LOGIN中学三年生の月野沙羅は、学校に馴染めず不登校になった。そんなある日、気分転換のために外へ行くと、不思議な雰囲気を纏う深山律に出会う。そんなに律に惹かれ、沙羅は密かに恋心を抱く。 しかし、その先に予想もしない困難が待っていた——。 大切な人を守るため、二人で秘密を背負いながら進む。ドキドキの恋愛ミステリー。
View Moreいつも通り律の教室へ向かうと、いつもは目にしない人が律と話していた。扉の影に隠れてそっと様子を伺う。律は、暗いようなそっけないような、普段とは違う表情をしていた。すぐ近くから生徒の話し声が聞こえ、思わず振り向いてしまう。もう一度教室の中に目を向けた時には、律の前から人影が消えていた。「律ー!」 私は名前を呼びながら律の机に駆け寄る。「今の瑠唯くんだよね?」「そうみたい」 そう。律と話していたのは瑠唯くんだった。 予想しなかった来訪者に私は不思議そうに眉を寄せた。ふと、律に視線を向けると真剣な眼差しでこちらを見ていた。「どうしたの?」「……いや、なんでもないよ」 何か言いたそうにしていたが、私は笑顔を浮かべて気づかないふりをする。「そう?なんかあったら言ってね」「ありがとう」 他愛もない話をした後、私は違和感を抱えながら教室へ戻った。「律くんの瞳、綺麗だよね」「どうしたの?急に……」 昼休み、みんなでご飯を食べていると、紬ちゃんが急に言葉をこぼした。少し驚いて目を見開く。律も不思議そうに首を傾げていた。「日本で青い目の人って珍しくない?」「そ、そうかな……」 律は紬ちゃんの言葉に明らかに動揺している。律が人狼であることは私と翔真以外に知らないため、なんて言葉を返して良いのか考えているようだった。「みんな僕の目のこと、気になるんだね」「みんな?」 私は律の言葉に疑問を感じて首を傾げる。律は少し微笑んだ後、こくりと頷いた。「うん。さっきの瑠唯って人にもカラコンかって聞かれた」「違うクラスに行ってまで聞きたかったのかな」「そうかも。でも、目が鋭かったような気がする」 律は瑠唯くんの表情を思い出したのか、頬を掻きながら苦笑いを浮かべる。私と翔真は同時にお互いのことを見た。何かを分かち合うように頷く。「あーそれは、誰に対してもだな。誰も近づけないような雰囲気がある」「悪い子じゃないと思うけど、嫌なこと言われたら教えてね」「ふふっ、分かった」 律は嬉しそうに微笑んだ。私もその表情を見て自然と笑顔になる。でも不思議と心がざわつくような妙な気持ちだった。 気持ちを晴らすように首を横に振ってから言葉をこぼした。「そうだ、今日放課後みんなでショッピングモール行かない?」「いいね」「行くか」 律と翔真が同時に頷く。そん
私は首を傾げて彼の言葉を待った。目の前にいる彼は一歩私に近づいて言葉をこぼす。 「あいつと知り合いなの?」 意図が読み取れず眉を顰める。数秒考えてから彼に視線を向けた。鋭い彼の視線で体が強張る。一度拳に力を入れてからつぶやいた。 「あいつって?」 「青い目のやつ」 「あー……」 彼の澄んだ茶色い瞳から一人の人物が伝わってきて、頭に浮かんだ。その笑顔があまりに眩しくて、気づけば心の奥がじんわりと温まっていた。しかし、彼の瞳は律を警戒しているようで、なぜか頭に血が上った。 「そうだけど、何?」 彼の棘ある言葉に強く返してしまいすぐに後悔をする。目の前にいた彼も一瞬目を大きく見開いた。思ったより低い声が出て、自分も驚く。咄嗟に彼が視線を逸らしたことで、頭に上った血が全身を巡るように感じた。 「いや、別に」 「そっか。ていうか|瑠唯《るい》くんだっけ?」 「そうだけど……」 私はなるべく笑顔を浮かべるように優しく言葉にした。自己紹介を聞いて偶然覚えていた名前を口にする。そうして手を差し出した。 「私、月野沙羅って言います。よろしくね」 「別に……仲良くするつもりはないから」 そのまま手を握り返すことはなく、瑠唯は背を向けて立ち去った。野良猫みたいだな、と肩を落としてため息をつく。 振り返るとすぐ近くに顔を顰めた翔真がいた。 「今の誰?」 「誰って、|音瀬《おとせ》瑠唯くんだよ。自己紹介聞いてなかったの?」 「覚えるの苦手なんだよ。ていうかそういうことじゃないから」 「どういうこと?」 私は翔真の言葉に首を傾げた。翔真は呆れたようにため息をつき言葉をこぼす。 「なんの話してたのかって」 「あー……まぁ律の話してた」 「なんで?」 目を見開いた翔真が首を傾げる。私はなんとなく面倒に感じて言葉を濁した。 「さぁ?それより屋上行こ。紬ちゃん呼んでくるね」 「おう、そうだな」 それ以上は聞くこともなく翔真はその場に留まる。私は紬ちゃんの席に行き、彼女の肩を叩いた。 屋上の扉を力いっぱいに開くと、律がその音に気づいたようでこちらを向く。 「律、お待たせ!」 「お疲れ……って翔真くんと、誰だろう。初めましてだよね」 律は不思議そうに首を傾げて、紬ちゃんの方に視線
