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All Chapters of Komplize - 共犯者 -: Chapter 21 - Chapter 30

33 Chapters

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 迅が出かけてしばらくすると、急に雨が降り出した。「この土砂降りじゃ、歩いて帰って来るの面倒だなぁ……」 けれど、これはこれで好都合だなと冬馬は思った。 やってきた時と、今出かけていった時の、冬馬の車のタイヤ跡を雨が綺麗に消してくれる。 その上、車を落として戻ってくる迅の姿が、人目に付かずにも済む。 四時間ほど経った頃、全身から水滴をしたたらせた迅が帰ってきた。「トーマ……風呂ぐらい沸かしておいてくれたっていーじゃんか〜」 雨なのか、それとも本人の涙なのか、ビショビショの顔を何とも情けない表情にして迅が泣き言を言う。「なんだよ、オマエ無傷で帰ってきたの? スゲェな」「なに言ってんだよっ! 命がけだったんだぞっ! よくもあんな危ない計画立てるよっ!」「そーしたがったの、オマエじゃんか」 それを言われては、ぐうの音も出ない。 迅は不満そうな顔で黙り込んだ。「風呂の件は、まぁ、悪かったよ。でも、俺はもう二度と、階段から落ちたくねェからな」「階段からって……どうかしたの?」 初めて聞く話に、迅はびっくりしたように顔を上げた。「片足引きずってる人間が、こんなモンと一緒に無事に階下に降りられると思うか?」 右手の先に繋がるパイプ枠を見やってから、冬馬はおもむろに腕を突き出す。「つーワケで、コレ、さっさと外せよ」「え、だって外しちゃったらトーマが……」 言葉の先を冬馬は目線で黙らせる。「テメェなぁ、この場合、主犯はどっちになるんだよ?」「主犯……???」 ものわかりの悪い返事をする迅に向かって、冬馬は笑った顔のままで手招きをした。 そして、ノコノコと側にやってきた迅の襟首をいきなりつかみ、鼻と鼻が触れるほど側に顔を寄せる。「俺が企画してオマエが実行してるってことは、俺がご主人様でオマ
last updateLast Updated : 2025-11-14
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 東京の事務所に連絡を入れたらしい迅が、ますます不機嫌な顔をして部屋に戻ってきた。 迅の不機嫌の理由を先に察していた冬馬は、頭から掛け布団をかぶって寝たふりを決め込んでいる。「トーマ〜、北沢クンがどーしても帰ってこいって言うんだよ〜」 だが、そんな冬馬の「狸寝入り作戦」など、迅には微塵も通用しなかったらしい。 しっかりと目を閉じている冬馬の肩を掴み、ガンガン揺さぶってくる。「テメェなぁっ! 俺は昨日からオマエに気軽にゴーカンされまくって、挙げ句に階段のてっぺんから下まで落っこって、オマエが考えるより遥かに疲れてンだよ!」 思わず飛び起きた冬馬に、本当に眠ってしまっていると思っていた迅はかなり驚いた顔をした。「トーマ、寝てたんじゃないの?」「そー思ったんなら、起こすンじゃねェよっ!」 思いきり怒声を張り上げた所為か、冬馬は一瞬目の前が真っ暗になる。「トーマ、スゴク顔色悪いよ」 心配そうな声を出す迅を、冬馬は思わず力一杯睨み付けてしまった。「今の俺には、安静と睡眠が必要なんだっ! オマエはさっさと東京行って、北沢サンを安心させてこいっ!」 しかし冬馬が戻らないのでは、安心どころではないのではないだろうか?と、迅は微かに思ったけれど。 そんなコトを言い出したら間違いなく冬馬が暴れ出すことくらいは、さすがに察しがついたので。「じゃあ、行ってくる……」 ちょっとうなだれるようにして、扉に向かって歩き出しかけて。「……すぐ帰ってくるから、ホントに待っててね」「さっさと行けっ!」 迅が閉めた扉に、羽毛の詰まった枕が叩き付けられる様な音がした。
last updateLast Updated : 2025-11-15
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6.氷解

