「ああ。僕のホテルに置くものは一流のものを揃えたい。今のよりもよりよいものがあるというのなら、確認しなくてはな」真面目に和家さんが頷く。彼のそういう姿勢は尊敬できた。「へえ、これが李依自慢の枕か」展示室で枕を受け取り、和家さんは手触りとか確かめている。「……初見さんは和家CEOとどういう知り合いなんだ?」「……ええっと……」ベッドに寝転び、枕を試している和家さんの傍で、こそこそと営業部長が話しかけてくる。まさか、ハワイでお世話になって一夜を共にした仲です、なんて言えない。「ちょっと、お世話になった方です」曖昧に笑って言葉を濁す。しかし。「どこで知り合ったんだ?随分親しそうだが」営業部長の追撃の手は緩まない。周りの上役たちも聞き耳を立てていた。当の和家さんはといえば……あれ、まさか寝てないよね?確かにあの枕は秒で寝落ちさせる危険な枕だけれど。「その……」彼らの疑問もわかる。和家さんの私に対する態度はちょっとお世話になった程度の関係ではなく、もっと親しげだ。まるで、恋人かのように。それ自体はハワイにいたときからそうだったので私としては違和感はないが、知らない彼らからすれば気になって仕方ないだろう。「……はっ。すまない、本気で眠ってしまうところだった」どう説明するべきか困っていたら、ようやく和家さんが起き上がった。「李依の言うとおり、これは最高の枕ですね。この布団も軽くて温かくて申し分ない。おかげで、こんなところなのについうっかり眠ってしまうところでした」「ご満足いただけたようで嬉しいです」営業部長がずいっと一歩前に出て和家さんに答える。あとは仕様や価格について話す彼らを黙って見ていた。「とりあえずサンプルと私個人用に一セットずつ、買わせていただきます。私は気に入ったけれど担当者たちとの協議は必要ですから」「はいっ、ありがとうございます!」バタバタと控えていた社員たちが商品や伝票の準備をはじめる。私はといえば、そのまま和家さんと共に社長室へ連行された。「和家CEOはどこで弊社の寝具をお知りになったんでしょうか」座るのは社長の隣……ではなく、強制的に和家さんの隣に座らされた。社長もそれに対して、なにも言う気はないらしい。「李依が――初見さんから、枕はうちの会社のものが世界一です、と熱く推し
Last Updated : 2025-10-31 Read more