All Chapters of 裏庭が裏ダンジョンでした: Chapter 91 - Chapter 100

103 Chapters

鎌とオカマ

「あらぁん、やだわぁん、負けちゃったのね」 精も根も尽き果てているモモ達はその声を聞いてイラッとした。 アシノは無言でビンのフタを連射する。 オカマ魔法使いのウトナは防御壁を作って難なく過ごしたが、その後ろで「いでででで」と声が聞こえた。「ウドナ様、オラも守ってほしいだ!」「お黙り! その鎌を振り回して弾きなさい!」 声の主は若い娘、見た感じ俗に言う芋娘で、ムツヤよりも鈍った言葉を使う。「だっで、鎌に鎖が付いてるだけでほんどに裏の道具なんだべやか?」「探知盤にも反応してるし裏の道具よ!! はやくあいつらをやっちゃいなさい!」 芋娘はうぅ。と言いながら前に出てくる。「食らいなさい、プリティビーム!!」 ウトナは裏の道具の杖を使い、感情を暴走させる光線を乱れ打ちした。 所々で爆発音が聞こえるので通常の攻撃魔法も混ぜているのだろう。 それぞれ丈夫そうな木の裏に隠れて魔法攻撃をやり過ごす。 ウトナの後ろでは芋娘がグルグルと鎌を振り回し始めた。謎の多い武器なのでこれが合っているのか本人ですら分からない。 しかし、そこは摩訶不思議の裏の道具。鎖の部分が飴細工のように伸びて攻撃範囲が広くなる。「いいわぁん、やっちゃいなさい!」「へい!」 ガスっと木に鎌が刺さると鎖が縮み始め。「あああああぁぁぁぁ!!!」 鎖を手に絡めている芋娘はそこ目掛けて吹っ飛んでいった。「ふばち!」 そして木に激突し、下の茂みに落ちる。「なにやってんの!」 ウトナはイライラして言う。 そして、茂みから出てきたと思ったら、ヨーリィに右腕を後ろで拘束され、首元にはナイフが近付けられていた。「本当になにやってんのおおおぉぉぉ!?」「プリティビーム!!!」 ウトナはヨーリィに対してダメ元で杖を振る。 ヨーリィはこの杖は効かないのだから避ける必要もないのに、容赦なく芋娘を盾にした。「亜人共をぶっ潰す! 亜人共をぶっ潰す! 亜人共をぶっ潰すんだべ!」 一応はキエーウのメンバーらしく、亜人を憎んでいることがわかる。 ウトナは呆れて頭を抱えたが、懐の連絡石が震えた為、作戦を切り替えた。「さっさと道具を返しなさい!」 ウトナは爆破魔法を芋娘ごとヨーリィに喰らわせようとする。間一髪ユモトの防御壁が間に合う。「あんた! 仲間じゃないの!?」 ルーが言うとウト
Read more

