All Chapters of 裏庭が裏ダンジョンでした: Chapter 101 - Chapter 110

112 Chapters

キエーウ強襲戦 3

 おびただしい血と共にリースの上半身が崩れ落ちて地面に落ちる。「リイイイイイィィィース!!!!!!!」 モモが叫んで近付く、そして回復薬を上半身に振りかけた。 リースは叫ぶことも動くことも無かった。目を開いたまま、何が起こったか分からないまま、絶命していた。「貴様あああああああ!!!!!」 モモは声にならない叫びを上げてその人影の方を見る。 ユモトはその凄惨さに思わず胃液がこみ上げて口に手を当てた。「裏切り者には、まず死んでもらうじゃんな」 男の声だった。ビュンビュンと大鎌を振り回し、血を払うと構え直した。「俺が憎いか? 亜人。憎しみの連鎖を断ち切るなんて無理じゃんな。こうして簡単に憎しみなんて生まれちまう」「人を殺しておいて何を言う!!」 涙を堪えながら剣先で男を捉えてモモは怒る。「それはお前も一緒じゃんよ。お前は俺の友人を殺した」 それを言われてモモはハッとした。「お前が斬った人間を忘れたか? 何でも切れる剣とデカくなる盾を持つ男じゃんよ」「モモ、話を聞くな!! 戦いに集中しろ!!」「キエーウの人間はほぼ皆、亜人に恨みがあるじゃんな。これは亜人をこの世から消すまで消えないわけ」 モモは思い出してしまう。始めて命を奪った男のことを。 出遅れた、男が鎌を持ち、こちらへ走ってくる。そこへ投げられたのは木の杭だった。 騒ぎを察知して走ってきたヨーリィが男の前に立ちはだかる。「例の死体少女のお出ましってわけか」 ヨーリィが木の杭をビュンビュンと投げるが、男は大鎌を振り回して弾き飛ばす。「ユモト!! ボーッとするな!!」 アシノに言われてハッと我に返り雷の魔法を詠唱した。鉄の武器を持つ者は雷の魔法を武器で弾く事も出来ず、躱すか防御壁を貼るかしか防御の手段がない。「遅いじゃんな」 男は大鎌を持っているとは思えない速さで右へと走り、雷を避ける。アシノもワインコルクをパァンと飛ばすが当たらない。 そんな男をモモは剣を持ち追いかけた。まずいとアシノは思う。「モモ、無理をするな!! そいつは今のお前じゃ歯が立たない!! ルーの加勢を待つんだ!!」 くっと足を止めて仲間の元へ戻るモモ。「逃げるのか? 弔い合戦といこうじゃんよ」 男へ怒りはあったが、理性の方が上回っていた様だ。 煽りも無視して距離を取って剣を構える。そんな中
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キエーウ強襲戦 4

 男は最後に走馬灯を見た、自分を1人で育ててくれた母親。大好きな母親。オークに殺された母親だ。 ある日、治安維持部隊が来て、自分の母親はオークの盗賊団に殺されたと知った。 夜遅く、街の仕事からの帰り道で母親は殺された。悔しくて、寂しくて。 それが、何故だか分からないが、自分は母親に抱きしめられていた。温かい安心する体温が伝わった。「お母さん!!」 安心して泣いてしまっていた。母は頭を優しく撫でてくれる。「寂しい思いをさせてごめんね、ごめんね……」「ムツヤか? こっちは片付いた。すまないがもう一度キエーウの支部へ向かってくれ」 アシノは連絡石でムツヤに話した。「わがりまじだ」と返事があったので任せて問題は無いだろう。 ルーが探知盤で辺りの様子を見たが、反応はない。敵もこれ以上は居ないようだった。 モモは体中の傷も足首も回復薬で元通りになった。そして治ると同時に走ってリースの元へと向かう。 待っているのは残酷な現実だ。リースは下半身と上半身が斜めに切り分けられ、目は見開いたまま死んでいた。 その惨さにユモトは思わずまた口元を抑える。 モモは半ば無意識に2つになったリースを元に戻し回復薬を掛けようとした。「やめろっ!! 回復薬の無駄遣いだ!!!」 黙っていたアシノに一喝されてモモはビクリとする。「あ、アシノ…… そんなふうに言わなくても」 ルーは喋ったが、うまく言葉が見つからずまた黙り込んでしまう。「死んだ人間は生き返らないんだ。たとえ裏の道具を使ったとしてもっ!!!」「あっ、あっ、うぅぅぅ……」 モモは膝から崩れ落ちて泣いていた。悲しさか、悔しさか、虚しさか、それともそれら全てが混ざった感情か。涙が溢れて止まらなかった。 ムツヤはキエーウの支部を目指し風のように走っている。先程の爆風で辺りの木々は倒れ、燃えていた。 心臓がバクバクと鼓動を打っているのが分かる。人を殺めた恐怖が体を支配しそうなのが分かる。 頭を振ってそれらから逃れようとした。今は戦いに集中をしなくてはならない。 探知スキルで近付いているのは分かっていた。あと数分ほどでたどり着くだろう。「敵襲ー!!!」 キエーウの支部である枯れたダンジョンでは蜂の巣をつついたような騒ぎだった。 弓兵と魔道士が外へ出てムツヤの強襲へ備える。 森から何かが空へ飛び出した
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40日間 1

