Todos los capítulos de 隠された愛 ~ 「もう少し」ってあとどれくらい?: Capítulo 111 - Capítulo 120

132 Capítulos

【外伝】1-4

「ヒナとソウ兄さんが離婚したのはカイのせいだったわけか」「ルカ、お前、話を聞いていたのか?」「それなりに?」「ちゃんと聞け」俺の目の前でポッキーくわえながら笑うのは今のところ末っ子のルカ。クリスを知る者は、ルカが一番クリスに似ていると思うだろう。ただこのポヤポヤした雰囲気は、純度100%のクリスのものと違って計算高さが見える。 「イライアス兄さんなら絶対に、離婚はしただろうけれど、ヒナの浮気相手と疑われるような真似はしなかったと思う」なんか分かる気がする。でも、分かったら「兄」として負けた気がする。「俺も何もしていない」「カイは、一緒にいるだけでそれを疑われるんだよ。カイもノアも目が合っただけで女性を妊娠させられそうな雰囲気があるから」ルカはポッキーを勢いよく半分に割る。「カイって難しい男だよね」「なに目線だ、それ」約十歳年下の弟目線ではないぞ、それ。「カイって基本的に女嫌いだろ?」「なんだって?」「無意識か意識的にかは分からないけど、僕から見ると女性を試すようなことばっかりしてる。エミさんだって落とそうとはしているけれどまだ本気ではない。迷ってる。本気でやって落ちたらどうしようって思っているんだろう?」「……そんなことはない」くそっ、返事が遅れた。ルカのぽや~んとした雰囲気の垂れ目の奥で、“してやったり”という光が瞬く。本当に、こういうとこ。タマルさん、どういう子育てをしたんだ? 「こういうところは、ソウ兄さんと似てるなって思う。ヒナもエミさんと同じタイプ。恋愛に慎重というか、臆病な感じ」「まあ、ヒナは自己肯定感が低いからなあ」「カイもだよ」「俺も?」「自己肯定感が低い人って優しい人とか怖い人が多いと思うんだ。自分を隠したいのは一緒、そ
last updateÚltima actualización : 2026-01-20
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【外伝】1-5

「何か、私の顔についていますか?」エミが俺に不機嫌な顔を向ける。「目とか鼻とか」「奇遇ですね。あなたの顔にも目とか鼻とかついていますよ」そう言うとエミは俺が手土産に持ってきたプリンを食べる。冴え冴えとした冷たい雰囲気が少しだけ緩む。こんなもので喜んでくれるなら、と思う。また買ってこようか、とも思う。ルカは、こういうときもっと違うことを感じるのだろうか。 「何か私に聞きたいことがあるのでは?」「何でソウの秘書をやっているんだ?」エミが『今さら?』という表情をする。最近分かったことだが、エミは基本が無表情だが、驚いたりすると意外と言いたいことが顔に出る。「言いませんでしたっけ? 他になり手がいなかったからですよ」「聞いたけれど、思うんだ。エミの性格なら、兄が困っていようと”やりたくないこと”には協力しないんじゃないかってね」「なるほど。確かにそうですね。やりたくなければ、容赦なく見捨てます」一見すると、冷たく突き放している感じ。でも、ルカからもらったフィルターを通すと、真実をトゲトゲで隠しているのが分かる。「秘書、やってみたかったのか?」「……ヘッドハンティングですか?」「そうだと言ったら、俺の秘書になってくれるのか?」「嫌ですよ、即時病院送りなんでしょう?」……これは、強がりとかではなくてマジレスだな。 「いや、全員が病院送りにされたわけではないし」「残りは病院送りしたほうだからですよね」「……ヒナは無事だぞ」「当たり前です。もしそんなことがあれば、私が陽菜さんを私の秘書にしていました」「秘書の秘書って聞いたことないぞ」「聞いたことなくても、うちの藤嶋なら喜んで陽菜さんをそのポジション
last updateÚltima actualización : 2026-01-20
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【外伝】1-6

