Semua Bab Komplize - 共犯者 -: Bab 11 - Bab 20

33 Bab

3.久遠冬馬

 ゴトゴトと何か重いものを動かす音で、ふと意識を取り戻す。 全身が気怠くて、瞼を押し上げることすら億劫に感じたが、冬馬は目を開いた。 まず目に入ったのは、長身の男の背中。「……なにを。……やってんだ……?」 声を掛けると、迅は驚いたように振り返った。「目ェ、……覚めてたの?」 その問いかけに、冬馬は黙って首を横に振る。「しっかり……起きてんじゃん」 迅はクスクス笑い、それから作業を中断して冬馬の側にやってきた。「だるい?」「……ああ……」 目を閉じて、冬馬はようやくそう答える。 すぐにも意識は、ドロリとした眠りの世界に落ちてしまいそうだった。「ゴメンね……。こんなに頻繁に使っていいシロモノじゃないって、わかってるんだけど……」 迅の指先が、額に触れる。 それから、ゆっくりと髪を撫で、再び額へと戻された。 その少し冷たい感触が、奇妙に心地良いと感じる。「ゴメンね……、俺、そろそろ東京戻らないとマズイから。トーマを残して行くの、スゴク心配なんだけど……」 その後、迅が何を言っているのか冬馬は聞くことができなかった。 真っ暗な空間に意識が飲み込まれていくような錯覚に陥りながら、眠りに落ちる。 微かに、暖かな何かが頬に触れたような気がして、無意識のうちにそれが迅の接吻だと理解していた。
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-11-04
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 冬馬は再び、意識を取り戻した。 先程のように曖昧で中途半端なものではなく、ハッキリと覚醒する。 窓から射し込む陽の光に眼を射られ、咄嗟に冬馬は左手をかざした。「えっ?」 拘束されていた筈の手が自由になっていることに気付き、冬馬は慌てて体を起こそうとした。 ──ガチャンッ! という、激しい音と右手に感じた不自由さに振り返ると、病院で歩行訓練のリハビリに使われているような車付きのパイプ枠が側にあった。 そのパイプの一部に、玩具の手錠で繋がれている右手。 だが、体の拘束箇所はそれだけだった。 掛け布団をめくりあげると、相変わらず全裸のままだ。 気温は、震え上がるほどではないが、全裸で過ごすには少し寒い。 冬馬はそのまま掛け布団を身にまとった。 周りを見回すと、そのパイプ枠の他に室内に増えているものがあった。 先程迅が何か作業をしていたあたりに、テレビが置かれている。 ベッドのヘッド部分にある棚にはリモコンがあり、側に一枚の手紙があった。 几帳面な迅の性格をそのまま表したような、細かい文字。──東京に行ってきます。──食料は、数日置きに持ってきてもらえるように手配してあります。──代金の支払いなどの心配はありませんので、応対には出ないで下さい。──先方にも、声を掛けずに扉の脇のボックスに入れるよう頼んであります。──申しわけないけど、服の用意はありません。──数日で戻りますので、心配しないで下さい。「……ギャグか……?」 読み終わった瞬間、冬馬は思わず呟いていた。 一体、どこの世界に監禁した相手に置き手紙を残し、あげく「心配しないで下さい」と書き置く莫迦がいるのか?『……いや、ココにいるんだっけ』 ハァッと大きなため息をつき、冬馬は脱力したように眉間を押さえた。 迅の真意は別にしても、自分はただここでこうしていても
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-11-05
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「……アイツって、どうしてこう時々極端にマヌケなんだろう……」 目の前の階段を見下ろし、冬馬はため息を吐いた。 体に掛布を巻き付け、しかもこの大荷物。 ついでに、利き足に力を込めると痛みが走る。 この状態で、無事に階下に降りることができるのだろうか? しばらく躊躇したものの、冬馬は諦めたように足を踏み出した。 ここにこうしていても、事態にはなんの変化もない──。 それは一種の、諦めの境地だった。 しかし、細心の注意を払っていたにも関わらず、やはり傷を負っている体は自分の思い通りには動いてくれなかった。「しまったっ!」 と思った時には、もう体は宙に浮いていて……。 自分でも驚くような〝ガラガシャンッ!〟の音とともに、意識も体も階下へと落ちる。 しばしの、沈黙……。「……う、う……」 階段の一番下で、冬馬はうめき声を上げた。「痛……ってえ〜……」 パイプ枠は冬馬の上に乗っていて、それにつなぎ止められている右手は、肩が脱臼しなかったのが不思議なほど、異常な形で背中にねじ上げられている。 それでも、冬馬はしばしの間その格好のままジッとしていた。 ──否。 あまりの痛みに、動き出すことができなかったのだ。 しばらくして、少し痛みがひき始めてから、冬馬は己の上に乗っているパイプ枠を退かし、体を捻って床に足を投げ出し座る格好になった。「……ったく、手間掛けさせるんじゃねェよ!」 それはもう、誰に向かっての悪態か、本人にすら分かっていない。 ただ、苛立つ気分のまま、なにかを言わなければ気が済まなかったのだ。 自分の右手の先に繋がったまま、ゴロリと転がっているパイプ枠を睨み付け、乱暴に
