私は一昨日と同じ場所に来ていた。葉に日が遮られて涼しい風が私の頬を掠める。知っている姿を見つけて駆け寄った。「おはよう!来てくれてよかった」「……約束したから」 まだ声は小さいが、ここにいるという事実に胸を撫で下ろす。「早速連れて行ってもらってもいいかな?」 彼は小さく首を縦に振る。私はそれを肯定と受け取り、手を差し出した。彼が首を傾げる。「どうしたの?私の手がそんなに不思議?」 今度は首をゆっくり横に振って私の手を掴む。私たちの間を涼しい風が通り過ぎた。 優しく手を引いて立たせると、彼の頭についた葉っぱを取ろうと思い、私は手を伸ばす。その時、彼の体がビクッと震えた。すぐに手を引っ込める。「ごめん。びっくりさせちゃった?」「あ、いや……」「頭に葉っぱついてるよ」 クスッと笑って彼の頭を指さす。彼は慌てたように自分の頭に触れて葉っぱを取った。頬がほんのり赤くなっている。「じゃあ行こっか……って私の家じゃないや」 彼は少し目を丸めて、不思議そうにこちらを見ていた。次の瞬間、目尻を下げほんの少し口角をあげる。彼が笑っているところを見るのは初めてだった。「ふふっ、僕の家行こっか」 その笑顔を見た瞬間、私の心が熱を持った気がした。私は、ふわふわとした足取りで、歩き出した彼の後ろに着いていく。 言葉も交わさず自然の中を歩いていると、やがて中学生が一人で住むには大きすぎる家が見えてきた。「ここだよ」 口をあんぐり開けて家を見つめ、しばらく動けなかった。かろうじて動かした口からカスカスの声が漏れる。「ほんとに……?」「うん、ほんと」 凄いと同時に寂しくも思えた。この広い家に住んでいる彼のこともあるが、物音一つ聞こえない家自体から寂しさが漂っている。ここだけ幻想のように感じられた。 神秘的な雰囲気に目を離せないでいると、小さくて寂しそうな声が聞こえた。「入らないの?」「あ、ごめん。お邪魔します」 扉を横に引いて入っていく彼の背中に着いていくと、生活感のない光景が目に入り込んだ。 見えている三つの部屋のうち、物が置いてある部屋は一つだけだった。畳の上に茶色い長机と深緑の座布団が二つ置いてある。そこに通され、扉側の座布団に腰をかけた。「お茶入れてくるから待ってて」 そう言って彼は部屋を後にする。緊張している自分の心臓の音しか聞
Last Updated : 2025-10-27 Read more