『ミスター・李』ヒナと一緒に藤嶋建設に入ったところで、受付の女性社員に呼び止められた。俺、名指し。ヒナを見ると、ヒナには肩を竦められた。 『お話が、あるんです』『話……』『秘書の、えっと、女性のほうの黒崎さんのことなんですけれど……』エミのこと?『えっと……』受付の女性社員は困ったように俺とヒナを見比べる。ヒナがいては困る話。信用度は半分以下、というところだろう。人目のないところで二人きりはあらぬ噂が流れる可能性が高い。だから、人通りのあるロビーからは動かない。でも『大切な話をしている』というオーラを出せば人は自然と近寄らなくなる。その技術を活用すれば、人目はあるけれど二人きりという形は整う。 『それで、エミ・クロサキの話とは?』『あの、黒崎さんには婚約者がいたことを知っていますか?』『ああ、知っている』女性社員の顔が、”知っているのにどうして?”という表情になる。だって、過去形だろ?現在形でなければ、問題ないだろう。 『その二人が、どちらも若くして亡くなっていることも?』そうなのか。その情報は、初めて聞いた。ソウも知らないのか?それとも、意図的に隠してた?それなら……いまここで聞きだすのが早いか。 『それは知らない。それで?』どうせ相手の婚約者の家が立派な家で、その家の目を気にして俺は身を引いたほうがいい……とか、そういう結論になるのだろうけれど。『黒崎さんには近づかないほうがいいです。彼女はきっと呪われているんです』『…&helli
last updateÚltima actualización : 2026-01-21
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【外伝】1-7

「説明の前に、これは黒崎家の話であって、日本の政治家の家が全部こうではありませんから誤解しないでくださいね。とりあえず、黒崎家は政治に妄執しているイカレた家なんです」 エミの説明によると、黒崎家には男女二人ずつ、四人の子どもがいる。そしてエミは末っ子で、クロサキは三番目。どちらも長女と長男のスペアという扱いだった。「黒崎家にとって、子どもは家の発展のために尽くすもの。長男が跡を継ぎ、あとは周りを固める。長男に子どもができなければ、二番目の兄が父の進める相手と結婚して子どもを作り、その子を長兄の養子として黒崎家に捧げなければいけなかった。幸いにして長兄には子どもが三人、二番目が生まれた時点で次兄は自由になりました」「用なし、ということか?」「いい方は悪いですが、それで合っています。ただ次兄はご存知の通りあの性格で、白川茉莉から逃がすため海外にいっていたということもあり『ヒャッホイ』と言わんばかりに自由を謳歌していますが」「それで、姉とエミは?」「姉も私も黒崎家の地盤を固めるための道具です。父も兄も家しかみていません。その家の男に嫁ぐ、それだけ。幸いにして姉は最初の婚約者と無事に結婚しました。最初とも二番目とも結婚できなかった私に父が提案したのが、婚約者と婚約者候補の父親です」「はあ?」「本当に”はあ?”の展開です。多分私はそれが嫌だったのでしょう、次兄に相談しましたから」……ちょっと待て。「何で他人事みたいに言っているんだ?」「実際、あの家ではそういう扱いでしたから。姉のスペア、黒崎家のための血の器、みたいな感じですかね」「……日本のサブカルチャーが並みのクオリティじゃない理由が分かった。現実が、気持ち悪すぎる」「そうかもしれませんね。日本のお家制度に圧縮されて搾取されてきた人格が、ある日突然ポンッと線が抜けたように解放されて創作に走っているのかもしれません。実際に私もWeb小説家としてそれなりに名が売れていますし」
last updateÚltima actualización : 2026-01-21
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【外伝】1-8

