拓斗とナフィサは完全に言葉を失った。英さんが、このドラマの統括プロデューサーだと。それなら……このプロジェクトで、彼女を降板させられる人間など存在するはずがない!「あなたたち、随分と驚いてるみたいね」英さんが加奈子を連れてこちらへ歩いてきた。二人は本来、席につくためにこちらへ向かっていたのだが、ちょうど彼らの会話を耳にしてしまったのだ。拓斗は一瞬、気まずさのあまり英さんの顔をまともに見られなくなった。英さんの方は過去の遺恨を水に流してくれているというのに、自分たちは厳に彼女を降板させようと圧力をかけていたのだ。あまりにも器が小さすぎる。ナフィサは唇を噛み締めた。「だ、だから何よ。プロデューサーだろうが何だろうが、私たちがお金にものを言わせてこの脚本を丸ごと買い取ってしまえば……」「この脚本は、いくら積まれても売らない」加奈子が冷ややかに遮った。ナフィサは再び驚愕した。「あ、あなた……まさか、あなたがこのドラマの脚本家だって言うの!?」加奈子は鼻で笑った。「それ以外に、私たちがさっきまで硯川監督と何を話し合っていたと思う?」「あなたごときが、どんなくだらないゴミ脚本を書いたって言うのよ!そんなゴミがドラマ化されるはずがないし、硯川監督がメガホンを取るわけがないじゃない!あなたにそんな才能があるわけないわ!」「加奈子さんの才能は本物だ。私はこの脚本にすっかり惚れ込んでしまってね。もし彼女が『撮らせない』と言ったとしても、私の方から泣きついてでも撮らせてもらうつもりだよ」厳がキッパリと断言した。その決定的な一言に、ナフィサは完全に黙り込むしかなかった。彼女は脚本家をゴミ呼ばわりし、プロデューサーの逆鱗に触れ、そして今、監督の機嫌まで完全に損ねてしまったのだ。これで彼女がこのドラマに出演できる可能性はゼロになった。拓斗は今、生まれて初めてと言っていいほどの強烈な羞恥心を感じていた。「……硯川監督、申し訳ない。俺たちの完全なリサーチ不足だった。これ以上皆様の気分を害さないよう、俺とナフィサはこれで失礼させてもらうよ」拓斗はそう言うとナフィサの腕を引き、加奈子を鋭く一瞥した後、逃げるように大股で立ち去った。車に乗り込むなり、ナフィサは怒りに任せて座席をバンバンと殴りつけた。「あいつが何様よ!あんな底辺の
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