ある日、会社のトイレで妊娠検査薬を使ってたら、藤堂慎也(とうどう しんや)の秘書に見つかってしまった。その日の夜、慎也が家に押しかけてきた。「何か月だ?」私は、おどおどしながら答えた。「2、2か月……くらいかな……」慎也は歯を食いしばり、吐き捨てるように言った。「堕ろせ!」それを聞いて私は驚いた。「え?」「分かってるだろ。俺は隠し子が大嫌いなんだ!お前と結婚なんてするわけない。だから堕ろせ!」と慎也は更に冷たく言い放った。「はぁ?」あなたの子でもないのに、どうして私が堕ろさないといけないわけ?「堕ろせ!」慎也の冷たい声が、また響いた。「これだけは譲れないんだ、それ以上言わせるなよ」彼はまるで最後の通告でもするかのように言い放った。私は頭が真っ白になった。慎也と知り合って20年、付き合って10年になる。彼は性欲強い方ではあるが、子供に関してはいつも慎重だった。その証拠に彼のコンドームのストックは、私のナプキンよりも多いくらいだ。だから、私たちは一度だって無防備でしたことはなかった。そんな私が、どうやって彼の子を妊娠するんだろう?だが彼は有無を言わさない様子で歯を食いしばりながら、私を追い詰めた。「詩織、今回だけは見逃してやる。その子を堕ろせば、何もなかったことにしてやる。でも、もし従わないなら……俺をハメたヤツがどうなるか、知ってるよな!」この様子だと、彼はどうやら、私がコンドームに何か細工をしたと思っているようだ。私はそんな彼を見て、ふっと鼻で笑ってしまった。「慎也、もしかしたらこの子、あなたの子じゃないかもって思わなかったわけ?」私はここ数日、時々吐き気がして、えずいてしまうことがあった。そこで今日、どうしても我慢できなくて、こっそり妊娠検査薬を買って、会社のトイレで試してみたんだ。結果は、くっきり二本線だった。あまりにも衝撃的で、私は妊娠検査薬を握りしめたままぼーっとしてしまった。そして会社を出てから捨てようと思っていた。なのに、運悪く慎也の新しいお気に入りの秘書、松浦莉奈(まつうら りな)にばったり会ってしまったのだ。彼女は、私が持ってる妊娠検査薬を一目で見つけると、瞳をきらりと光らせた。そんな彼女を見て、私はなんとなくまた面倒なことになりそ
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