「アシノさん、終わりました」 連絡石でムツヤはアシノへそう伝えた。「そうか、ご苦労だったな。治安維持部隊が来る前に裏の道具の回収と、キエーウの隊員を縄で縛っておいてくれ」「はい」 ムツヤは最初に言われた通り裏の道具を回収し、戦闘員達を縄で縛る。「お……い、裏の住人」 最深部に居た男が何かを話し始めた。「亜人は……、どちらにしろ後40日で終わりなんだよ、ハハッハハハハ!!!!」「おい、何を言うんだ!!」 それだけ言って男はまた何も話さなくなる。――――――――――――――― モモが倒した鎌を使う男は森の中へ埋葬した。憎い敵であったが、彼もまた悲しみを背負って戦っていたのだろうから。「モモ、リースの出身地は知っているか?」「いいえ……」 リースの亡骸は布で包んでおいた。顔だけ見れば眠っているようだ。「出来れば故郷の地で眠らせてやりたいが…… 仕方がない。エルフの村で引き取ってもらえないか聞いてみよう」「エルフが嫌な顔をするのでは無いでしょうか、リースはキエーウのメンバーでしたし……」 モモは心配から思わずそう言ってしまったが、アシノは訂正してやる。「違うな、リースは私達の仲間だ」 ハッとしてモモは頷く。短い間だったが、確かにリースは仲間だった。「えぇ、そうでした……」「何にせよムツヤと合流したらエルフの村へ向かうぞ。治安維持部隊にも待機してもらっている」「そんな、リースさんが……」 仲間の元へ戻ったムツヤはリースの死を告げられ、ショックで固まってしまった。「やっぱり、やっぱり俺のせいです!! 俺が裏の道具を持ってきたからっ!!」「ムツヤ、お前のせいじゃない。キエーウという存在はこちらの世界の元からある問題だった」「そうです、ムツヤ殿が悪いわけではありません!!」 アシノとモモはムツヤにそう言うほか無い。 馬車にリースを乗せて皆でエルフの村へと戻ることにした。皆、心身ともに疲れ果て、会話は無い。 そんな時に、ムツヤのペンダントが紫色の光を放った。久しぶりのサズァンの登場だった。「ムツヤ、まずはお疲れ様ね」 いつもの掴みどころのない感じは消えて、サズァンは神妙な面持ちをしている。「サズァン様!?」「ムツヤ、皆、落ち着いて聞いて欲しいわ。恐らくキエーウは『災厄の壺』を発動させたみたいよ」 それを聞いてム
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40日間 2

