「スッキリした顔をしているな」 「……ディル? マリアは?」「ロージーはカリーナと一緒に部屋に戻った。スッキリした顔をしていたよ……ありがとう」 「どうした?」「殿下たちのために秘密を公爵に話したんだろう? 僕が父親だから、ちゃんとお礼を言っておこうと思って」 「それなら俺もお礼を言うべきだな。ディルとマリアのおかげで、俺は父の血を王家から消すことができる」 ファウストの父である先代国王は凡庸な男だった。賢王と呼ばれた先々代国王が善政を敷き、彼の理想とする「百年の安寧が約束された国」を作り上げたからだ。政治も経済も外交も、先々代国王が死んでも全く問題がないように作られたシステム。システムの中で王座に座った先代国王の役割は『後継ぎを作ること』だけだった。先々代国王は、ある意味息子のことを思っていたのだとファイストは思う。特に才覚のない彼が問題なく国を治められるようにしたのだから。先代国王の正妃も、自身の失敗を踏まえて先々代国王が選び抜いた令嬢だった。特にこれといった特徴のない正妃は先代国王のプライドを刺激せず、ほどほどに愛情を求める点も先代国王には丁度良かった。 (しかし、姉上と俺が生まれてしまった)二人の間に生まれた娘、アレックスの母親ヒルデガルドは幼い頃からカリスマ性があった。ヒルデガルド王女がいればこの国は安泰。さすが賢王の孫。ヒルデガルドの名声が、先代国王のプライドを刺激した。自分がいればこの国が安泰、などと言われたことがない。さすが賢王の息子、とも言われたことはない。幸いだったのは、ヒルデガルドが女児であったことだ。この当時は女児は王や貴族家の当主になれなかった。どれだけカリスマ性があっても王にはなれない。それが先代国王の安心材料となった。それから四年後、王妃が第二子を産んだ。待望の王子。先々代国王が遺したシステムの中で彼が与えられていた役割『後継ぎを作ること』が達成すると同時に、ヒルデガルドと同じくカリスマ性のあるファウストを国は歓迎した。ファウスト王子がいればこの国は安泰。さすが賢王の孫。そしてファウストの容姿が先々代国王に似たため――『賢王の再来』と言われ
Last Updated : 2026-01-08 Read more