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-11-06
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4.転機

 大した成果も得られず、必要以上に疲れ果ててしまった冬馬は、居間のソファに座りため息をついた。 それが感情から発したものではなく、明らかに体力的な理由で漏れ出ていることに気付き、冬馬は眉根を寄せる。 行為の時に使われたあの薬品によって、自分は自分で思うよりも疲れている──らしい。 動いている時には、刺激の強い足の痛みに紛れて気づかなかったが、こうして落ち着いてみると、全身にズッシリとのしかかってくるような怠さをひしひしと感じた。「……ったく、あのバカ……」 先程とは意味の違う、呆れたようなため息をついて冬馬は無闇に己の髪をかき回す。 苛立ったような態度と吐き捨てるような言葉で、こうして迅を罵ってはいるけれど。 言うほどに迅に対して腹立たしさを感じているわけでもなく──。 ワザとそうした行動にでも出なければ、それこそ戻ってきた迅と何気なく日常会話を交わしかねない。 もっとも、そのことにさえ、冬馬は疑問を抱いていなかった。 迅が、冬馬に対して必要以上に気を使っていることを知っている。 食事の内容にしろ、寝室のテレビにしろ、少しばかりズレてはいるが──。 それらは迅が、冬馬に示した気遣いそのものだ。 強制的な行為ではあるが、性行為にしても迅は最大限の気遣いを示していた。 あの薬品を使うことを、本当のところ迅はあまり望んでいないのだろう。 口では、乱れる冬馬を望んでいると言っていた──。 確かにそれは、多少望んでいる部分もあるだろうが。 あの薬品を使う一番の目的は、──迅が言葉にした通り、冬馬に精神的な逃げ道を用意することなのだろう。 どんなに悪者のフリをしたところで、迅の性格では冬馬を欺けるものではない。 冬馬はもう一度、今度は感情的な理由で深く大きなため息をついた。「俺……なんであんなバカと一緒にバンドやってんだ?」 思わず呟き、冬馬が迅に対する悪態をつこうとした、その時。 ──ガタ
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-11-07
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 が、そこに誰がいるわけでもなく──。 そこには、先程と同じ静寂があった。 必死になって音の原因を探す目が、扉の脇のボックスで止まる。 表と裏に開き戸のついた木箱。 相手の顔を見ることも無く、荷の受け渡しができる。 立ち上がって側に行くと、そこには白い手提げのビニール袋に入った食料品が詰まっていた。 何気なくそれに手を掛けて、冬馬はふと動きを止める。 不意に感じた、人の気配。 咄嗟に冬馬は、息を潜めてしまった。 しばしの沈黙の後、ハッとなる。 もし本当にこの壁の向こうに人がまだいるのなら、自分は助けを求めるべきなのではないだろうか? だが同時に、もうひとつの考えが浮かぶ。 荷を配達に来た人間が、その用事を済ませた後に、なぜその場に止まってこちらの気配を伺う必要があるのか? 冬馬は判断に迷い、またしばしの間、そこでジッと息を詰めていた。 壁の向こうで誰かがこちらの様子を窺っているような気がする。 それは、己が助け出されるという希望よりも、薄気味悪さを感じさせる方が強かった。 しばし迷った末、冬馬はボックスの扉をかなり乱暴な所作で開いた。 中の荷を取り出し、わざと大きな音を立てて扉を閉める。 それから、今度は音を立てぬようにそっと扉を開くと、無理な姿勢も構わずにボックスの中に頭を入れた。 聞こえてきたのは、人の息遣い。 やはり──、そこには誰かが居る。 だが──、ジャリっと音がして、扉の側から足音が離れていく気配を感じた。 冬馬は外側の扉を押して薄く開き、そっと外の様子を覗き見た。 設置されている牛乳配達の箱から、空瓶を取り出して立ち去っていく背中。 その人物は、単に自分の業務を果たしていただけだったのだ。 バイクに跨り走り去る姿が一瞬だけ見えて、後は遠ざかるエンジン音が聞こえる。 頭をボックスから抜き出して、冬馬はホッと安堵の息をつき、それから慌てたように振り返った。「おいっ!」 扉を
