しいところです……が」一気に捲したてたところで自分のやらかしたことに気づき、みるみる顔が熱くなっていく。ううっ、今すぐ寝室に戻ってベッドに潜り込んで隠れたい。「そんなに違うのか?」大爆笑されるか激怒されるかどちらかを想像していたのに、和家さんは至極真面目に聞いてきて反応に困る。「そう、ですね。真剣に今回の旅行、枕を持っていこうか考えたくらいです」さすがにそれは諦めたが、それくらい一度あの枕を知ると離れられないのだ。「ふーん、一考の余地あり、だな」彼は考え込んでいるが、自分用に欲しくなったんだろうか。なら、紹介するのもやぶさかではない。今日は身支度を済ませたあと、朝食を食べてラグジュアリーなスパに連れていかれた。翌日はホテルのプールで高級ガバナを貸し切り、シャンパンを傾ける。最後の夜は……。「綺麗です……!」私の視線の先では、水平線に太陽が沈んでいっている。豪華なクルーズ船を貸し切ってのクルージング。船にはスタッフ以外、和家さんと私しかいない。「李依のほうが綺麗だけどな」さりげなく和家さんが私の肩を抱き寄せる。「そういう台詞はもう、お腹いっぱいです」笑いながらそっとその腕の中から抜け出した。彼はなにかと私を、可愛い、綺麗だと言う。別れたあの人からも言われたことがない台詞を言われ最初こそ照れていたが、あまりに言われすぎて慣れてしまった。きっと彼は女性と見れば、そういう台詞が勝手に口から出てく
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第一章 挙式予定のハワイまできて式目前で彼と別れました 7

「おはよう」「……おはようございます」目が覚めたら、和家さんが肘枕で私の顔を見ていた。「なに、してるんですか?」「ん?李依の寝顔は可愛いなーと思って」ちゅっと私の額に口付けし、彼が起き上がる。「顔を洗ったら朝食を食べに行こう」「そうですね」私も起き上がり、一緒にベッドから出た。身支度を済ませ、じっと指環を見つめる。昨晩、和家さんが全部忘れさせてくれた。もうこれは必要ない。「バイバイ」ゴミ箱にそれをぽとんと落とした。もう、過去は振り返らない。日本に帰ったら私は前を向いて生きていく。……でも。「着替え、済んだのか?」「あ、はい」返事をして寝室を出る。「最後の朝は優雅に、ゆっくりホテルで食べよう」「そういえばいつも外で食べていたので、ホテルの朝食はこれが初めてですね」一緒にカフェに向かいながら和家さんをちらり。きっとこのまま一緒にいたら、少しずつ好きになっていたんだと思う。しかし彼とは今日でさよなら。日本に帰ったら彼との関係は絶たれる。朝日の差し込むカフェでの朝食も、最高だった。「日本に帰っても元気でな」「はい」連絡先とか聞いたら、教えてくれるだろうか。でも仕事すら教えてくれなかった彼が、簡単に答えてくれるとは思えない。それに彼は、きっと住む世界が違う人。たまたま、異国の地だったから彼とこうして知り合えただけ。「初めて会ったときと違い、明るい顔になってよかった」「和家さんのおかげです。ありがとうございます」今できる最高の笑顔で彼に返す。「あのとき、和家さんに声をかけてもらえて本当によかったです」巡り合わせてくれた神様には感謝を。和家さんに出会えなければ、帰国しても落ち込んだままだっただろう。「僕も李依に出会えてよかった」眼鏡の奥で目を細めて笑った彼はどこか淋しそうで胸がずきんと痛んだが、気づかないフリをした。朝食のあとは荷物の整理をし、和家さんに空港まで送ってもらった。まだ時間があるのでカフェでお茶を飲む。「あの、本当にホテル代とかよかったんですか……?」結局、最後まで私は一切お金を使っていない。とはいえ、あのスイートの宿泊費全額は払えそうにないが。「李依がこうして明るく笑ってくれるためのお金なら、安いもんだ」和家さんは笑っているばかりでまともに取り合ってくれなかった。申
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第二章 責任を取ってもらおうだなんて思っていません 1