「私達の仲間、リースが戦死しました。その遺体をこの村の墓地に葬って頂きたいのですが」 モモの言葉を聞いて村長は悲しそうな表情をして言う。「なんと…… お悔やみを申し上げます。勇者様の御一行でしたら村を上げて盛大に弔わせて頂きます」 このまま黙っていればリースは自分たちの仲間として丁寧に供養されるだろうが、モモは言いにくいことを言わずにはいられなかった。「リースは…… リースは、元キエーウのメンバーでした」 それを聞いた村長は目を丸くする。「キエーウの……? それはどういった事でしょうか?」「リースは亜人…… オークに両親を殺された恨みからキエーウに入りました。しかし、和解することができ、共に人間と亜人が生きる未来のために生きると誓ってくれたのです」 続けてモモは話し続けた。「今回のキエーウの支部を壊滅できたのも、リースの案内があってこそでした。短い間でしたがリースは仲間でした、どうかお願いします」 モモが頭を下げると重い空気が場を支配する。誰もが村長の言葉を待っていた。「そういう事でしたら、わかりました」 思わず頭を上げてモモは村長を見る。「リースさんはこの村で永久にご供養させて頂きます」「ありがとうございます!」 モモは思わず目から涙が溢れていた。 アシノが治安維持部隊から帰還するとムツヤ達と合流した。リースの件を告げると「そうか」と短く返す。 今日はまたカノイの宿にお世話になり、明日リースの葬儀を行うことになった。 そして、アシノの話によると、治安維持部隊は今からキエーウの支部である枯れたダンジョンへ向かうらしい。「とりあえず、今日は皆休むぞ」 焦りを隠しきれないアシノはそれだけ言って風呂へ行ってしまった。「ごめんね。多分サズァン様の言っていたことでアシノはカリカリしてるみたい」 だがそれは皆同じであった。ムツヤは自分の道具のせいで亜人が危ないことに悩んでいるし、当事者のモモも気が気でない。 それぞれが考え事をして、うまく眠れない夜を過ごした。 エルフの生と死というものへの考え方は、大雑把に説明すると、自然から生まれた命がまた自然へと帰るといったものだ。 墓地には新たな穴が掘られ、その隣にリースは厚い布に包まれて眠っていた。 棺桶は存在せず、代わりに村中のエルフが土の中へ入れられたリースを埋め尽くす花を散りば
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修行生活 1

 エルフの村へしばらく滞在させてもらうことを村長と宿屋の主に報告すると、快く受け入れてくれた。 早速アシノとルーの指導の元で特訓が始まる。「まずは自分自身が強くなることが第一だ。その後に仲間同士での連携を取る練習をする」「はい!」「基礎体力づくりと言ったら相場は決まっている」 皆は動きやすい格好に着替えて村外れに集合していた。「走るぞ!」「ちょ、ちょーっと待ったアシノ! なんで私まで走るの!?」 ルーはここまで着いてきて待ったをかける。「ルー、お前も研究だーって言って運動不足だろう?」「いや、確かにそうかもしれないけど!」「研究はギルスに任せておけ、苦楽は共にしよう。私達、仲間だろう?」 アシノが笑顔で言うとルーはガタガタと震えていた。 走り込みをすると、案の定最初に音を上げたのはルーだ。「もうらめぇ…… 死んじゃう……」「お前なぁ……、最近まで寝たきりだったユモトでさえまだ頑張ってるんだぞ!」 ユモトも苦しかったがハァハァ言いながら走っている。「だって疲れるし胸も痛いんだもん、アシノと違って大きいんだもん!! 邪魔なのよ!!」 瞬間、アシノの何かが切れる音がした気がして、皆はピューッと走って逃げていった。「え、アシノ? ちょっ、ワインボトルは駄目、ワインボトルは駄目だって!! ちょっと皆!? ヘルプミー!!!」「ずびまぜんでじだ!!」 泣きながらルーはアシノに謝っていた。その間も皆は走り続ける。 ムツヤは汗の1つも流さずに先頭を走り、次にヨーリィも表情1つ変えずに走っていた。 この2人は走り込みをする意味があるのかと疑問に思うモモとユモトだったが、それぞれ精一杯ムツヤに着いて行く。 モモは体力があるので余裕があったが、ユモトは遅れ気味だった。その後を涙と鼻水を垂らしながらルーが走っている。「よーし、走り込みはここまで」 そろそろ良いだろうという頃合いでアシノが号令をかける。 助かったーとルーは倒れ込んでハァハァ言っていた。「次は武器の素振りだ」 それを聞いてまた絶望した表情になるルー。プルプル震える足で逃げようとするがアシノに襟首を掴まれてしまう。「私は召喚術師だから!! 素振りとか無いから!!」「敵が接近してきたとっさの時に必要だろう? 師匠から習わなかったのか?」 アシノの笑顔にひいぃと悲鳴を上
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修行生活 2

