เข้าสู่ระบบ国を追放された悪役令嬢シャーロットの夢は、平穏なスローライフを送ること。彼女は、王都の公衆衛生を陰から支えていた過去を捨て、辺境の町で念願のカフェを開店する。 前世の知識を活かした温かい料理は、すぐに町で評判となった。特に、毎日通ってくる無口な常連客は、それを心から愛しているようだった。 しかし、シャーロットを追放した王都では、彼女がいなくなったことで疫病が大流行し、国は滅亡の危機に瀕していた。元婚約者の王子が助けを求めに現れるが、時を同じくして、あの常連客が正体を現す。彼の名は魔王ゼノヴィアス。 「俺の妃になれ」 これは、スローライフを死守しようと奮闘する、元悪役令嬢の物語。
ดูเพิ่มเติม――やった! ついに追放だわ!
王立学園の卒業パーティー。天井から降り注ぐシャンデリアの光が、まるで祝福の雨のようにシャーロット・ベルローズを包んでいた。彼女は涙に濡れた頬を震わせながら――もちろん演技だが――内心では喜びのあまり踊り出したい衝動を必死に抑えていた。
「シャーロット・ベルローズ! 貴様はこの三年間、聖女リリアナ様を|陥《おとしい》れようと数々の悪行を重ねてきた!」
金糸の刺繍が施された純白の礼服に身を包んだエドワード王子が、まるで正義の執行者のように腕を振り上げる。その美しい顔は義憤に歪んでいたが、シャーロットにはそれが滑稽にしか見えなかった。
(ええ、そうね。聖女が私の悪行をでっちあげ続けていたことは知ってたわ)
彼女は八年前――十歳の誕生日に高熱で倒れた夜――前世の記憶と共に知ったのだ。自分が乙女ゲーム『聖女と五つの恋』の悪役令嬢であり、二十歳で処刑される運命にあることを。
処刑の真の理由は、疫病による王都の衰退の責任をなすりつけ合う醜い権力闘争。とばっちりで王子に処刑されるのだ。
(だからこそ、私は必死に働いてきたのよ)
前世で製薬会社の研究員だった記憶。その知識を総動員して、シャーロットは密かに王都を守ってきた。石鹸の普及、上下水道の整備計画、そして――――。
「その上、貴様は得体の知れない薬を王都にばらまき、人々を惑わせた!」
エドワードの糾弾に、シャーロットの胸が小さく痛んだ。
(得体の知れない薬……そう呼ばれてしまうのね、私の心血を注いだペニシリンが)
何度も失敗を重ね、カビの胞子で喉を痛め、消毒薬で手を荒らしながら作り上げた抗生物質。それは確かに多くの命を救った。だが、公爵令嬢がなぜそんなものを作れるのか――その疑問に答えることはできない。
「も、申し訳ございません……」
シャーロットは震え声で謝罪しながら、ゆっくりと膝を折った。ドレスの裾が床に広がり、まるで白い花が咲いたようだった。完璧な敗北の構図。観衆たちの満足げなざわめきが聞こえる。
「もはや言い訳は聞かぬ! シャーロット・ベルローズ、お前に国外追放を言い渡す! 二度とこの国の地を踏むことは許さぬ!」
その瞬間――――。
(きたきたきたきた! ついに来たわ、私の解放記念日!)
シャーロットの心の中で、盛大な祝砲が鳴り響いた。これで処刑は無いわ! もう二度と、深夜の地下室で危険な実験をしなくていい。もう二度と、正体を隠してこそこそと働かなくていい。もう二度と、この息苦しい宮廷で演技をしなくていいのだ!