レッツゴー拷問師 1

「近くの裏の道具の反応は私達以外に無いわね。あのオカマが遠ざかってく点と…… こっちに物凄いスピードで向かってくる点。多分ムツヤっちね」 ルーが探知盤を取り出して言うと皆、安堵する。「やだーやだー能力返せバカ女神ー!!!!!!!」「モモちゃん、その子が逃げないようにしっかりと取り押さえていてくれるかしら」「はい、わかりました」 2人は同じ返事をした。ヨーリィとユモトは魔力が切れかけなのでモモが芋娘を拘束することにした。モモが近付くと芋娘は騒ぎ出す。「オーグになんが触られたくねえだ!! っく、殺せ!!!」 おそらく人間が窮地の際にオークに言う言葉1位をぶつけられ、モモは少し心が痛んだ。「殺しはしない。少し大人しくしていて貰うだけだ」「やだー近付くなー!!!」「やだーやーだービンのフタなんかいらないやーだー!!!」「うっさいわね!!!」 芋娘と共にずっと騒いでいるアシノにルーはキレる。モモは芋娘の両手を後ろで組み上げた。 しばらくの間、芋娘の叫び声とアシノの叫び声の汚いデュエットが響き、一同はうんざりとしている。「ムツヤっちー!! 早く来てくれー!!」 耳を抑えながらルーは言った、するとそれと同時に森の奥から人影がぶっ飛んできた。「皆さん、無事でじだか!?」 見覚えのある顔と訛り、ムツヤだ。「やーっと来てくれた。私達は無事よ、ヨーリィちゃんの魔力が少ないぐらい。それよりもアシノの頭をスッパーンと叩いてあげて!! 見てらんないから!」 やだやだーと地面に寝転がってバタバタしているアシノを見てムツヤは「……はい」と返事をした。 頭に衝撃を感じてアシノは正気に戻る。 そして、ゆっくりと記憶を辿り光線を浴びたことと、駄々っ子状態になっていたことを思い出した。「もうやだ……」「正気に戻ったんだからイジケてないの!! カバンはムツヤっちが取り返してくれたし、キエーウも追い払って、1人拘束できたんだから」「そうだな……」 アシノは目をギュッとつむってゆっくりと開け、芋娘を見る。「キエーウの事、洗いざらい吐いてもらうぞ」「ひっ」 勇者の迫力に圧されたのか小さく怯えた声を出す。ムツヤ達はエルフの村に戻ることにした。 ムツヤのカバンから取り出したロープで縛られ、芋娘は歩かされる。「勇者アシノ様!! ご無事でしたか!?」 村へと
Read more

レッツゴー拷問師 2

 音の妨害魔法は使用者が外にいる場合、使用者にだけは音が聞こえる。 ムツヤが何かの気配を察知したらしくハッとした顔をした。それを見逃さずアシノは尋ねる。「何かあったのかムツヤ?」「いえ、中で何か倒れる物音がして」 それを聞いて迷わずアシノは小屋の扉を開けた。「ルー、どうした…… って何してんだ!?」 扉の先ではリースが椅子に縛られたまま泡を吹いて倒れている。「な、何もしていないわよ!!! 私の愛情たっぷり手作りクッキーを食べさせただけで」「とんでもないことしてんじゃねーかよ!!!」 悪い勇者と良い召喚術師作戦は『料理の腕の悪い召喚術師』によって見事に失敗した。 リースは夢を見ていた。今はなき母親の体温を頭に感じて眠る夢だ。「おっかあさん!!」 そう言ってリースが飛び起きると、上半身を抱きかかえて居たモモはビクッと驚く。「……って、オーグ!! 触んな!! オーグになんて触られたくねぇだ!!」 リースの自由になっている右手がモモの頬をピシャリと叩いた。だが、モモは怒るでも悲しむでもなく、表情を変えずにいた。「お前の身の上は聞いた。私の同族が本当に済まない」 それを聞いてバタバタ暴れるのをリースは辞めた。「謝って済む問題じゃねぇべ!!!」「すまない、それでも謝ることしか私にはできない」 リースは脱力してモモにもたれ掛かかる。「もしかしたら……」 モモはポツリという。「もしかしたら、私もお前みたいに人間を憎んでいたかもしれない…… いや、正確には一時だが恨んでいた」「私の村に、キエーウの1人が来て村人を無差別に斬り殺していった。私の妹も深手を負い、ムツヤ殿が居なければ危なかったかもしれない」 それを聞いてリースはモモの顔を思わず見る。「私は、私は出来れば人と憎み合いたくない。綺麗事だろうが、キエーウのメンバーも…… できれば殺すことはしたくない」 リースはルー特製の愛情たっぷり毒クッキーのせいで体が痺れているのもあるが、完全にモモに体を預けていた。「沢山の犠牲を出したくはない。裏の道具をむやみに使えば不幸になる」「だども!!」 何かを言いかけてリースは黙った。その後、言葉を出す。「何が言いてえだ……」「リース、キエーウの本拠地を教えてくれ。ムツヤ殿が入れば犠牲は少なく…… いや、犠牲無くしてキエーウを壊滅できる
Read more