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-11-08
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 その後は、いくら待っても外に人の気配を感じることは一度もなかった。 しかし、それは至極当然のことだ。 ログハウスのある場所は、車で走れば開けた街に十分程度でたどり着くが。 徒歩で移動するには、ちょっとしたトレッキングコースよりも斜面がきつい。 だからこそ冬馬や迅のような立場の人間には、理想的な隠れ家でもあった。 人目に付かず、しかし生活に不便をきたさない。 留守にする時には、雇いの管理人がメンテをしてくれる。 引きこもって創作をする時には、麓の商店街にあるマーケットに頼んでおけば、先程のように生活必需品を届けてくれるという寸法だ。 つまり、ここに用事がある者以外は、滅多に近づいてこない場所なのだ。 居間でしばらく、ささやかな期待を持って時間を過ごしてみたが、結局疲れて冬馬は二階の寝室へ戻った。 怪我をした足にパイプ枠を担いで階段登りをするのは、本音を言えばしたくなかったが。 居間のソファでは、体をちゃんと休めることができなかったのだ。 ベッドに戻った冬馬は、体を横たえてテレビをつける。「なぁんか俺、逃げる気なさそうだよなぁ……」 ダラダラとザッピングをしている自分の様子に、思わずそんな気持ちになる。「アイツ、新聞とっとけよ。……せめて、テレビガイドくらい買っとけよな……」 昼間からテレビを見る習慣など、あるわけもなく。 冬馬は、ただ闇雲にリモコンのボタンを押してみた。 その手が、不意に止まる。 画面に自分の顔が映し出されて、咄嗟に手を止めたのだ。 逼迫した口調と表情の女性レポーターが、見慣れた建物──事務所の前に立っている。 そのレポートの内容に、冬馬は唖然となった。 どうやらそれは、自分の失踪ネタらしいのだ。 次々と映し出される、見慣れた景色。 血相を変えて画面を横切るマネージャーの北沢や、理由もわからず呼び出されたらしい表情の他のメンバーらが
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-11-09
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「トーマ、どうしようっ!」 駆け込んできた迅は、そのまま冬馬に飛びかかるように抱きついてきて叫ぶ。「オマエ、東京戻ったんじゃないのかよ?」「戻る途中の車の中で、トーマが失踪したって言って、みんながトーマを捜してるってラジオで聴いて、慌てて戻ってきたんだよっ!」「ああっ?」 至極当たり前のことに今更なにを驚いているのかと、冬馬は思わず間抜けな声で聞き返してしまった。「どうしよう! 警察とかマスコミとか、あんなにいっぱいのヒトに捜されたら、スグに見つかっちゃうよ!」「……だから?」「だから……って、そんなの俺、困るよ!」 ひどく情けない表情で、なおかつひどく真剣な目つきで、迅は冬馬の顔をジッと見上げてくる。「……困る原因作ったの、オマエじゃん」 冬馬の答えに、迅は激しく首を左右に振った。「そりゃあ、確かにそうだけどっ! でも俺、こんな騒ぎになるなんて思ってなかったんだもんっ!」 キッパリ言いきられてしまった台詞に、冬馬は開いた口がふさがらない。 そして、何だか分からないけどとにかく助けて欲しがっている大型犬のような態度で、涙ぐんだ目をジッと冬馬に当て続けている迅の顔をしばらく眺めてから、おもむろに左手を握りしめた。 ボコッ! っと、音がするほどに強く殴った瞬間、迅は。「痛ェッ!」 と言って、額を押さえ蹲った。
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-11-10
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5.共犯者

「酷ェよ、トーマッ! 殴るコトないじゃんかよっ!」「オマエがあんまりバカだから、殴りたくなったんだよっ!」「なんだよ、バカッてっ!」「バカはバカだっ!」 それ以上何かを言おうとする迅を、冬馬は振りかぶった拳で黙らせる。「で、どうすんだよ? 自首して出るのか?」 冬馬の問いかけに、迅は再び首を激しく左右に振った。「なんで俺が警察行かなきゃいけないんだよっ! 俺はただ、トーマが好きでトーマを抱きしめたかっただけじゃんかっ!」 思わず、冬馬はもう一撃、迅を殴る。「痛ェッ!」 迅は先程と同じポーズで、額を押さえた。「相手の都合も訊かずにツッこむのは、世間一般ではフツー犯罪つーんだよっ!」「だって、トーマ気持ちよかったでしょ?」 鬼のような形相で睨まれて、迅は思わず口を噤む。