All Chapters of 幽霊聖女は騎士公爵の愛で生きる : Chapter 51 - Chapter 53

53 Chapters

51.国王の後悔①

「スッキリした顔をしているな」 「……ディル? マリアは?」「ロージーはカリーナと一緒に部屋に戻った。スッキリした顔をしていたよ……ありがとう」 「どうした?」「殿下たちのために秘密を公爵に話したんだろう? 僕が父親だから、ちゃんとお礼を言っておこうと思って」 「それなら俺もお礼を言うべきだな。ディルとマリアのおかげで、俺は父の血を王家から消すことができる」 ファウストの父である先代国王は凡庸な男だった。賢王と呼ばれた先々代国王が善政を敷き、彼の理想とする「百年の安寧が約束された国」を作り上げたからだ。政治も経済も外交も、先々代国王が死んでも全く問題がないように作られたシステム。システムの中で王座に座った先代国王の役割は『後継ぎを作ること』だけだった。先々代国王は、ある意味息子のことを思っていたのだとファイストは思う。特に才覚のない彼が問題なく国を治められるようにしたのだから。先代国王の正妃も、自身の失敗を踏まえて先々代国王が選び抜いた令嬢だった。特にこれといった特徴のない正妃は先代国王のプライドを刺激せず、ほどほどに愛情を求める点も先代国王には丁度良かった。 (しかし、姉上と俺が生まれてしまった)二人の間に生まれた娘、アレックスの母親ヒルデガルドは幼い頃からカリスマ性があった。ヒルデガルド王女がいればこの国は安泰。さすが賢王の孫。ヒルデガルドの名声が、先代国王のプライドを刺激した。自分がいればこの国が安泰、などと言われたことがない。さすが賢王の息子、とも言われたことはない。幸いだったのは、ヒルデガルドが女児であったことだ。この当時は女児は王や貴族家の当主になれなかった。どれだけカリスマ性があっても王にはなれない。それが先代国王の安心材料となった。それから四年後、王妃が第二子を産んだ。待望の王子。先々代国王が遺したシステムの中で彼が与えられていた役割『後継ぎを作ること』が達成すると同時に、ヒルデガルドと同じくカリスマ性のあるファウストを国は歓迎した。ファウスト王子がいればこの国は安泰。さすが賢王の孫。そしてファウストの容姿が先々代国王に似たため――『賢王の再来』と言われ
last updateLast Updated : 2026-01-08
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52.国王の後悔②

フレマン侯爵家の娘たちも並みの女ではない。長女のアンリエッタは隣国で皇太子妃をしている。失踪したフレマン侯爵家の唯一の手掛かりとして当時多くの者がアンリエッタ皇妃に詰め寄ったが、「知っていたらどうするってわけ?」と追い返している。隣国はこちらから戦争をしかけたら確実に負ける超大国である。三女のカリーナは推薦こそマリアローゼットの実家にしてもらったが、その先は平民から王妃の専属侍女にまで実力でのし上がった生粋のたたき上げ。侍女には「カリーナお姉様」といってカリーナを慕う者が多い。城内の情報操作はお手のものとカリーナは日々暗躍している。四女のローゼリアは当時は十歳の子どもだったが、二十七歳になったいまは美魔女の商会長コンスタンヌ・サフィールとして父侯爵の手足となって商会を完璧に運用している。なぜ二十七歳の彼女が美魔女かというと、十七年前にサフィール商会を立てるとき商会長として手続きをしたのは変装したアンリエッタ(当時二十五歳)。だからコンスタンヌ・サフィールの書類上の年齢は四十二歳なのだが、二年前から表立って活躍を始めた彼女は「当時と変わらない若さの美魔女」として評判なのである。 (サフィ……)サフィニアのことを本当に愛していたのだと痛感したのは、女性が抱けなくなったと気づいたとき。自分の意思でサフィニアと別れたものの、「サフィが結婚するまで」とか「サフィが子どもを産むまで」とか未練がましく結婚を先延ばしにしていた。当時は国も次の聖女に夢中だったから、王太子であるファウストに婚約者すらいないことは問題視されなかった。サフィニアがレティーシャ産んで、ようやく踏ん切りがついたと婚約者探しを始めた。王太子の婚約者は未来の王妃。多くの令嬢が積極的にファウストにアプローチし、手っ取り早く既成事実を作ってその座に就こうとする令嬢も多かった。最初は、なんとなくその気にならないという感じだった。国内外から妙齢の姫や貴族令嬢の釣書が届いたが、なんとなく違うなと前向きになれなかった。ズルズルと婚約者探しが長引いている間にサフィニアが亡くなった。その頃には、もしかして自分は女性に興味がないのかもしれないと思っていた。それはそれで拙いのだが、だからとい
last updateLast Updated : 2026-01-09
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53.狐狩りへの誘い①

「とても可愛らしいですね」侍女たちに誘われて犬の飼育場にきたレティーシャは生まれたばかりの子犬たちに目を輝かせた。彼らは狐狩りのときに活躍する猟犬らしいが、子犬の状態では可愛らしさしかない。「たくさん生まれたんですね」 「今年は三匹が子犬を産みましたからね」ロシェットの指すほうには茶色い犬二匹と白い犬が、等間隔に間をあけて寝そべっていた。この三匹が子犬たちの母親らしい。「お父さん犬はどちらにいるのかしら?」あちらに、とロシェットがさした先には一匹の黒い犬。「閣下がお育てしたシャドウで、あの三匹は全員彼のお嫁さんです」 「まあ」「見合いしたときシャドウの他に二匹用意したのですが、三匹ともシャドウにしか興味を示さず……シャドウも満更ではないようだったので三匹をお嫁さんにしたわけです」 「犬は飼い主に似ると言いますものね」バサバサバサッと音がして、そちらを見るとアレックスが呆然と立っていた。何かの確認のためにこちらに来ていたようで、「書類が!」とロイが風に舞う紙を追いかけている。「アレックス様、書類が……」 「書類などどうでもいい」ロイは「重要書類が!」と叫んでいるけれどいいのかと思いつつも目の前のアレックスは深刻な顔をしていたから、『こちらのほうが重要』とロイのことは放っておくことにした。 「俺がシャドウに似ているって?」 「え?」「先ほどそう言っているのが聞こえたのだが……それは誤解というか、なんというか……」 「自業自得」「そう、自業自得……え、自業自得って……ええ?」アレックスから『君が言ったのか?』というどこか絶望した目を向けられたので、レティーシャは首を横に振ってアレックスの後ろを指さした。「……オリー」 「五人も六人も愛人がいそうっていうのは自業自得ではありませんか、お兄様」「増やすな……いや、増やすも何もゼロだから、愛人なんて一人もいないからな!」アレックスの剣幕を「はいはーい」とオリヴィ
last updateLast Updated : 2026-01-10
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