一護はポテチを摘まむ。 手はかじかんでいるのに、どうしてもポテチを食べたいがため、指先のない手袋をしていた。中途半端な防寒だが、彼にとっては最適解らしい。 「食べ過ぎだろ。僕の分も残しておけよ」 「大丈夫。まだ二袋あった。シソとガーリック」 そう言って、一護は悪びれもなく袋を掲げる。 「癖の強いもんばっかじゃねぇか」 「精力つけるならガーリックでしょ。寧人は」 軽口のまま、袋をパーティー開けにして寧人の膝元へ置く。 頼まれてもいないのに、世話を焼く。 一護はそういう男だ。 今回の旅では、本来は寧人が支える側のスタッフのはずなのに、気づけば立場が逆転している。一護が寧人に手を焼き、寧人はそれを受け入れてしまっている。 「……まぁ、悪くないけど」 寧人は、指が空いていない手袋をちらりと見てから、それを脱ぎ、少しずつポテチを摘み始めた。 その様子を見て、一護は満足そうに頷く。 「そういえばさ」 と寧人が口を開く。 「一護って、フードジャンゴの跡取りだったんだよな。お父さん、先代社長で」 「ああ、そうだね」 一護はあっさり答えるが、その声には少しだけ距離がある。 「もともとは卸のスーパーだったんだ。フードジャンゴの前身。そこから外国のフーディーズと提携してさ。 『来てもらう時代じゃなくて、食を届けに行く』って考え方を早めに形にした。結果、デリバリーの大手になって上場」 「デリバリー……」 寧人は笑う。 「僕、引きこもりの時めちゃくちゃ助けられたわ」 「それはそれは」 一護は肩をすくめる。 「最初は贅沢だの、怠け者だの言われてたけどね」 気づけば、ポテチの袋は空になっている。 だが次の瞬間、新しい袋が静かに補充されていた。 「……注ぎ足しされた」 「気づかなかったでしょ」 寧人はため息をつきつつ、ポテチを噛む。 「ばあちゃんから聞いた話だけどさ」 寧人はふと思い出したように言う。 「胎教の頃からクラシックとか英語とか、浴びるように聞かされてたんだって? 生まれてからもずっと、社長になれ、継げ、継げって」 「うん」 一護は笑う。 「耳元で囁かれてた人生だね」 「でも、最初にやったのは美容院だろ?」 「そう。美容に興味あったから。 大学の時、先輩に誘われて
最終更新日 : 2026-01-03 続きを読む