「大体テメェは、監禁なんぞという大それたコト企んどいて、こんな事態も予期してなかったんかいっ!」「もっと時間が掛かると思ってたんだよ。……その間に、トーマが俺のコト忘れられなくなったら、一緒に帰れば良いって思ってた……」「じゃあもう、諦めてやめりゃ良いじゃん。……ムカつくけど、色々考えると面倒くさいから俺は黙っててやるさ」 なんだかもう呆れ果ててしまい、冬馬はその話を打ち切ろうとしたが。 いきなり、殆ど突き飛ばされるかと思うような勢いで、迅に抱きつかれて仰向けに押し倒された。「イヤだっ! トーマを手放すくらいなら、俺、ココでトーマと心中するっ!」「っ……っ!」 いくら柔らかなベッドとはいえ、そんな勢いで突き倒されたらかなりの衝撃がある。 オマケに冬馬は、つい先程階段から転げ落ちたばかりなのだ。 さすがに一瞬、息もできなかった。「もし、トーマが俺を振りきって東京戻ったら、例えトーマが誰にもなんにも言わなかったとしても、トーマを殺して俺も死ぬ」
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-11-11
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 しばらく逡巡した後、迅は両手を冬馬の首にかける。 冬馬はやはり黙したままで、迅の行動を遮る様なことはしなかった。「……う……、うぅ……っ」 口唇を噛みしめ、迅はギュッと目を瞑ったが、両手に力を込めない。「……うわぁっ!」 ブルブルと全身を震わせた後、迅は今度ガバッと身を伏せて泣き出した。「できねェコトを、口に出すんじゃねェよ。カッコワリィな……」 その行動を予想していた冬馬は、ボソリと一言つぶやく。 迅は、ますます大きな声でワアワアと泣きわめいた。「だってっ! だって俺、ホントにトーマを手放すくらいなら死んだ方がマシだけど、でも死ぬのはイヤだよっ! トーマと一緒に、生きてたいよっ!」「勝手なコトばっか言いやがって……」「トーマ! 助けてよーーっ!」 抱きついて、わあわあと泣き続ける迅に、冬馬は最後にとどめの長いため息を吐いた。 本来なら、ココで迅を殴り飛ばしてでも納得させて、事務所に連絡を取るのが筋だろう。 しかし……。 冬馬は、自分の右足に目をやった。 もし本当に折れているのだとしたら、ここを出た時に医者を呼ばれるのは必須だろう。 それは冬馬にとって、究極の選択だった。 しばらく考えてから、冬馬は迅の肩に手を掛ける。「じゃあ、俺が殺してやるよ」「……えっ……?」 顔を上げた迅は、次の瞬間に顔を青ざめさせてバッとそこから飛び退いた。「イヤだよっ! トーマなら絶対にちゃんと俺の息の根止められそうだもんっ! 俺はまだ、全然死にたくないよっ!」「バカ。殺すったって、オマエを殺すワケじゃねェよ」 冬馬はニィッとイタズラっぽく笑うと、迅に向かって手招きをする。 こそこそと
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-11-12
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「カーブの手前で反対車線に入って、そこで運転席から飛び降りるんだよ。あそこは芝生の窪地になってるから、降りるつもりで飛び降りる分にはケガの可能性も少ないだろうしな」 何度か通って覚えている様子を描き、冬馬は同意を求めるように迅を見た。「う……ん、あの道路拡張用にちゃちな綱の張ってあるトコだろ?」「車をコロがす前に綱を外しといて、後で元に戻しておきゃ分からねェしな。事故った車が発見されて、俺がどうも死んだっぽいってことになれば、警察の動きだって今とは全然変わるだろ?」「そうかっ! で、いつ行くの?」 勿論そこへ行ってくれるのは冬馬だろうと決めつけている顔の迅に、冬馬は同じくらい朗らかな笑みを浮かべてみせる。「俺は足がこうだから、車を転がすワケにいかねェだろうが」「えっ?」 迅が表情を曇らせると、冬馬はますます口の端を持ち上げてワザと笑ってみせた。「オマエがやるんだ、バァカ」 もちろんその後、そんな危険で軽業師じみたことをやらされるなんてとんでもないと、迅はだだをこねまくったが。 それができなければ、二人そろって東京に戻るしかないのだと冬馬が言い切ると、諦めて渋々出かけていった。 お気に入りの愛車を潰してしまうのが冬馬には結構な痛手だったが、それでも少なくともそれが潰される瞬間に立ち会うこともなく、そしてそれを実行するのが己ではないというのが、ささやかな慰めになった。
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-11-13
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