 エルフの素朴な村を夕焼けが赤く照らしている。ムツヤ達はまだ外で訓練をしていた。「よし、そろそろ今日は良いだろう」 やっと終わったとモモは深く深呼吸する。 ユモトはその場にへたり込んでしまう。「よーし、帰るわよ!! 宿屋でお風呂に入ってご飯とワインで優勝していくことにするわよ!!」「ま、待って下さい」 ユモトは座り込んだまま動けなくなっていた。あちゃーとルーは額に手を当てる。「魔力切れね、ムツヤっちー背負ってユモトちゃん運んだげてー」「わかりまじだ」 疲れの1つも見せずにムツヤはユモトをヒョイッと背負って歩く。「すみません」「いえ、良いんですよ」 その様子をじっと見るモモに向かってルーはにやりと笑い。「モモちゃんも動けなくなるぐらい修行頑張ればムツヤっちにおんぶして貰えるかもねー」「な、何を言ってるんですか!!?」 そんなやり取りを見てアシノは笑っていた。それが珍しくて思わずモモは振り返る。「ま、何事も頑張ってみることだな。やらなきゃ分からないんだ。やるしかない」「アシノ殿まで……」 先に行って歩いているムツヤの背中でユモトが話をする。「なんだか僕ムツヤさんにおんぶされてばっかりですね……」「そんな事ありませんよ」 そうは言われても今だっておぶさっていた。いつかこの背中を僕が守るんだとユモトは固く決意をする。 翌日、皆は見事に筋肉痛だった。「もうマヂ無理…… 腰痛い、足痛い、腕痛い、フラフラするー!!!」 ルーは喚いていたが、アシノに飲めと言われてムツヤの薬を飲まされる。言ってしまえばドーピング的な修行方法だった。「確かに体は楽になったけど!! メンタル面が!! メンタル面が辛いのよ!!」「うるさい、ギルドの幹部になったからって修行をサボってたツケだ」 皆で仲良く昨日行った訓練をまた最初からやる。走って素振りして実戦訓練をして。 そして、あっという間の10日間だった。「モモ、だいぶ攻防戦が良くなってきているな」「はい、ありがとうございます!」 アシノが指導しているモモは中々に上達をしていたようだ。「ユモトちゃん、だいぶ魔力の加減が分かってきたわね」「はい、ルーさんのおかげです!」 ユモトも、午後訓練をしても動けなくなる事は無くなった。 体力が上がって基礎魔力が上がったのもあるが、魔力の無駄遣い
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修行生活 3

 そんな訓練を朝から夕方までやった。皆ヘトヘトになって宿屋へ戻る。 そして、とある問題がもう1つ起きていた。エルフの若い衆と冒険者が飲み屋で話をしている。「さて、第2回勇者様パーティーの推しを語る回を始めたいと思います」 湧き上がる拍手。そう、ファンが出来てしまっていたのだ。「はい、やっぱり小さい背丈と大きな胸がギャップのルーさんが最強だと思います!」 エルフが手を上げて高らかに宣言する。「お前、本当ロリ巨乳好きだよな」「いやいや、あの身長であの胸は反則だろ!! しかも子供っぽい性格がまた良い!!」 頷く者たちがチラホラと居た。そこでまた別の冒険者が話し始める。「やっぱり僕は、王道を往くモモさんだな。礼儀正しく、強く、美しく、健康的な体!! 冒険者の鑑だろう」「それは一理ある」 またウンウンと男たちは頷く。「俺はアシノ様だな、勇者だってのに偉そうにしないし、たまに笑う時があるんだけどそれが可愛いんだ」「なにそれ俺も見たい!!!」 羨ましがる声が上がった。そこでまた手が上がる。「ヨーリィちゃんも良くない? 何か不思議な感じとお人形さんみたいな完成された可愛さが!!」「わかる」 っとそこで、酒を飲んでいたエルフがふと声を出した。「おいおいおい、お前らユモトさんの事を忘れてねーか?」 そこでどよめきが起きる。「お前知らねーのか? ユモトさんは男だぞ!?」「男だったら何か問題でもあるのかよ!?」 それは…… と言い掛けて声が止まってしまった。「可愛いけど男、男だけど可愛い、その脳を混乱させる所が良いんじゃねえか」「そりゃあ、分からないことも無いけどよ……」 確かにユモトは可愛い。 奥ゆかしいし、顔も可愛いし、いい匂いもする。「愛があれば種族も性別も関係ない、そうじゃねーのかよ!!」 そう熱く語るエルフ。それを聞いて男たちは感動で涙を流していた。「そうだ、大事なのは愛だ、俺達が間違っていたよ……」「分かれば良いんだ……」 その話題の勇者アシノ達は羽根を伸ばそうとして飲み屋の外に居たが。「今日ここに入るのはやめておこう」「え、えぇそうね、他のお店にしましょう!!」 先頭で騒ぎを聞いていたアシノとルーはそう提案をする。それをユモトは不思議そうに首を傾げて聞いていた。 もう1軒ある飲み屋へとやってきたムツヤ達は
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修行生活 4