「ソウ、俺にないものって何だ?」俺の質問にソウはしばらく考えた。面倒臭そうな顔はしているが、なんだかんだとこうやって悩んではくれるのだから、ソウはいい奴だとは思う。ヒナにしたこと、しなかったことは別として。「謙虚さ」――謙虚さ、じゃない?ヒナと同じことを言われた。仲良し、かよ。それにしても、謙虚、ねえ。 謙虚さは多くの文化や哲学で”美徳”とされているが、それが常に正しいとはいえない。他者を尊重する姿勢は美しいが、自己否定や遠慮のし過ぎに繋がる。俺が見る限り、ヒナの”謙虚さ”はマイナスのほうに傾いている気がする。「謙虚さって、あまりいいものな気はしないんだよな」「ないもの聞かれたから答えただけだ。凱に対して要か不要となれば、凱にあったら気持ち悪いなって思うぞ」――謙虚な凱とか、気持ち悪いけどね。また、ヒナと同じことを……仲良しだねえ。 「李社長、もしかして妹から家の話を聞きました?」「それなり、に?」ヤバい、イカれた家だと分かっただけだが、それはクロサキに言っていいか悩むな。クロサキのホームであるわけだし。「キャラ変するのは、やめたほうがいいですよ」「キャラ変って」クロサキの口から出ると違和感のある言葉。「この年までこのキャラできたから、変わるのかと問われたら変わらないんだけどな」「それなら、なぜそんなことをお聞きに?」「んー、ヤキモチ?」俺の言葉に、ソウとクロサキが一緒に首を傾げた。こちらも仲良しだ。「エミはソウにアプローチ中なんだろう?」「アプローチ中ということになっている、だぞ」ソウが嫌そうな顔をする。ソウにその気がないのはこの顔から分かるが――。「誰かが”エミがソウにアプローチしている”と思っているだけで、嫌なんだよな」「意外と束縛の激しいタイプなんだな」「俺も意外だと思っている。好意の反対は無関心っていうだろう、その点、俺は突っかかられているから、エミは多少なりとも俺に好意はあると思うんだよ」「ポジティブだな」ソウは呆れた顔をするが、男女の駆け引きなんてこういうものだろう。好意が例え欠片でも、それを叩いて伸ばして広げていくのが恋愛だと俺は思っている。ヒナとソウを見ると、なおさらそう思う。その好意を育てなくてどうする、と俺は常々思うのだ。「つまり、どうしたいんだ?」「エミが俺に
last updateÚltima actualización : 2026-01-23
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【外伝】2-1

シャワーを浴び終えてリビングに向かい、扉を開けたところでバサッと何かが落ちる音がした。目を向けるとカレンダーが落ちていた。「そう言えば、壁掛けカレンダーを使いはじめたのは陽菜の影響だったっけ」カレンダーに書き込んだ予定を撫でながら、俺は昔を、陽菜と恋人同士だった頃を思い出した。 *あれって、カレンダー?陽菜の部屋で過ごすことに慣れてきたと思った頃、俺は陽菜の部屋の壁にかけられたカレンダーに気づいた。壁掛けカレンダー。年や年度のかわりにカレンダー売り場で目にするくらいで、実際に稼働しているカレンダーを見るのは久しぶりな気がした。書かれているのは本や映画の情報ばかりだから、予定管理ツールとしてメインでないようだが、スマホでスケジュール管理をしている俺からすればかなりアナログな品。「陽菜ってけっこうアナログだよな」「何ですか?」俺の言葉に、床に置かれたエコバッグの中を漁って何かを探していた陽菜が振り返った。「……うん」「え、本当に何ですか?」濡れ髪をまとめ上げているので、項は全開で色っぽい。そして格好が、俺に向けて突き出された形のいい尻……尻を、突き出して……いやらしく、誘われている気がする。どうする?体、正直だな。したばかり、なんだが……。治まったはずの欲が瞬く間に復活した。今までの俺にはなかった経験だ。 セックスに興味はなかった。性欲処理というより、群がる女たちを整理するために必要だからしてきたという感じだった。自らしたいと思うことなどなかった。性欲が生まれれば行為はできるが、一度吐き出せば満足なので一晩に二回以上などになったことはなかった。全部、過去形。自分では淡白なほうだと思っていたが、相手によるのだと分かった。そして、陽菜は無防備にエロい。 「ちょっと……っ!」陽菜に覆いかぶさり、陽菜が覗き込んでいたエコバッグを脇によける。四つん這いになった陽菜の、俺の目の前に無防備に晒された、真っ白な項に口づける。ふわふわした手触りのカーディガンの襟元がたわみ、肌着が見えた。カップ付きの肌着だ。高校時代、これを”手抜き下着”と言っている奴がいた。やるときに女がこれを着けていたら萎える、そう言っていたが、同意しなくて良かった。当時は心底どうでも良い話だったが、改めてみると、いいじゃないか。ホックやワイ
last updateÚltima actualización : 2026-01-24
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【外伝】2-2