リースと共に 1

 そこは真っ暗な空間だった。寝静まった後に目が覚めてしまったのかと一瞬思う。 しかし、違和感に気づく。私は自分の足で見えない床の上に立っていた。「いでええええええ」 目の前に急に現れた男がそんな言葉を言いながら振り返る。それは昨日切り捨てたうちわを使う男だ。「なっ、あっ」 私は全身の血が一気に抜けたような脱力感を覚えた。 男は血を流しながらコチラを見ている。思い出す、あの時の、初めて人を斬り殺した時の事を。「あああああああ、はっ」 夢と現実の狭間でモモは大声を出して起きてしまった。ルーは爆睡していたが、アシノはその声を聞いて起き上がる。「何かあったか!?」「あ、あの、いえ、変な夢を見ただけで何でもないです……」 冷や汗をびっしょりとかきながらモモは言う。月明かりでその姿はよく見えなかったがアシノはモモの夢に心当たりがあった。「昨日の戦いでも夢に出たか?」「えっ? あ、はい……」 当てられたことにモモは一瞬びっくりしたが、弱々しく返事をする。「珍しいことじゃない。初めて命のやり取りをすると、ほぼ必ずと言っていい程、数日の内に夢に出る。亡霊の仕業だなんて言う奴もいるがな」「そうですか……」 モモはボーッとした心のままで答えた。 するとアシノが歩いてコチラへやってくる。その様子も心ここにあらずといった感じで見ていた。「お前は良い戦いをした、恐い気持ちは私も分かる。私もそうだった」「アシノ殿……」 そしてモモの頭を優しく撫でる。 そんな事がある前に少し時間が戻り、リースを尋問し終えた後、アシノはやって来た治安維持部隊に交渉をしていた。「私達は彼女の案内でキエーウの本拠地を叩こうと思っています」 だが、部隊長は渋い顔をする。当然だ、正規の手続きでは逮捕して裁判にかけなくてはいけない。「私も、個人的にはキエーウを倒すならばそれが最善の手ではないかと思いますが……」「全て終わった後にリースには罪を償ってもらいます。と言っても彼女はキエーウに所属してまだ人を殺めていないそうです。事情も考慮されればそこまで重い罪にはならないでしょう」 うーんと部隊長は悩む。本当にどうしたものかと。「それに、何かあった場合の責任は私が取ります。勇者の特権を使わせて貰います」 勇者の特権とは、勇者の資格を持つものは国や人を守るため、ある程度だが
Read more

リースと共に 2

「あ、兄貴…… もうやめた方が……」 寝ているムツヤに殴られ蹴られ兄はボッコボコになっていた。「馬鹿野郎お前、俺はムツヤを殺ってビッグになるぞ!!」 そう言ってツッコむも、またムツヤに殴られてしまい、遂に気を失ってしまった。「チクショウ覚えてやがれ!!!」 弟が兄を背負って逃げていくと、ムツヤと手を繋いで寝たふりをしていたヨーリィはそっとナイフをしまって眠りについた。 やがて日が昇り、うーんとユモトが起きた。魔物の警報魔法には異常が無い。「ムツヤさーん、ヨーリィちゃん、起きてくださーい。お料理作るのでカバンを貸して下さい」 トントンとムツヤの肩を叩いて言うとムツヤは目を覚ます。「あー、おはようございまずユモトさん」「おはようユモトお姉ちゃん」「魔物の心配をしてましたけど、何もなくて良かったですね」 ユモトが笑顔で言うとムツヤも「そうですねー」と言う。ヨーリィは無言でそれを眺めていた。 全員が起きて朝食を済ますと、アシノは赤い石を木に叩きつけてギルスを呼び出した。「やあ、おはようアシノ。何かあったのか?」 アシノは昨日あった事をかいつまんでギルスへ説明する。「それで、そこのリースって子を信用してキエーウの支部を叩こうってわけか」 ギルスは呆れてため息を付きながら言った。「あのな、どう考えたって罠の可能性が高いだろう、君達は昨日まで敵だった奴の言葉を信用するのか?」 そう言われてリースは何かを言いかけたが、下を向く。それを見てルーが代わりに反論する。「大丈夫、リースちゃんは良い子よ!」「良い子がキエーウに入るかバカ!!」 痛い所をつかれて思わずルーも黙ってしまう。ギルスは構わず持論を述べ続けた。「それに仮にだ、その子が本当のことを言っているとしても。キエーウだって馬鹿じゃない。きっと支部を移動させたか、罠を張って待ち構えているぞ」「そこでムツヤの出番だ」 腕を組んでいたアシノが喋る。「罠だろうがなんだろうが、こいつを送り込んで暴れさせりゃ勝てるやつなんていない」「そりゃそうかもしれんが……」 こっちにはムツヤという人型兵器と言うべき反則的な力がある。「もうビクビクとキエーウから逃げながら石を埋めるのはゴメンだ」 アシノが言った後、モモも話し始める。「それに、これ以上奴らを野放しにしていたら一般の人たちにも被
Read more