「あ、ありがたき……お慈悲……」
声を震わせながら立ち上がり、シャーロットはよろよろと退場した。重い扉が閉まった瞬間、彼女は人目もはばからず小さくガッツポーズをした。廊下を歩く足取りは、まるでスキップでもしそうなほど軽やかだった。
自室に戻り、簡素な旅支度を整える。
机の上には、一冊のノートと封筒。ノートには、八年間かけて完成させたペニシリンの精製方法が、誰にでも分かるように丁寧に記されている。
「これで、私の役目は終わり」
シャーロットは優しい手つきでノートを封筒に入れ、表に『聖女リリアナ様へ』と記した。
(きっと、最初は『カビなんて汚い』と言うでしょうね。でも、いずれ理解してくれるはず。ペニシリンの効果も上がり始めているのだから)
窓の外を見れば、みすぼらしい幌馬車が一台、ぽつんと佇んでいた。追放令嬢に与えられる最低限の移動手段。だが、シャーロットにとっては黄金の馬車にも勝る価値があった。
最後に一度、部屋を見回す。
あの片隅で、初めて石鹸を作った日。
窓辺で、上下水道の設計図を描いた夜。 月明かりの下で、ペニシリンの完成を一人祝った明け方。孤独だったけれど、充実していた。苦しかったけれど、誇らしかった。
「ありがとう。でも、もう十分よ」
シャーロットは深く一礼して、新しい人生へと歩み出した。
馬車が王都の門を抜けた瞬間、彼女は両手を高く掲げて大きく伸びをした。
「さあ、これから私のスローライフが始まるのよ! 小さなカフェを開いて、美味しい料理を作って、お客様の笑顔を見て……ああ、考えただけで幸せ!」
御者が驚いて振り返ったが、シャーロットは構わずに続けた。
「もう誰かのためじゃない、私のための人生! なんて素敵な響きなの、スローライフ!」
オレンジ色の夕陽が地平線に沈もうとしていた。その光に照らされたシャーロットの瞳は、八年ぶりに――いや、もしかしたら生まれて初めて――純粋な希望に輝いていた。
「え?」 ゼノヴィアスの顔が、みるみる青ざめていく。「こ、この前、愛を確かめ合ったではないか!」 必死の形相で訴える。あの白い空間での熱いキスを思い出しているのだろう。「へ? 何のことですか?」 シャーロットは首を傾げ、きょとんとした顔を作る。「夢でも見てたんじゃないんですか?」 ツンと澄まして、またウーロン茶のジョッキを傾ける。 でも、よく見ればその耳は真っ赤に染まっているのだが、ゼノヴィアスは気づかない。「夢?! ほ、ほんとに夢?! そ、そんなぁ……」 ゼノヴィアスの魂が、口から抜けていきそうになる。「くぅぅぅ……」 失意と悔しさと、そして燃え上がる闘志。 すべての感情を飲み込むように、新しいピッチャーをガッと掴む。 ゴクゴクゴクゴク! 今度は怒りと悲しみを紛らわすような、自暴自棄な飲み方。 そして――――。 ガクッ。 空になったピッチャーをテーブルに置くと、そのままうなだれて動かなくなった。 肩が荒い息に震えている。「おぉ、いい飲みっぷりだけど……」 シアンは楽しそうに自分もピッチャーを空ける。 頬がほんのりと赤いが、まだまだ余裕の表情。「僕の勝ちね?」 そう宣言しながら、次のピッチャーに手を伸ばす。 勝者の余裕が、全身から漂っている。「あぁ……ゼノさん……」 シャーロットはそっと、うなだれるゼノヴィアスの広い背中に手を置いた。 優しく、ゆっくりと円を描くように撫でる。(ごめんなさいね、結婚よりも今はカフェなの……) 背中を撫でる手には、確かな愛情が込められていた。 ◇「ゼ
