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33 Chapters

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「トーマに触るなぁっ!」 不意に圧迫感から解放され、ビックリして目を開ける。「迅ッ?!」 そこにいる筈のない人物が突然現れたことで、冬馬はますます驚いてしまった。「トーマ、大丈夫ッ?」 杖で男をバシバシと叩いてから、迅は慌てた様子で冬馬の側に寄る。「怪我はない? 犯されなかった?」「なんでそーいう質問になるんだよっ!」 両手の拘束を解きながら、迅は不安気な顔を崩さなかった。「だって、……俺にとってはそれってスゴク大事なコトなんだけど?」「だからオマエは、バカだっつーんだよ……」 思わず呆れ果てたような声になってしまったが、この状況ではそういう心配をされても仕方がないかと、自分で自分がかなり情けなかった。「でも、なんだってオマエがここに?」「ここしばらくの雨の所為で、土砂崩れがあってさ。道が閉鎖されちゃって、戻らざるをえなかったんだよ。連絡しようにも、カミナリで電波切れてるし……」「カミナリ?」「うん、こっちはそうでも無さそうだけど、県境のあたりはひどい降りなんだよ」 迅は、冬馬の戒めを外そうとした。「なんだよコレ、スッゲェ固く結んである……」「痛ッてェよ、ナイフかなんかで切った方が早くないか?」 冬馬の提案に、迅は側にあった果物ナイフを取ると戒め部分にあてがった。「……モジュール線だよ、コレ……。切れるのかなぁ……」「迅、後ろッ!」「えっ?」 振り返った迅は、顔面を杖で殴り飛ばされる。「迅ッ!」 散々叩きのめされた男は怒りを露わにして、倒れ込んだ迅の体を復讐するように松葉杖で殴り続けた。「オマエなんかが触れていい人じゃねェんだぞ、コラァ!」 迅が声も上げずに身を守るように縮こ
last updateLast Updated : 2025-11-24
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「痛……てェ! 放せっ! ちくしょうっ!」 もがく冬馬に、男は無言でのしかかる。 そのまま抵抗もできずに殴られるのかと思っていた冬馬は、予想外の男の行動に咄嗟の対処ができなかった。「おとなしくしてれば、可愛がってやるって言ってんだろ」 股間に手をあてがわれて、全身に鳥肌が立つ。「イヤ……だっ!」 思わず上げた悲鳴は、あまりの情けなさに涙も出ないような、か細く女々しい声だった。「トーマに触るなって言ってんだろっ!」 起きあがった迅が猛烈なタックルを送って、男の体をはじき飛ばす。 体が解放された後も、冬馬は身が竦んでいてロクに動くこともできなかった。 犯されかかった恐怖故か、右足を打ちつけられた痛み故か、もう己にも判断できない。 ようやくの思いで体を起こした冬馬の目の前で、迅は殴り飛ばされた。 他人との殴り合いなどしたことがない迅は、ただ闇雲に相手に向かって行くだけで、自身が繰り出す攻撃は何一つ効を為さずに空振りに終わっている。 そして、男の容赦のない拳を顔面に叩きつけられて、酷い顔になっていた。 それでも、迅は決して諦めることも怯むこともせずに、男に挑み掛かる。 迅がのされてしまっては、冬馬の身に危険が及ぶことがわかっているから。「テメェは、うるせェんだよっ!」 襟を掴み、迅の顔面を何度も殴りつける男に、冬馬は迅の生命の危険を感じた。「やめろってっ!」 立ち上がった瞬間、蹌踉めくほどの痛みが右足に走ったが、冬馬は構わずに男に掴み掛かる。 無理に腕を抑え込み、迅の襟を掴んでいた手をもぎ取ると、突き放された迅はそのまま扉の方へと体を傾き掛けて、側の柱にようやくの思いで縋り付き、何とか倒れ込まずに踏みとどまった。「……くっ……!」 足元のふらつく冬馬では、それ以上男を抑え込むこともできず、振り払われて壁に叩き付けられる。 男はチラリと冬
last updateLast Updated : 2025-11-25
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エピローグ

 迅が目を覚ましたのは、見慣れぬ白い部屋の中だった。 清潔な白衣を着た女性と、心配そうに自分を覗き込む見覚えのある人の顔。「あ……れ? 北沢クン?」「大丈夫か、迅君。ああ良かった、ボクがわかるみたいだ。久遠君、迅君が意識を取り戻したよ」 心底安堵したように破顔した北沢は、顔を上げるとなにやら後ろを向いて誰かに話しかけている。 迅がその視線を追うと、隣のベッドには冬馬が横たわっていた。「トーマ……ッ? ……あ……北沢クン、俺達……」「ああ、うん。大体の事情は久遠君から聞いたよ。迅君、大活躍だったねェ。少し容態が安定したら、警察から事情聴取に来るって言っていたけど、今はとりあえず何も考えないで養生してくれ。ちゃんと事務所で弁護士を立てるし、コレはどう考えたって正当防衛が成り立つ筈だからね」「大活躍……?」「北沢サン、迅はまだ目ェ覚めたばっかで混乱してるし、状況は俺がわかってるから今日はこの辺にしてやってよ」「あ、ああ、それもそうだね。みんなにも君達の無事を伝えなきゃならないし、それじゃあ、ボクはコレで一度引き揚げるよ。明日になったらまた来るから」 ひたすらわけがわからない迅が何かを訊ねる前に冬馬が応対してしまい、北沢はそのまま部屋から出ていってしまった。「……トーマ……どういうこと?」 扉が閉まると同時に、迅は冬馬に振り返る。「……階段からコケ落ちた時に打ち所が悪くて、死ンじまったんだよ」「ええっ! 俺ってば死んでるのっ?」 迅の返事に、冬馬は心底ガッカリした。「なんで死んでるオマエが俺と会話してるんだよっ! 死んだのはあのイッちゃってたカンチガイ野郎だっつーのっ!」「え……? えええっ?!」 迅は、しばらく驚きで声も出ない。
last updateLast Updated : 2025-11-26
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