「ああ、うん。それならテレビで見たから、知ってるって。……あのな、何度も言わせんなよ……、この部屋空調が全然ないし、まともな家具もないから長居したくねェんだってば」 迅からの電話を受けながら、冬馬は被っている毛布を体に巻き付け直した。「だぁから、それはもうイイっての! 俺の服をオマエが焼却しちまったコトを責めてるんじゃなくて、この部屋にいるのが大変だって話で。椅子もねェし、床は冷たいし……」 いくら室内にいるとはいえ、山の中であるこの場所は夜になるとかなり冷え込んでくる。 服を焼却されてしまった冬馬は、とりあえずあり合わせのバスローブを羽織り、上から毛布を巻き付けていた。 まともな暖房器具のある部屋にいても、その格好をしていないと厳しいと感じる時さえあるのに、この家の中で唯一電話機がある部屋は、その暖房器具すらないのだ。 迅の話を聞きたくないわけではないが、まともに腰を掛ける場所すらないこの部屋に長居をしろと言われるのはかなり酷な話だった。 日に一度かかってくる電話が、必要だと冬馬も思う。 テレビが伝えてくれる情報には、嘘や誇張も混じっていて、正確に状況を把握するには、その場に居る人間からの情報が必須だ。 だがここ数日の迅からの連絡は、泣き言にばかり偏りがちだった。「なんか進展があるまで、連絡しなくていいって言ってる……」 言いかけて、冬馬はふと喋るのを止めた。 階下で、音がしたような気がしたからだ。 しかし、そちらに神経を集中する前に、冬馬に遮られることの無くなった迅が一気に喋りだしてしまい、階下の様子を伺うこともできない。「ちょ……ちょっと待てって……あぁ? なに?」 まくし立てる迅の話をおざなりに聞き流そうとした冬馬だったが、そこで語り始められた話の内容にそれができなくなる。「俺の車が、見つかったって? 北沢サンと、オマエとで、こっちに確認に来たのか?」
last updateLast Updated : 2025-11-16
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「一週間も帰ってこられないなんて、思ってもみなかったよっ!」 ログハウスに戻ってきた迅の第一声は、それだった。「んなこと言ったって、仕方ねェだろ」「そんなふうに言うけど。俺はスゴク大変だったんだよっ! 戻りたいの我慢するのはもちろんだけど、トーマが生きてるの知ってるのに、生死が分からない不安な顔しなきゃならないしっ! みんながスッゴイ心配してるのに、言えない辛さったら……」 しょげたような顔をする迅の様子から、それでもそれなりに反省はしているのかと、冬馬は奇妙な納得をする。「帰り際、北沢クンはヒトのことスッゲェ心配するような顔で見てさぁ。迅クン力落とさないでねとか、みょ〜に優しい声出して。皆にも同じよーなコト言われて、変に優しくされるのがキモチワルイのなんの!」「そりゃあ、オマエを一人にしたら、首でもくくると思ったんじゃねェの?」 冬馬の一言に、コーヒーの入ったマグを手に取りかけた形で迅は顔を上げた。「……そうか……。……でも、そーだよね。ココにこうしてトーマが居てくれてなくて、あの状況だけだったら……それぐらい考えかねないモンね」 今更のように頷く迅を見やり、本当はどこまで反省しているのかとちょっと疑問を覚えた冬馬だった。「そんで、オマエはこれからどうすんだよ。とりあえず、しばらくはココに引きこもってる予定なんだろ?」「ああ、うん。……実は、このあいだ一人でいる間に少し面白い楽曲ができてね。アレをもうちょっといじろうって思ってるんだけど……」「なんだ、俺を監禁するために手ぐすね引いてただけじゃねェのか?」 皮肉混じりの冬馬の台詞に、迅は少しだけイヤな顔をして見せる。「ヒドイなぁ、基本的にはちゃんと仕事してました。だいたい、ホント言うとほとんど思いつきだけで実行しちゃって、ちっとも計画立ててやったワケじゃないんだよ」「……そ
last updateLast Updated : 2025-11-17