「何よ、やるの……?」 シアンは極上カルビをもぐもぐと味わいながら、挑発的な笑みを浮かべ――――。 ブワッ!とシルバーのボディースーツに包まれた体から、鮮烈な青いオーラを放つ。 上位神の持つ、圧倒的な力。 魔王対、大天使――。 二つのオーラがぶつかり合い、部屋の空気がビリビリと振動する。 テーブルの上の皿がカタカタと踊り始めた。「あわわわ……」「ひぃぃぃ……」 誠もレヴィアも自分の皿とジョッキを持ち上げて退避する。 二人の気迫が最高潮に達した瞬間――――。「やめなさい!」 美奈の鋭い一喝と同時に、 ピシャーン!! 天井から黄金色の稲妻が二本、まっすぐに落ちてきた。「ごはぁ……」「ふへぇ……」 魔王も大天使も、等しく感電の洗礼を受ける。 髪の毛が逆立ち、全身から煙を吐きながら、二人同時に椅子へとへたり込んだ。「全く! 子供じゃないんだから!」 美奈は呆れたようにため息をつき、手にしたジョッキをグイッと傾ける。 琥珀色の液体が、喉を潤していく。「あぁっ! ゼノさぁん……大丈夫?」 シャーロットは慌てて、煤だらけになったゼノヴィアスの顔を覗き込んだ。 そっと手に取ったおしぼりで、彼の頬についた煤を優しく拭き取っていく。 その手つきには隠し切れない愛情がこもっている。「う、うむ……大丈夫だ……」 ゼノヴィアスの頬が、ほんのりと赤く染まった。「喧嘩するなら、飲み比べでもしてなさい!」 美奈がふんっと鼻を鳴らし、ジト目で二人を睨みつける。「の、飲み比べ!?」 ゼノヴィアスがゴホゴホと煙を吐きながら、首筋を押さえ、身を
「い、いいんですか?」 シャーロットの声が震えた。 瞳から涙が溢れ出す。「よ、良かったぁ……」 全身から力が抜ける。 長い、長い戦いが終わったのだ――――。「その代わり……」 美奈の琥珀色の瞳が、まるで魂を見透かすようにシャーロットを貫く。「自分の地球は、自分で管理しな!」「へっ!? か、管理ですか!?」 予想外の条件に、シャーロットは目を丸くした。 地球を管理? システムも分からない自分に、そんな大それたことが――。「そ、そんな……私にできるわけが……」「『できない』じゃ済まないわよ」 美奈はダン!とジョッキをテーブルにたたきつける。「復活させるのはいいけど、誰かが管理しなければならないのよ? 地球は放っておけば回るようなもんじゃないわ」 確かにそうだ。|万界管制局《セントラル》の仕事の様子を見て来た自分にはその大切さが良くわかっている。「わ、分かりました」 シャーロットは震える声で答えた。「仕方ないですよね……やるしかない……」 ここで断る選択肢など、あるはずもない。 たとえ無理難題でも、受け入れるしかない。「分かんないことはレヴィアに聞いて」「へ? わ、我ですか!?」「文句……あるの?」 美奈は琥珀色の光をギラリと光らせる。「そ、そんなことないです! やらせていただきます!」 レヴィアはガタン!と立ち上がると、冷や汗を流しながら直立不動で敬礼をした。「うむ、よろしい。それでも……一人じゃ大変よね?」 視線が、ゼノヴィアスへと移る。「魔王も協力してやって!」
「いやぁ、悪い悪い、東京の|恵比寿《えびす》だったか……」 レヴィアは小さな足で、商店街の小径をタタタと小走りに進んでいく。「なんで大阪の新世界なんて行っちゃったんですか!?」 シャーロットは白いワンピースの裾を押さえながら、涙目で後を追った。 せっかくの晴れの日なのに、汗だくになってしまっている。「あそこは|恵美須《えびす》町って言うんじゃ! 紛らわしいったらありゃしない!」「普通、間違えませんって! みんな待ってますよぉ……」 シャーロットの声が震える。「せっかくのお祝いなのに……」 【|黒曜の幻影《ファントム》】を捕獲した功績を称える祝賀会。 まさか主賓の自分が遅刻するなんて――――。「大丈夫じゃ、焼肉は逃げんよ!」「そういう問題じゃないんです! もう……」 角を曲がると、目指す店が見えてきた。 こじゃれた木造二階建ての焼肉屋。 黒板にはチョークで丁寧に描かれた、美味しそうなメニューの数々。 炭火の香ばしい匂いが、通りまで漂ってくる。 二人は肩で息をしながら店に飛び込んだ。 古い木の階段が、ギシギシと音を立てる。 炭火の香りと笑い声が、二階から漏れ聞こえてくる。 シャーロットは胸の高鳴りを抑えながら、個室の扉に手をかけた。 その瞬間――――。「無礼者! お主、何をしてくれる!!」 雷のような怒号が、扉の向こうから轟いた。「……へ?」 シャーロットの全身が、稲妻に打たれたように硬直する。 この声は――。 この懐かしい響きは――。(まさか……まさか……!) 震える手で、そっと扉を開けた。 心臓が早鐘を打つ。手のひら