 そんな飲み会があった次の日の朝、モモはいつもの様に皆よりも早く起きた。 日課となっているリースの墓参りだ。村外れの墓地まで長い髪を揺らしながら歩く。「おはようございます、モモさん」「あぁ、おはよう」 宿屋の娘カノイと出会った。手には花を持っている。 カノイはこうしてたまに、先祖の墓と一緒にリースの墓にまで花を添えてくれていた。「いつもありがとうな、カノイ」「いいえ、私に出来るのはこれぐらいですから」 そう言ってカノイはフフッと笑う。モモはリースの墓の前で両手を組んで祈りを捧げた。「いつも訓練お疲れさまです、きっとリースさんも見ていてくれてますよ」「……あぁ、そうだな」 目を開けるとモモは返事をした。そのまま訓練をしている平原へ行って素振りをする。 一刻も早く強くならなければならない、守られるのではなく守るようになれるようにと。 しばらくすると仲間たちがやってくる。「いつも感心だなモモ」「やる気がみなぎっちゃってますねー、若いって良いわー…… って誰が若くないじゃ!!」「お前は黙ってろ」 ルーのノリツッコミをアシノは適当に流す。「おはようございます、モモさん」「おはようございまずー!」「おはよう、モモお姉ちゃん」  ぞろぞろと朝の挨拶をする仲間たちを見てモモも挨拶を返した。「えぇ、おはようございます」 今日も訓練が始まる、残された日はあと10日だ。 災厄の壺が発動するまで8日間になった。今日は最後の訓練である。 アシノが最初言ったように付け焼き刃ではあるが、モモもユモトもだいぶ成長していた。「今日は本気出しちゃうから怪我したらごめんね!!」 ルーはいつもより強めの精霊を召喚する。今日はルーも訓練する側ではなく、精霊を操ることに専念した。 3体の精霊がモモに襲いかかるが、まず1体を斜めに切り上げて倒し、剣を振り上げたまま走り次の1体を倒した。(一撃一撃の威力が重くなっているな) アシノは感心してモモを見つめる。最後の1体は真横に斬り捨てた。 エルフ衆の矢がモモを狙って飛んでくる。すかさずユモトは防御壁を張った。 始めは目の前にしか張れなかったそれも、10メートルぐらい先になら展開できるようになっている。 自身とモモを防御壁で守りながら、ユモトも魔法の氷柱で精霊を貫き、数を減らしていく。 20分ほど戦
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災厄の壺 1

