グレイブの悲痛な声に、レティーシャは目をパチパチと瞬かせる。「執事長、逆ですよ。閣下のほうが離婚したい……」「坊ちゃまがそんなことを⁉」「……“坊ちゃま”?」可愛らしい呼び名に、レティーシャが首を傾げる。「私は坊ちゃまの小さな頃からウィンスロープ邸にいまして、坊ちゃまのおしめも換えたことがあります」「まあ、そうなのですね」「とても手際が悪うございましたけれど」胸を張るグレイブに、ソフィアがツッコミを入れる。その仲の良さにレティーシャが笑う。「とても元気な赤ちゃんだったのでしょうね」「その通りでございます。私は坊ちゃまたち三兄弟の乳母で、アレク坊ちゃまがご当主様になられたときに侍女長に……いえ、それはどうでもよくて」聞き上手のレティーシャのせいで、話が横にそれていた「旦那様が、離婚したいと言ったのですか?」ソフィアの言葉に「そうだった」とグレイブも我に返り、二人そろってレティーシャに詰め寄る。「いいえ、まだ言われていませんわ」「「まだ?」」「王命で結婚した上に、聖女の力で治ったと思われているのでしょうから言い出しにくいのではないでしょうか」「そんなことはなはず……いえ、それよりも。奥様はどうして旦那様が離縁を望んでいると?」「なんとなく」「なんとなく?」「なんとなくそういうのは肌で感じると、本にありましたわ」それは恋愛上級者のテクニックである。グレイブとソフィアは同時にそう思ったが、流石にそうとは言えない。そして三人の侍女とレダからの「うまくやってくださいね」という圧がつらい。「奥様、旦那様に想い人は……城、にはいません」ここで「想い人はいない」といったのち、明日にでもアレックスが「ずっと好きだった」などと告白した矛盾が生じる。そのための方向転換。急過ぎて、なんか変になった。「まあ、それではどこかのご令嬢? もしかして市井にいらっしゃるの?」「グレイブ、それは本当ですか⁉」レティーシャは楽しそうに声を弾ませ、ソフィアが驚いた声を上げる。なんだか余計ややこしくなったことにグレイブは後悔した。「と、とにかく旦那様が城にいるのは純粋に仕事が理由です」「家に帰りたくなくてお城にいるのではありませんの?」「どんな誤解ですか、帰りたくないなんてとんでもない!」グレイブは全力で否定した。「旦那様にお
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