「ここ、リビングなのに……」生活感あふれるここで喘ぐ陽菜を思い出す。「電気もつけっ放しで……明るいのに……」薄暗闇で乱れる陽菜も色っぽいが、明るい中だと羞恥で桃色に染まる白い肌が――。「かなりエロい」「蒼さんっ!」思わず口に出た言葉に、陽菜が目を吊り上げた。「猿のようにさかって悪かった」「もうしないって誓ってください」「……」「蒼さっ……うっ!……ケホッ」咳込んだ陽菜の背中を撫でる。「陽菜、喉が枯れているのに無理して喋るな」陽菜がきっと俺を睨む。誰のせいだとその目が言っている。「すまない」「そもそも、今夜はだめって言ったのに」「……そうだったな」「それなのに蒼さんがどうしてもって言うから」確かに、今日は一回だけの約束だった。そう考えると、いつも二回以上していたんだな、俺。「そう言えば、明日は何の用事があるんだ?」「高校の記念式典に少し顔を出してみようか、と」「友達といくのか?」「いいえ。誰かと約束したわけではないので別に行かなくてもいいのですが、蒼さんとこうして過ごしているからか、高校時代が懐かしくなって」「俺?」「言っていませんでしたっけ。私、蒼さんと同じ高校出身なんです」「……聞いていないぞ」「そうでしたか。蒼さんが三年生のとき、私は一年生でした」「……知らなかった」陽菜のような美人が入ってくれば絶対に騒がれたと思うのだが、なんで知らなかった?「私はクラスでも地味なほうでしたし、特待生だったのでほとんど図書室にいましたから」「図書室にいた、一年生……」あの高校で、俺の三年のときの教室から図書室がよく見えた。近くに区立図書館もあったし、蔵書もいまいちだったから、形だけあるような図書室だった。放課後、図書室の窓に人影があって、幽霊だと思ったことを思い出した。もしかして、あれが陽菜だったのか?顔までは見えなかった。ただ真面目を絵に描いたようにきっちりと規定通りに制服を着ていて、長い前髪と眼鏡と野暮ったい感じなのに、すっと伸びた綺麗な姿勢がなんとなくギャップみたいになって印象的だった。……あれが、陽菜?え、顔を見たかった。「陽菜、卒業アルバムを見せてくれ」「嫌ですよ」「本棚だな」「ちょっと、聞いてます?」常に整理整頓されている陽菜の部屋は、どこに何があるか分かりやすくて探し物が楽
last updateÚltima actualización : 2026-01-25
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【外伝】2-3

ピンポンインターホンの電子音に、俺の体がビクッと震えた。何を思い出しているんだ、俺は。 犬のように頭を振って、インターホンのモニターを見る。陽菜だ。……なんで、このタイミングで。しかも、眼鏡。なんで、いつもコンタクトだろう。コンタクトはどうした。 モニター画面の向こうで、陽菜は軽く首を傾げる。風呂か、寝ているとでも思ったのだろうか。少し、悩む顔。インターホンをもう一度押すかどうか悩んでいるようだ。遠慮しないでいいのに。陽菜なら、いつでも構わないのに。 ん?陽菜がしゃがみ込んだと思ったら……海?海の顔がアップで映し出される。唇が動く。パパと言っているようだ。 ピンポン 陽菜が「あ」という顔をする。海がインターホンを押したような。陽菜の、申しわけなさそうな顔に、少しだけ苛立つ。気遣いだと思うが、遠慮されていることに。これが李凱の部屋なら、陽菜は催促するように何度もチャイムを押しただろう。それが想像できるから、苛立ってしまう。 陽菜も、海みたいに俺に遠慮しないでほしい。海が遠慮なく甘えてくれるのは、俺の愛情を疑っていないからだ。そして、陽菜が遠慮するのは俺の愛情を疑っているから。愛情を、疑わないでほしい。でもこれは、言葉でいうことではないのだろう。言葉にしたら、陽菜はもっと遠ざかってしまう。 「いま開ける」『パパッ』『夜分にごめんね』
last updateÚltima actualización : 2026-01-26
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【外伝】2-4

