All Chapters of Komplize - 共犯者 -: Chapter 11

11 Chapters

3.久遠冬馬

 ゴトゴトと何か重いものを動かす音で、ふと意識を取り戻す。 全身が気怠くて、瞼を押し上げることすら億劫に感じたが、冬馬は目を開いた。 まず目に入ったのは、長身の男の背中。「……なにを。……やってんだ……?」 声を掛けると、迅は驚いたように振り返った。「目ェ、……覚めてたの?」 その問いかけに、冬馬は黙って首を横に振る。「しっかり……起きてんじゃん」 迅はクスクス笑い、それから作業を中断して冬馬の側にやってきた。「だるい?」「……ああ……」 目を閉じて、冬馬はようやくそう答える。 すぐにも意識は、ドロリとした眠りの世界に落ちてしまいそうだった。「ゴメンね……。こんなに頻繁に使っていいシロモノじゃないって、わかってるんだけど……」 迅の指先が、額に触れる。 それから、ゆっくりと髪を撫で、再び額へと戻された。 その少し冷たい感触が、奇妙に心地良いと感じる。「ゴメンね……、俺、そろそろ東京戻らないとマズイから。トーマを残して行くの、スゴク心配なんだけど……」 その後、迅が何を言っているのか冬馬は聞くことができなかった。 真っ暗な空間に意識が飲み込まれていくような錯覚に陥りながら、眠りに落ちる。 微かに、暖かな何かが頬に触れたような気がして、無意識のうちにそれが迅の接吻だと理解していた。
last updateLast Updated : 2025-11-04
Read more
PREV
12
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status