LOGIN11月より本格スタートします!よろしくお願いします🙇!40歳童貞ダメダメSEの寧人と26歳配達員の一護。二人の出会いを描いたR18指定の作品です。 鳩森 寧人(はともりよしと)40歳 引きこもりネガティブSE、童貞。 パニック持ちの頼りないやつ。 菱 一護(ひしいちご)26歳 元美容師、オーナーであり現在フードジャンゴ社長。 裏ではメンズマッサージ店を経営していた。 ロン毛バリネコ。家事全般得意、お世話好き。 古田 倫悟(ふるたりんご)30歳 寧人の年上の上司で営業マン。バツイチ。 ドSと甘えん坊の二面性を持つ。 菱 頼知(ひし らいち)23歳 一護の異母兄弟。調子に乗りやすい。 人に好かれたい、甘え上手。
View Moreとあるオフィスで、何やら言い争うような声が響いていた。
声の主は三十代半ばの男と、その上司である。上司に対しても一切遠慮のない強い口調で、男は眉間に皺を寄せ、言葉を放つたびに目がキッと吊り上がる。その鋭い眼光は、どこか闘犬のような気迫を帯びていた。 「課長、いくらなんでも営業、プレゼン未経験のやつを同伴だなんて、冗談ですよね?」 「まぁ、落ち着け。言いたいことは分かるが……」 上司がなだめようとするも、男の声はさらに大きくなる。 広々としたオフィスフロア。だが、デスクの間隔は広く、人の姿もまばらだ。社員たちは皆、黙々とパソコンに向かい、キーボードを叩き続けている。騒ぎに気づいていながらも、誰も視線を向けようとはしない。 今の時代、職場での小さな衝突は、チャットツールの中で済ませるのが主流になっている。直接声を荒げるのは、珍しい光景だった。 この会社――ベクトルユー株式会社は、システム構築やネットワーク運営を主な事業とする中堅企業である。全国に支店を持ち、社員数も増え続けていた。 しかし、いまの本社はどこか閑散としている。リモートワーク制度が導入されてからというもの、オフィスに姿を見せる社員は半数以下に減った。 会議も打ち合わせもオンライン。チャットやクラウドで仕事が完結する環境は、一部の社員からは「働きやすい」と好評だったが、同時に人間関係の希薄さを生んでいた。 その静かな空間の中で、声を張り上げていたのは営業担当の古田。 社内でも一、二を争う売上成績を持つ敏腕営業マンで、鋭い観察眼と巧みな話術を武器に顧客を落としてきた。だが、その反面で気性が荒く、思ったことはすぐに口に出してしまうタイプでもある。 「いや、私も不安なんだよ。ただな、先方からの要望で、なぜか鳩森にも来てほしいって言われたんだ。彼の提案を詳しく聞きたい、と」 「なぜ鳩森の意見が……? まぁ、SEとしては腕は悪くないですけど、あいつ根暗で、人前だとまともに話せないですよ。ビデオ会議でも終始挙動不審ですし……」 「しょうがないだろ。相手がそう言ってるんだ。君がメインで喋ればいい。鳩森はただの同伴だ、ああ……」 課長が言いかけたそのとき、ふと二人の視線が一点に向かう。 そこに立っていたのは、鳩森寧人(はともりよしと)――件の人物である。 ヨレヨレのスーツに、くしゃくしゃの髪。シャツのボタンは一つ開き、靴もややくたびれている。 眼鏡の奥の目はどこを見ているのか分からず、焦点が定まらない。動作もぎこちなく、まるで初めてこの場所に足を踏み入れたような落ち着きのなさだ。 久しぶりの出勤というのも無理はない。寧人は普段、在宅勤務が基本で、ほとんどオフィスには顔を出さない。 今日は数か月ぶりの電車通勤だったが、駅を出た途端に道に迷い、結果的に約束の時間にも遅れてしまったのだ。 「おい鳩森っ。もう少しマシなスーツなかったのか? まぁいい、時間がない」 古田が近づき、ぐしゃぐしゃのネクタイを直しながら溜息をつく。寧人は何も言わず、棒のように立ち尽くしている。 覇気がない。心ここにあらず。まるで壊れかけたロボットのようだ。 古田は呆れながらも、つい世話を焼いてしまう。 トイレに連れて行って髪をブラシで整え、ワックスを少しだけ付けてやる。見た目は多少マシになったが、癖毛のせいで時間が経つとすぐにうねり出す。それを見て古田は再び肩を落とした。 (ほんと、手のかかるやつだな……) 寧人がオフィスの場所すら分からず、うろうろしていたことを思えば、ここまで辿り着けただけでも奇跡かもしれない。下手をすれば、ビルの警備員に声をかけられていたかもしれないのだ。 「よし、行くぞ。営業車のある駐車場まで行く。分かるよな、場所は」 「あ、はい……行きましょう」 相変わらず抑揚のない声。目線も上がらない。 古田は思わず顔をしかめた。 「おい、お前……本当に大丈夫かよ?」 「たぶん……だ、大丈夫です」 「“たぶん”じゃ困る。粗相のないようにな!」 「は、はいっ!」 裏返った返事が返ってきた。 