Semua Bab 隠された愛 ~ 「もう少し」ってあとどれくらい?: Bab 101 - Bab 110

132 Bab

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白川茉莉のことを、陽菜はまだ引き摺っている。胃もたれするような未消化の感情があるのだという。 白川茉莉はいま警察が管理している精神病院に入院している。入院中の白川茉莉の様子を「面談」という形で何度か見にいっているが、あれだけ俺に固執していたのが嘘のように毎回ぼーっとしているだけで面会時間は終わる。多分こうして様子を見に行っていることからして、俺も白川茉莉に対して未消化の思いがあるのだろう。情ではなくて、きっちり裁かれてほしかったという思い。陽菜があれだけ頑張って自分の心を犠牲にして白川茉莉に罪状をつけようとしていたのに、白川茉莉は兄さんへの暴行という罪さえ理解しないまま、その精神はどこかに行ってしまった。罪状をつけるだけなら、いまの白川茉莉に追加する形でつけられる。でも心のない人形の体にペタペタと貼りつけるようなもの。そんなことは意味がないと、陽菜は公訴を諦めた。ここで公訴しても何も得るものはない。ただSNS上でまた面白おかしく騒がれるだけ。兄弟とアシュフォード家の人たちは陽菜を説得したが、最終的に陽菜にそれを決めさせたのは海の存在だったと思う。騒ぎが落ち着いたからと海を迎えにいった日、陽菜は一人で子ども部屋に入り長い時間を海と二人で過ごした。邪魔はしないでおきましょうという先代アシュフォード夫人の言葉に俺たちは誰も逆らえなかった。 日本に帰ってきて、陽菜は海と、俺は二人とは違う部屋だけれど同じマンションで暮している。陽菜に言った理由は海の世話が楽だから。陽菜が夜まで仕事でも海を俺が保育園に迎えにいって部屋で預かっていれば簡単に迎えに来られる。立地も陽菜の条件に合った部屋を見つけた。部屋の候補はキャメロット日本支社の、蘇と名乗った女性がリストをくれた。蘇さんは不動産関係者に知り合いが多かったらしく、陽菜のあの事件がある少し前から陽菜の条件に合ったマンションを見つけてくれていた。駅から徒歩三分。間取りは居間スペースとは別に独立している部屋が三つ以上。近くにスーパーマーケットと病院がある。厳しい条件だが、蘇さんはよくあんなに部屋の候補を集めたと思う。その中に黒崎のマンションがあったから、丁度いいとそこに決めた。育児は手が多いほうがいいと祖母さんから聞いていた。ただ一点腑に落ちないのは、キャメロットには優秀な社員が
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-01-15
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「そう言えば、いまうちの会社で面白い噂が流れているぞ」ごちそう様でしたと、黒崎妹があっさりと社長室を出たところで李凱は気分転換のように話し始めた。帰れと思ったが、聞けばこのあとルカとキャメロットのシドニー支社にいるノアとビデオ会議をする約束しているらしい。それまでの時間潰しということらしい。 「噂って?」「噂の発信源はナディアなんだが、クロサキが最近まで童貞だったことに驚いて騒いでいる。一部では蒼のために操を守っていたと囁かれている」俺と黒崎は顔を見合わせ、同時にため息がついた。なんでそんな噂が流れたのか想像がついた。 陽菜のところに黒崎が海のオムツを届けた件。恐縮する陽菜の気を和らげようと「オムツを買ったのなんて初めてです」と言ったのだが、幼児を育てている陽菜は“初めて”に敏感だった。本来ならばその初めては黒崎の妻と子どもが得るべきもの。それを奪ったことを後悔し、後悔にさいなまれて俺のところに【黒崎さんの初めてを奪ってしまった】というメッセージを送ってくるくらい動揺していた。同じような文章を友人のナディアに送ったのだろう。俺は黒崎を問い詰めてオムツのことだと分かったが、ナディアにとっては興味深い新情報である。誰かに言いたい。