バレンタインデーは、私には無縁とは言わないけれど、縁のないイベントだった。チョコレートを作るどころか、チョコレートを買うことすら、なかった。アンチ・バレンタインという、バレンタインに対して反発があるわけではない。なんというか、タイミングで、縁がなかったイベント。今回も、海にバレンタインデーだと言われなければ、ただの一日で今日は終わっていたはず。でも、海のおかげで、昔を思い出す。バレンタイン縛りで思い出せる思い出があるんだから、バレンタインデーに縁はあった。思い出すのが、蒼とのバレンタインデーということは癪だけどね。思い返せば、私のバレンタインとチョコレートの思い出は蒼ばかりだ。 【恋人未満】*陽菜*「陽菜先輩、お疲れ様でーす」後ろから、後輩の田山さんに声をかけられた。「お疲れ様……どうしたの、それ?」田山さんはチロルチョコのバラエティパックを二つも持っていた。そんなにチョコレート、好きだったっけ?「さっき行ったコンビニで、陳列棚にぶつかって落として、踏んじゃったので……流石に買い取ったんです」地味に痛い出費だ。特に田山さんは、先月念願の圧力鍋を買って金欠だと言っていた。「ねえ、これ、私に買い取らせてもらえない? 田山さんさえよければ、二つとも」私の提案に田山さんが慌てる。「自分のせいですから、気を使わないでください」「ううん。プロジェクトのメンバーへのお礼をまだ用意してなかったから」毎回、私がプロジェクトのリーダーのときは、お礼といってちょっとしたものをプレゼントしている。下心、あり。小規模プロジェクトは参加者集めから大変だから、「また、よろしく」の気持ちを込めている。「今回は納期ギリギリだったでしょう?」「……大変でしたよね」密度が実に濃い数日を思い出したのか、遠い目をしながら田山さんが苦笑いをする。「疲れたときには甘い物、って言うでしょう?」田山さんから買い取るのは、確かに気を使っての提案。だけど、まだプロジェクトの皆に贈るものを用意していないことも本当。買いにいく手間が省けるし、いつもなら缶コーヒーとかだからかえって安上がりだし、ある意味でWin-Winの取り引き。十の位を切り捨てる価格で田山さんから買い取って、贈り物の形式を整える。袋から全部出して、田山さんが踏んでしまって変形したチロルチ
last updateÚltima actualización : 2026-02-01
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【外伝2-5】

【恋人未満】*蒼*朝霧陽菜がチョコレートを配っている。そんな話が、まことしやかに聞こえてきた。朝霧陽菜に、こういうイベントに積極的になるイメージは全くなくて、真偽を確かめてやるって気持ちで設計部のフロアまで降りていったら、噂話は本当だった。でも、噂話の真意というか、意図の半分しか本当でなかったけれど。ただ、プロジェクトのメンバーに慰労の品として渡していたものが、偶然チョコレートだったというだけ。朝霧陽菜のことだ。立ち寄ったコンビニで、たくさん並んでいて、いまチョコレートがブームなのだとか思って買ったに違いない。「わー、ありがとう」「おう///」「嬉しい、嫌されるぅ」「あざっす///」「ありがとうございます。また頑張ります」「え、マジですか///」「チロルチョコ、好き―」「あ、あの、今度、絶対に、お礼します///」いや、マジの奴いるだろう。なんだよ、最後の奴の”お礼”って。朝霧陽菜は「また頑張ろうね」と暢気に笑っている。「お……」「藤嶋さん」朝霧陽菜に声をかけようとしたら、呼び止められた。振り返ると受付の女性社員がいた。「これ、受け取ってください!」……はあ。目の前のこの女性社員は、一見勇気を振り絞っているように見えるが、実に計算高い。自分の小動物のような見た目と、自分の男性社員の人気の高さをよく分かっている。視線だけで周りを見ると、興味深げな視線が俺たちに向いている。ここで受け取れば、明日にでも彼女は俺の恋人のように振舞うだろう。ここで断れば、彼女に恋慕する男たちから俺は鬼か悪魔のように見られるだろう。ああ、もう……仕事をしてくれ。仕事に夢中になってくれ。あそこにいる朝霧陽菜みたいに、「あ、今日はバレンタインか」みたいな顔をしてくれ。なんだよ、あの顔。毒気を抜かれる。「すまない、受け取れない」「……分かりました」おい……。なんで、朝霧陽菜は「すごい」って顔をしているんだ?なにが、凄い?どこに凄いの要素があるんだ?「朝霧、探したぞ……いや、何もしていない」朝霧陽菜が、首を傾げる。「なんで私が聞きたいことが分かったんですか?」「……なんとなくだ」思ったことが顔に出るところは、面白いから黙っておこう。「何かご用ですか?」「……祖母さんが」「翠さんが、なにか?」「……悪い、
last updateÚltima actualización : 2026-02-02
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