三田のキャンパスへとやってきた二人――――。 そこは、まるで異世界だった。 近未来的なガラス張りの構造体が天を突き、陽光がプリズムのように乱反射している。広大なキャンパスには、まるでファッション誌から抜け出してきたような学生たちが、笑い声を響かせながら行き交っていた。「うわぁ……すごい大学ですねぇ……」 シャーロットは圧倒され、呟いた。 ここは確かに自分が知っている日本。でも、地方の製薬会社で働いていた頃には縁のなかった、きらびやかな世界――――。「ふんっ! 我はこういう奴らはいけ好かんがな!」 少女は不機嫌そうに吐き捨てる。過去に何かあったのだろうか?「で、女神さまはどこに……?」「あー、シラバスによると……」 少女はiPhoneを取り出すと、画面を指でトントンと操作しながら確認する。「三回生なら……あの校舎から出てくるじゃろう」「東京では『三年生』って言うんですよ?」「あーー! だから東京もんは好かんのじゃ!」 レヴィアは腕を組んで、ふんっと鼻を鳴らした。「ふふっ、ごめんなさいね……」 シャーロットは苦笑いを浮かべる。そして――。「あ、学生たちが出てきたわ……」「おっ! いよいよじゃな……」 二人は慌てて、広場の中央にそびえる巨木の陰に身を潜めた。 どやどやと、豪奢な校舎から学生たちが溢れ出してくる。「あー、腹減ったぁ!」「おぅ、あの店行こうぜ!」「お前、学祭どうする?」「単位がなぁ……」「俺はサークル行かなきゃ!」 青春の喧騒が、初夏の空気を震わせる。 その中でも、ひときわ華やかな一団があった。「あっ! 美奈ちゃーん! 今日も最高に可愛いわっ!」「美奈先輩! 学祭の件で相談が……」「美奈さん! この後サークルですか?」 歓声の中心には――。 チェストナットブラウンの髪が風に優雅に舞い、琥珀色の瞳が陽光を受けて宝石のように輝く。まるで光そのものを纏っているかのような、人ならざる美貌の持ち主が歩いていた。「おいでなすった……」 レヴィアが息を呑む。「えっ!?」 シャーロットは目を見開いた。「あの方が……全宇宙の頂点……女神さま……?」 圧倒的な美しさ。 けれど同時に、違和感も覚える。 数十兆人の頂点に立つ異次元の存在が、なぜこんなところで大学生活を?「じゃあ、我はここまでじゃ」
Last Updated : 2025-12-01 Read more