江崎市に戻った時男は、休む間もなく会社へ向かったが、そこで目にしたのは想像以上に深刻な状況だった。前回の写真騒動の影響で、時男は世論の渦中に巻き込まれ、そのあおりを受けて賀川グループも世間からのボイコットを受け、株価は大きく下落した。それだけでなく、賀川グループは何者かによる悪意ある圧力を受けているようで、海浜市でのすべての提携が横取りされ、江崎市でも多くの取引先が契約解除を申し出た。さらに、会社の幹部数名までもが引き抜かれてしまった。現在、賀川グループは危機的状況にある。大量の在庫が滞留し、資金繰りも逼迫している。時男は会社を立て直すため、日夜駆け回った。各方面で提携先や投資家を探す日々で、体調が万全でないにもかかわらず、毎晩深夜まで接待をこなしていた。過酷な仕事のプレッシャーに押しつぶされそうになり、時男は息が詰まる思いだった。身も心もすっかり疲弊し、晴子を思う余裕さえなく、毎日大量のニコチンとアルコールに頼ってなんとか自分を支えていた。何度か接待で酒を飲みすぎて吐血することもあったが、時男は胃薬を数錠飲み込み、無理を押して再び職場に戻っていた。かつて意気盛んで生気に満ちていた男が、わずかな期間で十数キロも痩せてしまった。それでもなお、会社の状況は悪化の一途をたどっていた。半月もの間、連日過酷な仕事を続けた末に、時男はついに限界に達した。その夜、彼の胃に激痛が走った。痛みは次第に強まり、胃薬も全く効果がない。激痛に汗びっしょりになった彼は、仕方なく早退し、アシスタントに運転させて病院へ向かった。病院が目前に迫ったその時、前方から猛スピードで赤いスポーツカーが突っ込んできた。近づくにつれ、その車は減速するどころか、逆に加速して衝突してきた。ドンという轟音とともに、二台の車が激突し、火花を散らした。事故は極めて悲惨で、二人の通行人がその場で命を落とした。車内に閉じ込められた時男は、体中のあちこちで骨折を負っていた。意識が遠のく直前、かすむ視界に、対向車両からふらりと人影が降り立つのが映った。浅子の頭からは血が止めどなく流れていたが、彼女は痛みを感じていないかのように時男を鋭く睨みつけ、その瞳には凶暴な光が宿っていた。「時男、あなたが私を追い詰めたんだよ。子どもの仇、取ってやる!」そういうと、浅子は懐から
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