こうして目の前の光景を見ていると、遥真の瞳の色がじわりと深くなっていった。伸行は二人の間に漂う不思議な雰囲気を感じ取り、思い切って探るように口を開いた。「久瀬社長、先に柚香さんと飲んで。俺はちょっと電話を取ってくる」「……ああ」遥真は淡々と返した。伸行は周りの人たちに目配せし、全員そっと動きを柔らかくして部屋を退出した。意識がぼんやりしている柚香は、それに気づきもしない。高層部たちが外に出て、個室の扉が閉まったあと、誰かが小声で言った。「……これ、勝手に出てきちゃって大丈夫なんだかね?」伸行は胸の中の予想を少しずつ確信に変えながら答える。「大丈夫だよ」「でも、柚香さんは?」正臣が扉の方を見る。「久瀬社長と二人きりにしておいて……何かあったりしないか?」柚香は見た目が良いし、若い女性だ。遥真の噂も他人づてに聞いたものばかりで、実際どんな人なのかは誰もよく知らない。心配するのも無理はない。「久瀬社長は、そういうことする人じゃないよ」伸行は、関係を断言することもせず、曖昧に言うだけ言った。「ひとまず、みんな解散していいよ。俺はここで待ってる」全員、特に反対もせずに解散した。ただ一人、涼太だけがまだその場に残っていた。柚香を呼んできたのは自分だし、一人で部屋に残してきたと思うとどうしても心配が残る。伸行は涼太に告げる。「君、明日からしばらく、会社には来なくていい」「……え?」涼太は一瞬心臓が縮む。「藤原社長、俺、何か……」「久瀬社長の意向だよ」伸行は淡々と説明する。「この期間は自由に過ごせばいい。遊んでても構わないし、とにかく会社をうろつかないこと。給料はちゃんと振り込まれる」ここまで言われて、その微妙な関係に気づかないなら、ビジネス界で長くやってきた人間としては情けない。涼太の顔は一瞬で明るくなり、そのまま嬉々として帰っていった。広々と豪華な廊下には伸行だけが残る。戻って様子を見に行こうかと一瞬思ったが、遥真の性格を考えれば出しゃばらないほうがいい。そう判断し、結局スマホを取り出して、二人の関係を確認する電話をかけた。個室の中。柚香は四杯目を飲み干し、コトン、と勢いよくグラスを置いた。酔いのせいで抑えていた気持ちが全部あふれ、拗ねたように言い放つ。「飲んだよ」遥真は椅子にもたれ、少しだけ目
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