迅が出かけてしばらくすると、急に雨が降り出した。「この土砂降りじゃ、歩いて帰って来るの面倒だなぁ……」 けれど、これはこれで好都合だなと冬馬は思った。 やってきた時と、今出かけていった時の、冬馬の車のタイヤ跡を雨が綺麗に消してくれる。 その上、車を落として戻ってくる迅の姿が、人目に付かずにも済む。 四時間ほど経った頃、全身から水滴をしたたらせた迅が帰ってきた。「トーマ……風呂ぐらい沸かしておいてくれたっていーじゃんか〜」 雨なのか、それとも本人の涙なのか、ビショビショの顔を何とも情けない表情にして迅が泣き言を言う。「なんだよ、オマエ無傷で帰ってきたの? スゲェな」「なに言ってんだよっ! 命がけだったんだぞっ! よくもあんな危ない計画立てるよっ!」「そーしたがったの、オマエじゃんか」 それを言われては、ぐうの音も出ない。 迅は不満そうな顔で黙り込んだ。「風呂の件は、まぁ、悪かったよ。でも、俺はもう二度と、階段から落ちたくねェからな」「階段からって……どうかしたの?」 初めて聞く話に、迅はびっくりしたように顔を上げた。「片足引きずってる人間が、こんなモンと一緒に無事に階下に降りられると思うか?」 右手の先に繋がるパイプ枠を見やってから、冬馬はおもむろに腕を突き出す。「つーワケで、コレ、さっさと外せよ」「え、だって外しちゃったらトーマが……」 言葉の先を冬馬は目線で黙らせる。「テメェなぁ、この場合、主犯はどっちになるんだよ?」「主犯……???」 ものわかりの悪い返事をする迅に向かって、冬馬は笑った顔のままで手招きをした。 そして、ノコノコと側にやってきた迅の襟首をいきなりつかみ、鼻と鼻が触れるほど側に顔を寄せる。「俺が企画してオマエが実行してるってことは、俺がご主人様でオマ
Last Updated : 2025-11-14 Read more