リースと共に 3

 ムツヤは荷車も本から召喚し、そこには立派な荷馬車が出来た。「何かこう、ポンポン召喚されると召喚術師の自信を失いそうね……」 複雑な気持ちになりながらもルーは馬を撫でてみる。「良い馬ですね、それに本当に本物みたいです」 モモは感心して言った。「すげぇ、こんなごどができるなんて!」 裏の道具の真価を初めて見たリースは少し興奮気味だ。 その後、荷馬車は馬の扱いをしたことがあるモモが運転することになった。 荷馬車の中でムツヤ達は座ってくつろいでいた。アシノは目をつぶって寝ており、ユモトもコクリコクリと眠そうにしている。 ムツヤとヨーリィは手を繋いで外の景色を眺め、ルーはモモの隣に座って馬の観察をしていた。 その時リースは思う。「あれ、逃げようと思えば逃げられるんでねぇか?」と。 今も亜人が憎くないかと言われたらそうは思えない。キエーウには裏切られて戻ることは出来ないが、どこかへ逃げることならできる。「リース、馬車に酔ってはいないか?」 大きめの声でモモが言うと考えを悟られたのではと、ビクッとしてリースは答えた。「あー、あぁー、だいじょーぶだー!」「そうかー、何かあったらいつでも言うんだぞー」「随分モモちゃんあの子を気にかけているわね」 モモの隣に座るルーが言うと「えぇ、まぁ」と短い返事をした。 馬車に乗ってすっかり日も落ちてきた。途中魔物の群れに襲われもしたが、ムツヤが馬車に乗ったまま石ころをぶつけて壊滅させた。「よし、ここをキャンプ地とするわよ!!」 ルーが言うと皆で野営の準備に取り掛かかる。馬車に乗っていただけあり、体力は有り余っていた。「アシノ、起きなさいアシノ!!」 アシノはほとんど馬車を寝て過ごしていた。ルーにペチペチ頬を叩かれてやっと起きる。「なんだ、もう着いたのか?」「違うわよ!! キャンプの準備!!」 ふわあっとあくびを1つしてアシノは周りを見渡した。夕焼け空がだだっ広い森を照らして不気味だけど綺麗だなと思う。 周りに人の気配は無いので今日は便利な魔導書から家をポンと取り出してあっという間に設営は完了だ。 それを見てリースは目を丸くしていた。 ユモトは鼻歌交じりに料理を作る。ムツヤはユモトから馬車で教わった魔物避けの結界を試しに行った。「えーっと、こうしてこうして……」 次の瞬間森の中がざわめき
Read more