でも陽菜が黒崎と関係を持ったことを言うのは陽菜に申し訳ない。あれ、自分は何を言いたいんだっけ?あ、黒崎が童貞だって意外なことをみんなに教えたかったんだ。「黒崎が脱童貞したんだって、なら問題ないと思ったんだろう」「問題だらけだよ! 変だよ、キャメロットの日本支社」「誰も彼も優秀だぞ」「これだからクリエイティブ系の天才は嫌なんだ。常識までクリエイティブしてる」そう言って怒りながら黒崎も社長室を出ていった。 「そう言えば、夜も時間が合えばヒナのところに行っているんだろ?」「まあな」「好きな女が傍にいて溜まらないか?」「……まあな」クールガイの印象しかなかった李凱だが、この男は意外とこの手の話が好きだ。海外企業はコンプライアンスが厳しいから俺だけになったときに話す。俺相手の暇つぶしは大体こんな話題。おかげで大きな胸よりも色っぽい腰つきのほうが李凱は好きという心底どうでもいい情報も持っている。李凱にアプローチしようとしている女性に売れそうな情報だ。 「凱は?」俺の言葉に李凱は社長室
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-01-15
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「人間って感じがしないんだよ」「は? 人型アンドロイドってことか?」「まあ、それに近い感じかな。ほら、日本ってアニメとかのサブカルが人気だろう?」「ああ、俺も好きだ」へえ、意外。「あれに出てくるでき過ぎ設定の男ってこと」「……どういうことだ?」李凱が見ているジャンルが分からないからたとえ話ができない。説明が難しい。あ、そうだ。「例えるなら、ボンドガールの男版ってことだよ」ああ、と李凱は納得した顔をした。「理想の男ってことか?」……ポジティブだな。 「違う。ボンドガールみたいな女はいるけれど、ボンドガールは現実にはいないだろう?」「あんな女が現実にいてたまるか。ボンドガールは映画のキャラクター、作られた女だぞ」「そうなんだが、その“そんな奴いてたまるか”っていま感じた、でき過ぎな感じのキャラ設定感を『李凱』という人間からも感じるんだよ」「キャラ設定……似たようなことをヒナにも言われたことがあるぞ」「言われたのか」李凱が深く頷く。 「そこに女が千人いれば、その千人がイケメンがいるってそれぞれ友だちを十人呼んで、結果的に一万人くらいの女の視線を独り占めしそうなキャラだって言われた」どの状況でその例えになったのかが気になるが――。「褒められたと思っていたが、もしかして……」「褒められているな、きっと」ゴキブリみたいな例えだと思ったが黙っておいた。 「ヒナがそうだったということは、ソウはその問題をクリアしたんだな?」「……まあ」「協力してくれ」「まあ……俺にできることがあれば」返
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-01-16
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「司は白川百合江とアメリカに行くことになったわ。白川百合江の離婚が決まったの」「白川泰吾が……」 あの白川大老に実質上の後継者と認められ、白川百合江の夫となった白川泰吾。白川泰吾の白川大老に対する忠義は彼の価値観や倫理観の根底にある。彼の行動理念は全て白川大老のため。白川大老が亡くなったあとは白川家。それ以外はどうでもいい。自分自身でさえも“どうでもいい”に一括りにする男だ。白川百合江が、父を含めいろいろな愛人と何をしようと一切気にしなかった。ある意味で言っても無駄だと白川百合江の性格をよく分かっていたのかもしれない。白川泰吾は白川家の敵となる男は白川百合江から遠ざけ、退屈した白川百合江がそういう奴らに近づかないように彼女好みの男を白川百合江に近づかせていた。白川百合江との間に白川茉莉が生まれると、白川百合江と夫婦関係を持たなくなったらしい。義務は果たしたし、「好みではない」「気持ちよくない」と終始自分を罵る相手との性交は白川茉莉一人を設けるのがやっとだったと白川泰吾は平然と俺に話したことがある。 