その後の寧人は、仕事でも異様なほど波に乗った。 営業成績は右肩上がり。社内表彰では社長賞まで獲得する。 誰もが羨む成功だった。 ――そして、一護が胸の奥で感じていた違和感も、現実になっていく。 寧人の周囲には、次第に人が集まり始めた。 古田との関係は、すでに公然の秘密のようになっていた。 仕事中の距離の近さ、息の合い方。 二人のコンビ感は、まるで長年連れ添った夫婦のようだと、社内でも噂されるほどだった。 さらに寧人は、仕事の延長線上で他の場所にも足を運ぶようになる。 マッサージ店。 甘く蕩けた声と、距離の近さに、感覚が麻痺していく。 オプションで複数人を指名し、与えられる好意を拒まなくなった。 そこに現れたのが、仮面を被った頼知だった。 正体を知ってなお、距離は曖昧なまま。 抱かない、と頭では線を引きながらも、周囲はそれを許してはくれない。 「いつになったら僕の番?」 軽口のようでいて、冗談では済まない空気。 寧人は笑って誤魔化すが、逃げ場はどんどん狭くなっていく。 問題は、それだけではなかった。 寧人は女性社員とも関係を持つようになり、しかも一人ではなかった。 誰にも咎められない成功と、止まらない承認欲求。 「お前が一番だ」 そう言いながら、一護を抱く夜もあった。 だが一護は、その言葉の奥にある軽さを、もう見逃さなかった。 やがて、均衡は崩れる。 女子社員同士の言い争い。 誰が本命なのか、誰が先なのか。 口論は罵声に変わり、ついには手が出た。 そこへ古田が割って入る。 だが古田自身も、寧人との関係が明るみに出た瞬間、事態は一気に修羅場へと転がった。 全員の視線が、寧人に突き刺さる。 「……ちょ、ちょっと……」 言い訳にもならない声。 古田の目が、鋭く吊り上がる。 寧人は逃げた。 文字通り、命からがら。 逃げ込んだ先でも、状況は同じだった。 好意は、欲望に変わり、取り合いになる。 冗談めかした提案。 突き放すような一言。 その瞬間、冷めた視線が一斉に向けられる。 ――ああ、終わった。 噂は、当然のように一護の耳にも届いた。 情報源は、よりによって頼知だった。 「ねぇ、お兄ちゃん。あの子、完全に調子に乗ってるわよ」 一護は何も言わなかった。 ただ、静かに決断した。 会社は、
最終更新日 : 2025-12-27 続きを読む