その声を聞き、古田はため息をひとつ。 だがもう時間がない。顧客との商談は午前十一時。遅れれば、会社全体の信用問題にも関わる。 古田は急ぎ足でフロアを抜け、後ろを振り返る。 寧人は少し遅れて、ぎこちない歩幅でついてくる。その姿はまるで不安そうな子犬のようだった。 「……まったく、こっちの神経が持たねぇよ」 ぼやきながらも、古田は心のどこかで――この頼りない男の中に、何か特別な“光”があるのかもしれないと、うっすら感じていた。 それが、今日の商談で証明されることになるとは、このとき誰も思っていなかった。久方ぶりの営みが、この部屋の中でよかった——。寧人は、胸元で静かな寝息を立てる愛しい一護を見下ろしながら、そう思った。指先でそっと髪をかき上げ、天井へと視線を逃がす。一緒に暮らしているからこそ、慣れや仕事の疲れに紛れて、愛し合う時間がいつの間にか簡素になっていた。そのことを、今さらのように反省する。昨夜のように、何度も、急がず、優しく、甘く、確かめ合うように抱き合ったのは本当に久しぶりだった。きっと、こういう時間が必要だったのだ。愛する人の体温。規則正しい寝息。胸に伝わる鼓動。微かに残る香り。——この旅が終わり、また二人の日常に戻ったとしても。今夜のことを、忘れずにいよう。そう心に刻みながら、寧人は再び一護を抱き寄せ、静かに目を閉じた。「おはよう、寧人! 寧人社長!!!」「はうっ――っ!? ……いでっ……お、おは……」頬に走った衝撃で、寧人は変な声を上げて目を覚ました。反射的に体を起こそうとして、全身に鈍いだるさが走る。「あ……待っ、待って……それ、今やると……」「ほら見た。だから言ったでしょ、勢いよく起きるなって」横を見ると、すでに着替え終えた一護が、呆れ半分・心配半分の顔で髪を整えながら座っていた。「……今のさ、ビンタじゃなかったよね」「うん。最初は手のひら。でも全然起きないから」「櫛?」「櫛。最終手段」ひどい。そう思いながらも、否定できないのが悔しい。どうやら一度は目を覚ましたのに、そのまま見事に二度寝したらしい。「……体、重……」「そりゃそうだよ。昨夜あれだけやっといて、しかも何回も」「ちょ、それ言わなくていい……」「事実でしょ。自覚しなよ、いい歳した社長さん」キャンピングカーじゃない、きちんとした部屋。柔らかいマットレス。静かな朝。そのせいで、昨夜の余韻が余計に体に残っている気がする。「……提供でもらったマットレスも良かったけど、ここのも相当だな……」と、だるそうに言いながらも、目だけは完全に仕事モードに入る。「メーカー違うけど、大丈夫?」「大丈夫。ちゃんと把握してます」一護は即答する。「他の部屋には、提供いただいたザノッカスのマットレス使ってるところもあるから。そこも含めて、動画で説明する」「さすが……」「感心してる場合じゃない。ほら、さっさと起きる」「……腰が……」「自業自
「まぁ、そういう関係ですよ」 さくらキャンパーの二人が帰り、キャンピングカー内での簡単なミーティング中。 ドラゴンがまるで天気の話でもするみたいに、さらっと言った。 あまりに雑な一言だったが、それだけで他の三人はだいたいを察する。 「既婚者だって分かってて付き合ってた。でもさ……陸斗さんの息子――宙社長の写真を見せてもらってさ。 かっこいいって言ったら、そこから嫉妬が始まったんだよ」 一息ついて、苦笑する。 「陸斗さんも十分イケメンだけど、亡くなった奥さんも美人でさ。 二人のいいとこ取り、って感じで宙社長はさらにイケメンで……」 「……なるほどね」 話を聞いていた一人が、間を置かずにまとめる。 「で、恋人の“息子”に目移りしたと思われて嫉妬されて、結果フラれた、と」 「違う!」 ドラゴンは即座に声を上げた。 「フラれてない! 嫉妬がひどすぎて……こっちから別れたんだ。 別れたくない、でも別れる、って……最悪な別れ方」 少しだけ視線を落とす。 「後になって分かった。あれ、向こうがわざと大喧嘩になるよう仕向けてたんだって。 俺に嫌われ役を押し付けて、綺麗に終わらせるために」 小さく、息を吐く。 「……結局さ、陸斗さんの方が一枚も二枚も上手だったってわけ。そっから美容師の仕事に力を入れようとしたところに一護と出会ったわけさ……」 ドラゴンは一護を見る。一護は知らなかった過去をフーンと聞いていた。 「まぁ過去は誰にでもある。知る、知らないは……プライベートのことだから踏み入れない方が良い」 と1人納得してるようだ。 寧人は立ち上がった。「よしよし。過去の話も全部聞けたし、俺はスッキリした! あとはゴールするだけだな!」「いや、それ完全に自分が一人で納得しただけだろ!」 三人から一斉に突っ込まれた。「でもさ、陸斗さんって当時も奥さんいなかったんでしょ? 宙社長も独身。どっちもフリーだよね。……まぁ宙社長はノンケだけど」 そう前置きしてから、寧人はずいっとドラゴンを見る。「やっぱり陸斗さんなんじゃないの? ドラちゃん」 ドラゴンは一瞬言葉に詰まり、耳まで赤くなった。「……そ、そうだけど。でもやっぱ無理だって」「不倫でもないしさ。陸斗さんだって、ドラちゃんのこと今も