キエーウ強襲戦 3

 おびただしい血と共にリースの上半身が崩れ落ちて地面に落ちる。「リイイイイイィィィース!!!!!!!」 モモが叫んで近付く、そして回復薬を上半身に振りかけた。 リースは叫ぶことも動くことも無かった。目を開いたまま、何が起こったか分からないまま、絶命していた。「貴様あああああああ!!!!!」 モモは声にならない叫びを上げてその人影の方を見る。 ユモトはその凄惨さに思わず胃液がこみ上げて口に手を当てた。「裏切り者には、まず死んでもらうじゃんな」 男の声だった。ビュンビュンと大鎌を振り回し、血を払うと構え直した。「俺が憎いか? 亜人。憎しみの連鎖を断ち切るなんて無理じゃんな。こうして簡単に憎しみなんて生まれちまう」「人を殺しておいて何を言う!!」 涙を堪えながら剣先で男を捉えてモモは怒る。「それはお前も一緒じゃんよ。お前は俺の友人を殺した」 それを言われてモモはハッとした。「お前が斬った人間を忘れたか? 何でも切れる剣とデカくなる盾を持つ男じゃんよ」「モモ、話を聞くな!! 戦いに集中しろ!!」「キエーウの人間はほぼ皆、亜人に恨みがあるじゃんな。これは亜人をこの世から消すまで消えないわけ」 モモは思い出してしまう。始めて命を奪った男のことを。 出遅れた、男が鎌を持ち、こちらへ走ってくる。そこへ投げられたのは木の杭だった。 騒ぎを察知して走ってきたヨーリィが男の前に立ちはだかる。「例の死体少女のお出ましってわけか」 ヨーリィが木の杭をビュンビュンと投げるが、男は大鎌を振り回して弾き飛ばす。「ユモト!! ボーッとするな!!」 アシノに言われてハッと我に返り雷の魔法を詠唱した。鉄の武器を持つ者は雷の魔法を武器で弾く事も出来ず、躱すか防御壁を貼るかしか防御の手段がない。「遅いじゃんな」 男は大鎌を持っているとは思えない速さで右へと走り、雷を避ける。アシノもワインコルクをパァンと飛ばすが当たらない。 そんな男をモモは剣を持ち追いかけた。まずいとアシノは思う。「モモ、無理をするな!! そいつは今のお前じゃ歯が立たない!! ルーの加勢を待つんだ!!」 くっと足を止めて仲間の元へ戻るモモ。「逃げるのか? 弔い合戦といこうじゃんよ」 男へ怒りはあったが、理性の方が上回っていた様だ。 煽りも無視して距離を取って剣を構える。そんな中
Read more

ここをキャンプ地としよう

 変なことを聞かれ、思わずユモトは吹き出してしまった。「あら、大当たりかしら?」「な、なにを言ってるんですか!? 僕とムツヤさんは男同士ですよ!?」「そういう意味で聞いたわけじゃなくて、仲間としてなんだけどー? やっぱユモトちゃんムツヤっちをそういう目で……」 しまった、罠にかけられたとユモトは思う。「ち、違います、好きじゃありません!!」「じゃあ嫌いなの?」 ユモトを下から覗き込んでルーは尋ねる。「い、いや、嫌いなわけないじゃないですか!! ですからその、好きとか嫌いとかじゃなくて、仲間として好きですけど、あとムツヤさんは強くて魔法も上手で尊敬してますけど」 顔を真っ赤にしてユモトはべらべらと早口で話していた。それを見て満足気にルーは笑っていた。「わかったわかった。からかって悪かったわよ」 うぅー、と言ってユモトは下を向いている。「でもさー、ムツヤっちって不思議よね。人を惹きつけるというか、いい人だけどおバカな所が放っておけないのかしら」 ムツヤに失礼かもしれないと思ったが、妙に的を射る発言に思わずクスクスと笑ってしまった。「えぇ、そうですね。ムツヤさんは優しいですけど」「おバカよね」 ルーがユモトを指差して言った。またハハハとユモトは笑う。「さーて、交代の時間まで魔法のお勉強をしながら見張るわよー!」「はい、今日もよろしくおねがいします!」 交代の時間の10分前、ヨーリィはバチッと目を覚ました。「お兄ちゃん起きて」 魔力の補給のために手を繋いだまま一緒に眠っているムツヤを揺さぶって起こした。「うーん、おはようヨーリィ」 眠そうにムツヤは起きる。テントを出るとユモトが魔法の訓練をしていた。「そう、そこでドピュッと出す感じで!!」「ど、ドピュッてですか!?」 相変わらずルーの教え方は直感的と言うか、下手だった。
Read more