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「今まで、こんなふうにトーマと合作することなんて無かったから、スッゲェ新鮮でなんかメチャメチャ楽しいなぁっ! そー思わない?」「でもオマエ、この曲、俺と連名じゃ発表できねェだろ?」 冬馬の言葉に、迅はハッとなった。「あ、そうか……」 しばらく押し黙り、迅はひどく陰気な笑みを浮かべてみせる。「みんなに嘘つくのも、トーマとの合作を連名で発表できないのも、全部自分が悪いって分かってるけど……、でも……俺……」 迅はそこから先の言葉を言わなかったが、冬馬にはなんとなく察しが付いた。 冬馬を手放したくないと、そう言いたかったのだろう。「オマエがワガママなのなんて、今に始まったこっちゃねェだろ」 ベッドの上から手を伸ばし、ギターを壁に立てかけた冬馬の肩に、迅は自分の額をのせる。「トーマって、ズルイよ。いつも絶対に折れないクセに、ギリギリの所で優しいフリするんだモン。……そんなふうに言われたら、俺、またトーマのことが欲しくなっちゃうよ」 顔を俯けている迅の肩を押し戻し、冬馬は迅と向き合うようにして顔を覗き込む。「じゃあ、抱けば?」「えっ?」 驚いた迅に、冬馬は平然と同じ言葉を繰り返した。「抱けば?」「だ……っ! だって……トーマ?」 慌てふためく迅とは対照的に、冬馬は落ち着き払っている。「オマエってホント、いらんトコで気ィ使ってくれるよな。あんなクスリ使われよーが使われまいが、俺にとっちゃ同じなんだぜ」「同じって……、トーマ、そんなにショックだったの? そんなに、投げ遣りになっちゃうほどイヤだったのっ?」「だれがそんなコト言ってんだよ……」 呆れ返ったようにため息混じりで呟いた冬馬を、迅はますますわけが分からないと言った
last updateLast Updated : 2025-11-18
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7.影

 雨の気配で、目が覚める。 冬馬の隣では、だらしなく幸せそうな顔の迅が、まさしく惰眠を貪っていると言うような様相を呈していた。「なんでこう、憎めないんだろうね。このバカ」 ため息ともなんともつかぬ息を吐き、冬馬はベッドを抜け出した。 ベッドの側に立てかけてある松葉杖を取り、静かに部屋を出る。 あまりにも日常生活に支障をきたすので、迅が新たに調達してくれたのだ。 コトコトとぎこちない動きで階段を降り、階下に向かう。 雨の所為で時間の感覚が少しズレているが、晴れていればまだ外はやや明るいくらいの時間だろうか。 時計に目をやると、まだ午後四時を少し回ったくらいだった。「ったく、よう。もうちょっと時間とか考えて行動しろってんだよ……」 ブツブツと文句を言いながら、冬馬はキッチンに向かった。 思わぬ所で迅と〝あんなコト〟になってしまい、昼食を食べそびってすっかり腹が減ってしまったのだ。「アイツ、起きねェよなァ」 キッチンに赴き、ぼやきのような呟きを零しながら、冷蔵庫を開く。 松葉杖を使っている今の冬馬では、常に片手が塞がっているためにまともな料理など望めない。 迅が滞在している間は迅に料理をさせるつもりだったが、今の状況で起こしたら食事にありつくまでにまた大層な時間がかかるに違いないだろう。「カップ麺とか、買っときゃ良かった」 食事と言うよりは酒のつまみに近い、特に調理をしなくても口に入りそうなモノを見繕い、居間に向かう。 あまり腹にたまりそうもないが、とりあえずの空腹感を紛らわそうと、冬馬はソファに座ってそれらを適当に噛じり始めた。 その時──。 ゴトン。 という音と共に、玄関脇のボックスの蓋が微かに動いた。「………………」 ただの配達かとやり過ごそうとして、冬馬はふと顔を上げる。 そこから、人の動く気配がないのだ。
last updateLast Updated : 2025-11-19