帰国してしばらくは忙しく過ごした。住んでいたマンションは退去日が迫っていたので、とりあえず安いマンスリーに転がり込む。両親にハワイで彼と別れたと報告したら、あんたがぽやっとしているからでしょと呆れられ、会社でも同じように笑われた。そんな現実に、ハワイでの日々は夢だったんじゃないかと思ったが、胸もとで揺れる三日月のペンダントが確かにあの日々はあったのだと証明してくれた。和家さんを疑っていたわけではないが、カードの入った財布も人質に取れていたので不正利用の可能性も捨てきれなかったが、それもなかった。本当に、あの人はなにが目的だったのかいまだにわからない。ハワイ旅行から帰国し、ひと月ほどが過ぎた頃。「……嘘」便器に座ったままそれの結果を見て、一気に血の気が引いていく。しかし何度確認しても、それ――妊娠検査薬には陽性の結果が出ていた。「……どう、しよ」月のものが予定通りこなくて、最初は精神ダメージ大きかったし、忙しかったから遅れているだけだと楽観視していた。しかし、一週間が過ぎ、二週間が過ぎるとさすがに焦ってくる。まさかと思いつつ買ってきてやった結果がこれだ。「相手……和家さん、だよね……」別れた彼とはハワイに行くひと月以上前からそういう行為はしていない。だからこそ別れたのだとも言えるが。そうなると思い当たるのはハワイ最後のあの夜しかない。「ううっ」なんで連絡先を聞いておかなかったんだろう。知っているのは和家悠将という名前と、かなりのお金持ちそうだということだけだ。彼に抱かれたのには後悔はないが、こうなるとどうしていいのかわからなかった。いや、もしかしたら検査薬の結果が間違っているのかしれないし。なんて一縷の望みをかけて病院へ行ったが、妊娠が確定されただけだった。「あー、うー」ベッドに寝転び、言葉にならない声を発しながらもらった母子手帳を眺める。不思議と、私の中に堕ろすという選択肢はなかった。和家さんの子供を産んで、育てる。それだけは決まっていたが、仕事や生活はどうするのか問題は山積みだ。「……頑張んなきゃ。もう、お母さんなんだし」胸の三日月をぎゅっと握る。きっと、大丈夫。なんとかなる。今は自分にそう、言い聞かせるしかできなかった。
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第二章 責任を取ってもらおうだなんて思っていません 2

誰にも妊娠を告げられないまま、仕事をする。「初見さん。ちょっと社長室までいいかな?」「はい……?」課長から声をかけられ、間抜けな声が出た。私、社長から呼ばれるほどのなにかをやったっけ……?考えたけれど、思い当たる節はない。わけがわからないまま社長室へ行くと、さらにわけのわからない命令をされた。「私が、そのCEOの接客ですか……?」「はい、先方からのご指名なので」父ほどの年の社長が冗談を言っているようには見えないが、それでも本気だとは思えない。私が営業や秘書ならわかるが、入社してからずっと経理一筋。扱っている商品の説明なんてできない。そもそもなんで、私をご指名なんだろう?「初見さんは和家CEOの知り合いなんですか?」「……違うと思います」和家という名字は珍しいが……まさか、ね。「そうですか。とにかく、これには我が社の未来がかかっています。よろしくお願いしますよ」「……はい、わかりました」社長は言葉こそ優しいが、私に拒否させなかった。社長命令ならばもう、従うしかない。その後、営業部長や秘書室長と綿密な打ち合わせをした。明後日我が社を訪れるのは高級ホテル、ハイシェランドホテルのCEOだ。日本国内だけではなく全世界展開しており、それ以外にも上ランクのビジネスホテルや他にいくつか展開している。寝具メーカーの当社としては、もし商品の契約が決まればとんでもない売り上げになるはずだ。上役たちが必死なのも頷ける。――そして、当日。「李依、ひさしぶりだな!」「へっ?」リムジンから降りてきた男にいきなり抱きつかれ、変な声が漏れた。一緒にお出迎えしていた上役たちも思わぬ展開に固まっている。「……どうして、和家さんがここに?」「僕がハイシェランドホテルのCEOだからだが?」辺りを見渡したが秘書らしき男性がいるだけで、他にCEOらしき人はいない。和家さんが、あのハイシェランドホテルのCEO?ただの偶然じゃなくて?「というか気づかないなんて李依、間抜けすぎないか?」彼が中に入るように促すので、一緒に会社に入る。私がハワイで泊まっていたのはハイシェランドホテルで。和家さんがそこのCEOなら、スイートがタダの意味も、部屋に勝手に入っていたのも説明がつく。「それはそうですが……」自分でもどうして気づかなかったのか不
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