 最後の訓練が終わった翌日、ムツヤ達はエルフの村を出る。 出発の前に全員でリースの墓参りを済まし、村のエルフ達にも礼を言った。「皆さん、どうかご武運を」「あぁ、世話になったなカノイ」「また来るわよ!!」 ルーはそう言って親指を立てる。「お世話になりまじだ!」「カノイさん、また!」 ムツヤとユモトも別れの挨拶を済ましたのを見てアシノは言う。「それじゃ出発するぞ」 その言葉を聞いてモモは馬車を走らせる。後ろではたくさんのエルフと冒険者達が手を振ってくれていた。 あのエルフ達を守るためにも災厄の壺を叩き壊さなければならない。 ここから北西に約50キロメートル。そこに災厄の壺がある。 馬車の中ではムツヤが探知スキルを使って裏の道具を持たない敵への警戒をしていた。 意外にも敵は1人も現れずに1日が終わった。いつも通り野営の準備を進める。「妙だな、まだ敵地から遠いからか……」 アシノは何か胸のざわめきを覚える。キエーウは足止めよりも本拠地を守ることを優先しているのだろうか。「アシノー、ごはんよーごはん!」「わかった、今行く」 そんなアシノを遠くから見つめる影があることを、誰も気づけていなかった。 腹が減っては戦はできぬとは言ったものだが、逆に腹がいっぱいでも戦はできない。 人間、食べた直後は動きが鈍るのだ。「ごちそうさまでした」 皆がユモトの手料理を堪能した後、ムツヤはハッと気がついた。「誰かが、いや、たくさんこちらに向かってきていまず!!」「やっぱりか」 アシノの嫌な予感は当たってしまう。探知盤にも裏の道具の反応が四方から集まりだす。「ムツヤ!! 北西から時計回りに敵の数を減らしていってくれ!!」「わがりまじだ!!」 そう言い残すと次の瞬間ムツヤは風のように消えた。「私達は馬車に乗ってムツヤの後を追うぞ!!」「はい!!」 モモが返事をして馬車に乗り込む。このままここに残れば四方から攻撃を受けてしまう。 移動しながら戦ったほうが安全だとアシノは判断する。「ルー!! 弱いやつでいい、精霊をここに残していってくれ」「任せて!」 牽制と偵察用の精霊をルーは召喚した。そして馬車を走らせる。 その頃、早くもムツヤは接敵していた。 キエーウの仮面をかぶる者達が次々と押し寄せ、ムツヤを見るなり剣や槍を構えて襲いかか
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災厄の壺 2

 ムツヤが走る先には、またキエーウの連中がいた。剣を抜いて応戦をする。 1人あたり3秒もかからず次々にムツヤは敵を倒す。だがそこに、鎖とトゲ付きの鉄球が飛んできた。 ムツヤはこの攻撃を知っている。バッとその飛んできた方向を見ると本を開いた女が1人。 モモの持つ無力化の盾と同じものを構えて鉄球に備える。 飛んでくる鉄球を受け止めようとした瞬間、それは急上昇し、螺旋を描きながら落ちてきた。「ぐっ」 その軌道はムツヤの動体視力を持っても受け止めるので精一杯だ。体に直撃はしなかったが、危ない所だった。 あの鉄球使いの女は前に会った時よりも確実に成長をしている。一気に距離を縮めるのは危険だ。 ムツヤがどうしようかと考えている所にアシノ達が到着をした。 モモを見るなり、鉄球使いの女は激昂する。「醜い豚め、また会ったな。今度こそ殺してやる!!」 挑発に乗らずに冷静にモモは言葉を返す。その間も女は鉄球を生き物のように目の前でブンブンと振り回している。「何故お前はそこまでオークを憎む」「ハッ、他のキエーウのメンバーと同じよ、私の家族は醜い豚の盗賊団に殺されたわ!!」 その生い立ちを聞いてモモの頭にリースの姿が思い浮かんだ。 オークは人間からの差別が未だに酷く、盗賊や強盗といった犯罪に走る者も少なくない。「それは本当に気の毒だと思うし、申し訳ないと思う。だが亜人を皆殺しにするのは間違っている!!」「黙れ!! お前達は皆殺しだ!!」 そう言って女は鉄球をモモの元まで飛ばす。隙きができたとムツヤは女に飛びかかろうとするが、なんと鉄球がもう1つ飛び出してきた。 モモもムツヤも無力化の盾でそれを受け止めた、早く倒さなければキエーウに取り囲まれてしまう。「私がムツヤ殿の背中を守ります」「それしか無いか……」 モモが言うとアシノも苦渋の決断をする。危険だが、確かにあの2つの鉄球相手にはそれしか方法が無いだろう。 ムツヤの元へ走るとまた鉄球が飛んできたが、盾で防ぎ、ムツヤと背中合わせになる。「モモさん! ありがとうございまず!!」「いえ、私の命に変えてもムツヤ殿はお守りします」 モモは一度だけ振り返りムツヤに言った。「ふざけるな!! 糞豚がァァァァ!!!!」 2人は遅い来る鉄球を無力化の盾で防ぐ、しゃがみ込んで盾に身を隠し、ジリジリと女のもと
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