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「あ、配達? ……そうか、トーマがここにいることがバレると不味いモンね」「そういう問題だけじゃねェんだよ」「え、なに?」「いーよ、もう。オマエ起きたなら、メシの支度しろよっ」 この奇妙な疑惑を、迅に言うつもりはなかった。 あまりにも曖昧で、確証になるようなものは何一つない。 オマケに迅は、楽曲のプロデュース以外に関しては見事なほどの天然ボケというか、一種、極まった無神経ときている。 わざわざ説明したところで納得はしないだろうし、ヘタに納得したら今度は無闇に怯えるだけだ。 それがわかっている冬馬は、あえて何も言いたくなかったのだ。「なんだよ〜、俺だって腹減ってるのに〜」「誰の所為で昼飯食い損ねたと思ってんだよっ! 大体、飯炊きはオマエの管轄だろうがっ!」 ちょっとだけ拗ねた顔をして見せたが、冬馬が調理のできない理由をわきまえている迅は、それ以上は何も言わずに、配達された荷物を持って、おとなしくキッチンに向かう。「カルボナーラでいい?」「もっと、手間かからねェ簡単なのでイイよ」「手間なんて掛からないよ〜、スパゲティ茹でるだけで、後は缶詰のソースで仕上げるから」「缶詰のソース?」「ん〜、なんだろ? 試供品? 頼んでないけど、入ってた」「大丈夫なんだろうなぁ、おい?」「なにが? フツーの缶詰っぽいよ? トーマ、カルボナーラ好きだし、いいじゃん」 仕切りの向こうで、迅は早速お湯を沸かし始めたようだった。 迅の意識が完全に逸れたことを確認して、冬馬は再び玄関へと目線を移す。 ただの取り越し苦労なら、それに越したことはないのだが……。「ねェ、トーマ〜、ちょっと悪いけど〜」「なんだよ?」 思考を中断させられて、冬馬は億劫そうに立ち上がるとキッチンに向かう。「俺のスマホの着信、見て」「んなモン、手が離れたら自分で見りゃーいいだろう」 湯気の上がる鍋を運ぶ迅は、冬馬の
last updateLast Updated : 2025-11-20
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 冬馬は黙って盛りつけの済んだ皿を手に取り、居間へと引き返す。 ソファに座って、冬馬が悠々と食事を始めてしばらくすると、迅が慌てた様子でこちらへやってきた。「トーマ、なんか変だよ?」「なにが?」「それが……、北沢クンが『脅迫状が来た』って言うんだ」「はぁ?」 思わず食事の手を止めて顔を上げた冬馬に、迅もなにやら困惑気味の顔を向ける。「トーマのコトを誘拐して監禁してあるから、身代金を払えって言ってきたヤツがいるって。言うんだよ」「マスコミにはまだ、俺が死んだつー話は流してないんだろ? 俺の失踪を利用した、ただの便乗愉快犯じゃねェの?」「俺もそう思うんだけど、でも北沢クンに『トーマはここにいるから、そんなのはウソです』とは言えないじゃん。一応、ただの愉快犯なんじゃないのって、俺も言ったんだけど……」「でも、オマエにまでわざわざその連絡をしてきたってことは、事務所の方ではその話に信憑性を感じてて、少なくとも俺がまだ生きている可能性があるってオマエに言いたかったからなんだろうな」 冬馬の言葉に、迅は強く頷いてみせる。「そーなんだよ。北沢クンも脅迫の内容とかそーいう話はほとんどしなくって、トーマが生きて帰ってくる可能性があるから、あまり気を落とさないでって、そればっかり言っててさぁ」「まぁ、北沢サンならそうくるだろうな。つーか、ヘタすっと事務所の方からは口止めされてるのに、オマエにだけ連絡してきたのかもしんねェし」 マネージャーの気遣いに、冬馬は思わず苦い笑みを浮かべる。 だが、例えそうだとしても、やはり北沢自身に確信がなければ迅に連絡をするわけがない。 もし本当にそれがただの便乗犯で、冬馬が死亡していた場合、迅の精神的ショックは最初の比ではなくなることなど、あの北沢がわからぬ筈がないのだから。「でも……一体誰がそんな脅迫してんだろ。まさか、トーマが北沢さんをからかうために……?」「オマエねェ…&helli
last updateLast Updated : 2025-11-21
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8.侵入者