私たちは昇降口の入り口に張り出されたクラス表を見ていた。先に自分の名前を見つけた私は律の方に視線を向ける。律の視線の先を見て心に雲がかかった。 「律、何組だった?」 「僕は三組だったよ。沙羅は?」 「私、一組」 律は分かりやすく肩を落とした私を慰めるように、そっと肩を叩いていた。少し視線を上げて律を見れば、悲しみを宿した表情で微笑んでいる。ひんやりした春の風が二人の頬を掠めた。 「まぁしょうがないよ」 律の言葉に私は下を向いて頷く。律のいない教室を想像すると、何かが足りない空虚感があった。私は、悲しげな瞳の奥で熱を灯して、はっきりと言葉を告げた。 「絶対休み時間に会いに行くね」 「ふふっ、待ってる」 律の表情から笑みが溢れた。その表情を見て、私も自然と口角を上げる。そして教室へゆっくりと歩き出した。 廊下を歩いていると、私たちに少し視線を向けてコソコソ話している同級生が視界の端に入った。私の耳元に口を寄せて律が呟く。 「やっぱ噂になってるみたいだね」 「ん、なにが?」 私は律に視線を向けて首を傾げる。思ったより顔が近くて心が跳ねた。律は周りの人たちをぐるりと見渡して言葉をこぼす。 「僕たちのこと」 「あー……」 律の言葉を聞いて、私は昨日の光景を思い浮かべた。確か、私たちは手を繋いで帰ろうとしていたはずだ。今思うと、なぜ同級生がいる前で堂々と手を繋いだのだろう。私は自分に対して溜息をついてから言葉をこぼした。 「昨日見られてたのはそういうことだったのか」 「きっとそうだろうね」 律は頷いて顎に手を当てる。そこで律の教室の前に着いたので、扉の前で足を止めた。寂しい気持ちが心を埋めて、足が接着剤でくっついたかのように動かなくなる。律のことを見つめていると、律は首を傾げて口を開いた。 「どうしたの?」 「……寂しいなって」 私が言葉をこぼすと律の目が大きく見開かれた。すぐに先ほどよりも明るい笑顔になって、私の手を優しく掴む。そのまま手を引かれて、人気の少ない場所まで連れて行かれた。 「ここならいっか」 そんな言葉が聞こえると、全身にふわりと温もりが伝わった。動けなくなった体を律に預けて言葉をこぼす。 「律?」 「充電させて」 甘い声が耳に吹きかかり、顔が赤くなって
平穏な日常はすぐに流れ過ぎ、気づけば私たちは高校生になっていた。今日から私と律は同じ高校に通う。 入学式の朝、太陽が穏やかな表情で、新しい春を迎える生徒たちを祝福していた。まだ馴染んでいない制服に袖を通して、律の家へ向かう。新しい制服の肩が、やけに重く感じた。動かしづらい腕を一生懸命振って律の家までたどり着く。震える手で扉を叩いた。 すぐに扉が開き、強張った表情の律が顔を覗かせる。 「律、おはよう!」 「おはよう……」 「緊張してるの?」 「……少しだけ」 普段の頼もしい律とは少しだけ違い、触れたら割れてしまいそうなほど繊細な表情をしていた。 私は思わず口から笑みをこぼし、律の手を優しく握った。律の手はかすかに震えている。律の指先から、私の心の奥まで震えが伝わり、全身に広がった。静かに見つめ合い、そっと微笑み合う。一度、律の手を離した。森の香りを乗せた温かい風が、私たちを包んだ。思い出したように律が口を開く。 「あ、カバン持ってくるね」 そう言って律は、部屋の中へ戻っていった。開いたままの扉から律の後ろ姿を眺める。律はカバンを部屋から持ってきて、家の鍵を閉めた。 「私も緊張してきちゃった」 「緊張するよね」 「でも、律がいるから楽しみ!」 「僕も沙羅がいるから安心できるよ」 二人はお互いを引き寄せ合うように手を繋ぐ。いつもより強く握られた手に、不安と期待が滲んでいた。 「律!いつものところ寄ってから行こ!」 「あ、ちょっと……」 私は律の手を強く引き、ある場所へ迷いなく突き進む。やがて、一本の木の前で足を止めた。初めて出会った時、律が寄りかかっていたあの木だ。 「よし!律も手を合わせて」 「分かったから引っ張らないで……」 木の前に二人で並び、目を瞑って手を合わせる。事件が収束した時から、二人の習慣だった。朝、律の家で待ち合わせて、木の前で手を合わせる。――確証はないが、私たちに力をくれているようで、心の奥が震えた。 木に別れを告げて、私たちは歩き出す。毎日来ているのに、なぜか心細さが残った。 この地域には高校も少ないため、家から歩いて一時間ほどかかる高校へ向かう。それでも律と話している高揚感で、疲れなど感じなかった。 「沙羅は、高校で何がしたい?」 「んー……文化