「そう言えば、どうして街歩きなんだ?」アレックスに不意に尋ねられ、その声の近さと言葉にレティーシャは驚いた。「え、あの……」「何か欲しいものがあるのか?」ただ、街を歩いてみたいだけ。歩いたことがないから。そう言おうとして、レティーシャはハッと気づく。ラシャータはよく外出していた。馬車いっぱいに箱や袋を積んで帰ってくる彼女の姿を、レティーシャは頻繁に見かけた。(今さら街歩きなんて、しかもそれを楽しみにしているなんて不信に思われたかも……)「奥様はずっと閣下の看病で忙しかったのですから、久しぶりの外出ですね」レダの言葉に、アレックスが頷く。「そうだったな。すまないな。久しぶりだと、戸惑いもあるだろう」「レアルト通りはあまり貴族のご令嬢が行くような場所ではありませんが、職人の店が軒を連ねていて気さくな者も多いので、見るだけでもかなり楽しめると思いますよ」(大丈夫、みたい……よかったわ)「そういえば、勝手決めてしまったが、レアルト通りでよかったか?」(よかったかと聞かれても……そうだ、小説に似たような会話が……確か……)「アレックス様とお出かけできるならどこでも嬉しいです」「……それなら良かった」ケホッと咳をしたアレックスの顔が赤い。「どうしましょう。やはり先ほどの咳は体調が……ロイ様」「大丈夫ですよー」ロイは呆れた目をレダに向ける。「レダちゃん、いつもこんな感じ?」ロイの言葉にレダが重々しく頷いたが、レティーシャは違うと反論する。「アレックス様のお顔はいつもこんなに赤くありませんわ。やはり風邪を……」「んー……あ、主のほうの髪がぐちゃぐちゃなのでパパッと直しちゃいますね」年の離れた妹がいて、よく面倒をみていたロイは手際よくレティーシャの髪をまとめた。「ありがとうございます。アレックス様、いかがです?」「……可愛い」「か、かわ……」レティーシャの顔が赤くなり、それを見て照れが移ったアレックスの顔が赤くなり……。「主」「ケホッ……準備できたなら行くか」「はい」「奥様、主とのデートを楽しんでくださいね」「……デート、ですか?」ロイの言葉にレティーシャが首を傾げ、レダを見る。「デートですね」「レダ卿がそういうなら『デート』なのですね」(デートなんて本で読んだだけで……街を歩くのも初めてなのに、それがデ
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