キエーウ強襲戦 1

「それじゃあ、作戦を確認するぞ」 朝食が終わり、アシノがそう声を掛けた。ムツヤの能力で周囲に人が居ないことは確認済みだ。 また、念の為音の妨害魔法で家を包んでいる。「まずここから南の枯れたダンジョンに、キエーウの支部がある。ムツヤは人の気配を辿ってその本拠地を叩く」「はい!」 勢いよくムツヤは返事をした。アシノは思う、こいつはアホだが戦いに関しては信用できる。 ただ、人を斬る覚悟だけはまだ出来ていないようだが……「よし、それじゃ私達だ」 まぁムツヤなら殺さず、動けないようにするのは簡単だろうと自分に言い聞かせた。「最強ムツヤ大先生の弱点は私達だ。誰か一人でも人質に取られたらまずい」「そうなのよねー」 ルーだけでなく全員がその点には合点がいく。「だから私達は自分の身を自分達で守ることだけを考えるぞ」 皆が頷いたのを確認してアシノは話を続ける。「現時点でだ、この中でムツヤの次に強いのはヨーリィだ」「私じゃないの!?」「黙ってろ!!」 アシノが立ち上がったルーの頭を引っ叩くと「ぷぺら」と言って椅子に戻った。「中距離近距離の戦いで一番強いのはヨーリィだ。だからヨーリィを一番南に置く」 ヨーリィは「わかった」と短く言った。「次、ヨーリィの援護にルーが付く」「任せちゃってー、ヨーリィちゃんは私が守るわ!」「後の私達は後方で自分の身を守ることだけを考えろ」 ユモトとモモ、リースは返事をする。これでキエーウ強襲戦への布陣は決まった。「それじゃあ行ってきます」「えぇ、どうかご武運を」 ムツヤはモモの言葉を聞き終えると風のように森を駆け抜けていく。「私達も布陣するぞ」―――――――――――――― ムツヤは千里眼を使い、周りの状況を確認しながら森の中を南に向けて走り続
Read more

キエーウ強襲戦 2

 しかし、敵もムツヤをまだまだ甘く見ていたようだ。 人間離れした速さで飛び回り豪火を辺りに散らすムツヤを見て「本当に勝てるのか?」といった不安が少しずつ生まれる。「くそっ、なんて奴なの!!」 女召喚術師は次々と砂粒を依代に精霊を呼び続けた。流石に仮面越しの額に汗もかいてくる。「クソックソッ、止まりやがれ!!」 触手でムツヤを捉えようとする男も苦戦をしていた。「やっぱ、一筋縄じゃいかねぇってワケか……」 ムツヤに何らかの方法でトドメを刺そうとしている半円状の刀を持つ男は、しびれを切らし初めていたが、どうすることも出来ないでいた。 そんな何もかもが異次元で無茶苦茶な戦いが5分ほど続いた時、やっと進展があった。ムツヤが地面に着地し、何故か動かなくなったのだ。「しめたっ!!」 そのスキを逃さずに、触手でムツヤの足、そして次に手を拘束する。ムツヤは抵抗の1つもしない。「よっしゃ、後はあいつの首を吹き飛ばすだけだ!!」 ずっと長い刀を握りタイミングを図っていた男は一気に魔力を込めてムツヤ目掛けて弾けるように飛んだ。その姿は青い閃光に見える。 この刀は魔力を込めると、雷が走りありとあらゆる障害物を破壊しながら使用者と共に一直線に飛んでいく裏の道具だ。 ただ、例によって熟練の戦士であるこの男でさえ魔力不足かつ、完璧に使いこなせてはいないので、使用は1度きりだ。2度目は無い。 木をなぎ倒しながらムツヤに近付く閃光。 ムツヤはそれを知ってか知らずか触手に縛られ、小さい精霊が全身にまとわり付いて小さい山のようになっている。「死ねぇ!! 亜人の味方が!!!」 瞬間、小さい精霊の山から光が漏れた。そして起こるのは…… 大爆発だった。 閃光になってムツヤに近付いた男はそれを間近で受けてしまい、吹き飛ばされる。 激しく体を木に打ち付け、手足が吹き飛び、全身の骨が砕け、絶命した。 遺骸は爆発
Read more
PREV
1
...
67891011
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status