「社長! すいません……」 「いえいえ、こちらこそ……お返事がないまま押しかける形になってしまって」 二人の社長が同時に頭を下げ合う光景は、端から見ればどこか可笑しい。だが寧人はその様子を横目に流し、すぐに視線を逸らした。 ――ドラゴン。 さくらキャンパーの宙社長のすぐ後ろ、少し距離を取るように立っている。 向かい合う二人の社長を見ても、胸はざわつかない。スタート時に感じた、あの妙な引っかかりもない。 (……社長じゃない? じゃあ、社員の中に気まずい相手でもいるのか) その後も、さくらキャンパーのスタッフが何度か商品を運び、メンテナンスの確認に訪れたが、場の空気は終始穏やかだった。少なくとも、表面上は。 「いやいや、寧人くん。相変わらずよく動くね。中年の星だよ」 快活に笑ったのは宙社長の父、陸斗だった。寧人より十は年上のはずだが、日に焼けた肌と張りのある体つきのせいか、年齢を感じさせない。 「そんな……まだ中年ってほどでもないですよ」 そう前置きしてから、寧人は自然な流れで続けた。 「ここまで体が持つのも、彼のマッサージのおかげなんです」 視線を向けると、ドラゴンは一瞬だけこちらを見返し――すぐに目を伏せた。笑顔はなく、表情はわずかに硬い。 「ほう……」 陸斗は興味深そうに顎を撫でる。 「スタートの時、後ろの方で隠れてるみたいだったが……君が寧人くんの体を?」 その言葉に、ドラゴンの肩がほんのわずかに強張る。 寧人はその変化を、見逃さなかった。 (ははーん、まさかのまさか……宙社長じゃなくて……陸斗さんだったのかー) と思った矢先、一護も古田も確信していたようだ。 「なるほど……年上が好きだったから僕には靡かなかったんだ、ドラちゃん」 少し一護は鼻で笑った。だが年上すぎるのでは、寧人よりも上である。 「隠れなくてもわかることだったのに……でも今は落ち着いて立派な仕事しているようで何よりだよ」 「……まぁね」 気づけば2人の世界になっていた。 宙社長も何か知ってそうである。 「……息子も社長業をして数年になるからそろそろ僕も落ち着いて来たんだよね。僕もサイクリングでもしようかな、その時は君にマッサージしてもらおうかな。久しぶりに」 「……無理しないでくださ
その頃、ドラゴンは―― 人影もまばらなサービスエリアの公園で、山並みをぼんやりと眺めていた。 風に揺れる木々を見ているうちに、思考は勝手に過去へと滑っていく。 一護と同じ記憶を辿っていたのかどうかは、本人にもわからない。 ただ、胸の奥が重くなって、息を吐くしかなかった。 そのため息が、答えの代わりだった。さてさてとキャンピングカーに戻ろうとするとクラクションが後ろから聞こえた。 ドラゴンは自分ではないと思い振り返らなかったがもう一回鳴った。 ようやく振り返ったドラゴン。 そこにあったものを見て彼は諦めたかのように、少し笑って言った。 「……しょうがないなぁ、もう……」 ※※※ キャンピングカーの中。 古田はすでに起きており、一護も編集作業をひと段落させていた。 寧人はマットの上で黙々とストレッチをしている。 あれから、もう一時間が経っていた。 「……ドラちゃん、いい加減帰ってこないかな」 ぽつりと零した一護の視線は、無意識にテーブルへ向かう。 そこには、ドラゴンのスマホが置き去りのままだった。 連絡が取れないことは、わかっている。それでも気になってしまう。 「まぁ、そのうち戻ってくるさ」 古田は軽く受け流すように言いながら、続けて寧人を見る。 「リン、今日のスケジュールは?」 「はい……えっと……あっ」 寧人の声が裏返る。 古田はスマホを覗き込み、目を見開いた。 「……しまった。寝過ぎた」 慌ててメールを開き、指を走らせる。 「寝てる間に来てたみたいだ。今、返す」 画面に表示されていたのは、さくらキャンパー広報からの連絡だった。 他の業務との兼ね合いで、依頼されていた商品の持ち込みが―― 予定より三時間、前倒しになるという内容である。 キャンピングカーの空気が、わずかに引き締まった。 「まぁ、焦ってもしょうがないよ。向こうも自分たちの都合だし、大丈夫ですよって言ってくれてるし」 そう言う一護に、古田はすぐ首を振った。 「いえ、社長。それが一番よくないです。 どれだけ関係が良好でも、信頼は積み重ねで、逆にミスも積み重なります。今回は……僕が寝てたせいですし……」 珍しく歯切れの悪い古田。 寧人はそこまで切迫感を持っていないが、その温度