 食事を済ませて、迅は早々に出かけていった。 冬馬は二階の寝室に戻り、そこで静かにステレオをかけて本を読んでいたのだが──。 しかし、数分もしないうちに冬馬は本の表紙を閉じてしまった。 考えないようにしても、気持ちは先程の脅迫犯のことを考えてしまう。 そして、考えれば考えるほど、無性に腹が立った。 確かに迅と自分は共謀して、こんなろくでもないコトをやらかしているが。 それに便乗して、公的にも私的にも心痛の極みに立たされている北沢達に被害を及ぼすとは……。 迅の身勝手に端を発し、冬馬の都合でこんな事態を引き起こしてしまったものの、その事態に対する反省というか、回りに及ぼした迷惑の量はそれなりに自覚している。 それが気心の知れているバンドのメンバーや、マネージャーに対する甘えに寄るところが大きいのも事実だが、しかし少なくとも自分達には彼らに甘えるだけの理由も、甘えて良い資格もあるのだ。 ことが発覚すれば世間を騒がせた分の責任はとらなければならないし、それなりの罰も受けなければならないだろう。 それでも、北沢を含めた「自分達を親身になって心配してくれていた面々」は、最後には許してくれることを知っている。 しかし、脅迫犯にそんな権利は一欠片もないのだ。 なにより一番冬馬を腹立たしく感じさせているのは、こうした事態になってしまったにもかかわらず、自分が全く動けないと言う現実だった。 この状況を維持しようとするには、そうするしか選択の余地が無くて、頼りない迅を行かせたが。 やはり、これはもうそんな自分達の都合やエゴを考えている場合ではなくなっているのではないだろうか? いっそ自分も迅と一緒に東京に戻り、ことの真相を全て打ち明けるべきだったのでは──? 医者の診察を受けるのは死ぬほどイヤだが、あまりにも事態が深刻になりすぎている。 冬馬は少し逡巡してからおもむろにベッドを離れると、隣の部屋にある電話機へと向かった。 隣室の電話は、迅が冬馬を監禁するべく一度モジュール線を引き抜かれ、裏手の物置小屋に放
last updateLast Updated : 2025-11-22
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 奇妙な感覚で、冬馬は覚醒した。 誰かに体を撫で回されているような、不快感。 目を開けると、そこには見たこともない男がいた。「て……めェ、誰だ?」「……俺、こんな田舎に住んでるから、トーマに逢うの大変なんだぜ」 ニタリと笑った男の顔に、やはり見覚えはない。「やっぱり、側で見るとサイコーだな。俺ずっと、こんなふうにトーマに触ってみたかったんだよ」「なっ……やめろ、テメェッ!」 胸をスルリと撫で上げられて、冬馬は自分が衣服を纏っていないことに気付かされる。「ココにトーマが滞在するようになって、俺ずっと配達やってたんだぜ。トーマがココにいるのに、テレビじゃいなくなったって大騒ぎしてる。アイツも出入りしてるってのに、一部のマスコミなんかじゃトーマがまるで死んだみたいな話にまでなって」「放……せっ! この、カンチガイ野郎ッ!」 両腕と片足をベッドに拘束されていて、冬馬は殆ど動くことができなかった。 唯一束縛されていないのは、痛みで動かすコトがままならない右足のみ。 しかも、なんとかして一矢報いたいと蹴り込んだ足は、絶妙のタイミングで掴まれ強く握りしめられた。「うあああっ!」「暴れンなよ。俺、トーマのコト助けにきたんだぜ。アイツにペットにされてんだろ? アイツをおびき出すのに苦労したんだぜ。東京にブッ飛んでったから、当分帰ってきやしない。俺とたっぷり楽しんだ後でココから出してやるからさ」「ふ……ざけんなっ!」 どんなに抵抗したくても、今の冬馬にはその術が何もない。 全身を撫で回されて、冬馬はあまりの不快感に吐き気すら感じていた。 ここに監禁され、迅に同じようなことを強要された時以上に、気分が悪い。「テメェ、俺のファンなんだろがッ! なんかこれ、違うだろっ!」「だって、トーマちっとも逢いに来やしねェじゃん。ここいらに住んでんじゃ、ライブにだってなかなか行
last updateLast Updated : 2025-11-23
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