騎士なら誰もが憧れるウィンスロープ騎士団への入団は、レダの人生を変えた。まず、「女が騎士なんて」とレダの夢を笑っていた父親がその態度を一変させた。「レダならやれると思っていた」と周りに自慢してまわる父親の姿は、レダを呆れさせた。しかし、街のみんなに囲まれて陽気に酒を飲む父親の姿には、娘として親孝行できたとレダは思っている。ウィンスロープ騎士団の団長は別にいるが、騎士団のトップはアレックス・ウィンスロープ公爵。その強さから「紅蓮の悪魔」と周囲から畏怖される最強の騎士。社交界では、貴族令嬢およびご夫人たちの愛と憧れの詰まった視線を独り占めする貴公子。アレックスは、神が盛大に贔屓したと言われるほど絶世のイケメンである。寡黙なイケメンは、どこか近寄りがたい雰囲気になるのだが、それは表向きの顔。屋敷の使用人や部下である騎士たち相手では、アレックスの態度は柔らかくなる。レダも入団して間もなく、アレックスのプライベートな表情を見て「こんな御顔もなさるのだな」と感心してしまった。あれは『ギャップ萌え』が起きてもおかしくない状況だった。しかし、起きなかった。レダはアレックスの恋人になりたいと思ったことなど、一度もない。母性本能をくすぐるタイプがレダの好みというのもある。しかし、「アレックス様の婚約者ですの」とわざわざ名乗る貴族令嬢が、わざわざレダを名指しして会いにきたときには、アレックスに異性として関わってはいけないとレダの脳内で盛大に警報が鳴った。アレックスの婚約者は、レダに言わせるとヤバイご令嬢だ。スフィア伯爵家ご令嬢であり、世間では『聖女ラシャータ』と呼ばれる女性。アレックスとラシャータは婚約者歴が十年以上である。この国最強の『騎士』と、当代唯一の『聖女』の組み合わせ。まるで三文歌劇のような組み合わせだが、定番といえば定番。ラシャータ本人と会うまで、アレックスがレダのタイプではなかったこともあり、「騎士と聖女なんていい組み合わせかもね」とレダは暢気にそんなことを思っていた。世間的には物語のように定番の組み合わせでも、アレックスはラシャータを蛇蝎の如く嫌っていた。どのくらい嫌いかと言えば、王家主催の夜会の日、絶対にラシャータをエスコートしなければいけないその日を狙って抜き打ちでスタンピードを想定した野営訓練を実施するほどだった。あの
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