有能どころかかなり頭の切れる男だが、どこか抜けている。そんな白川泰吾がいま執着しているのは煌。煌は兄さん似だと思うが、白川泰吾の目には白川大老によく似た彼のひ孫になるらしい。しかも煌は白川大老の盟友である祖父さんの血も引いている。彼にとっては理想的な白川家の後継者。しかし、これまでの経緯から煌を白川家に迎えて後継者にしたいなどとは言えない状態。だから白川泰吾は――。「白川百合江と離婚の離婚は、新しい妻に娘を産んでもらって煌を婿として迎える計画の一環みたいよ」「……馬鹿馬鹿しい計画だよな」「何かが絡むと男は馬鹿になるのね。力づくで煌を奪おうとしないだけ常識家で助かるわ」「六十代の男が若い嫁さんをもらって子どもを産ませるってことのどこに常識が?」「白
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-01-16
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100

「この前、あの子に聞いたの。あなたにとって白川百合江はなにって」「……答えは?」「初恋の人、だったそうよ」 白川百合江が白川大老に引き取られたとき、父はまだ母と婚約していなかった。だから父は祖父さんに白川百合江との婚約を願い出た。白川百合江の選民思想を知っていた祖母さんはその危うさにその婚約を反対し、俺の母との婚約話をすすめた。父とあの母の婚約の経緯は簡単に聞いていたが、父が白川百合江との結婚を願っていたことは知らなかった。 「白川百合江が司のことを男として好いていないことは分かっていたわ」これは言い訳ね、と祖母さんはため息を吐いた。「白川百合江は幼少期に大人の男性が傍にいなかったからか、あの子は年上の男性に惹かれたの。白川さんもいずれ後継者となる白川百合江を支えるには相応の経験がある男性だと分かっていたから、だから最初の結婚相手も二番目の結婚相手も十歳以上年が離れた人だった」数年間の結婚生活の後に離婚を二回繰り返して、父は白川百合江が最初に結婚した男の当時の年齢と同じ、藤嶋建設の幹部にもなり“相応の経験がある男性”になっていた。「白川百合江の二度目の離婚のあと、いまなら白川百合江と結婚できるのではないかと思った司は香澄さんに離婚を願い出たみたい」「……知らなかった」しかし、父を愛していたあの母はそれを承諾しなかった。離婚には双方の同意が必要だから、あの母が同意しないから離婚できなかった。離婚できなかったから、父は白川百合江に求婚できなかった。手を拱いている間に、白川百合江は白川泰吾と結婚した。三回目の結婚相手である白川泰吾は父と同じ年。白川泰吾が父も認めざるを得ない“相応の経験がある男性”なら良かったが、当時の白川泰吾にあるのは白川大老に対する忠誠心だけで相応の経験などなかった。父は恨んだ。その恨みは離婚を承諾しなかった母へ向かった。あの浮気も、兄さんのことも、全て母への罰だったという。
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-01-17
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101

「祖母さん。この前教えてもらった煮物、陽菜に好評だったよ。ありがとう」「蒼は手先が器用だからか習得が早いわねえ。対抗して陽菜さんもメキメキ料理の腕を上げて。三奈子さんはあの二人は何を目指しているのかと本気で不思議がっていたわよ」何を目指しているのか、か。 何も考えず、反省もせず、単純回答するならばまた陽菜の『夫』になりたい。でも、陽菜が俺を夫にしてくれることはないだろう。俺が嫌いだから、ではないと思う。そういう好き・嫌いとは似ているけれど異なる問題。恋愛小説を読んでいると信頼感と愛情ってイコールの関係だと思える。でも違う。別。陽菜は俺に好意を持ってはいても、信頼はしていない。心と体は別って表現はよく聞くけれど、同じ心でもジャンル違いみたいに感じているだろう。 一度はその信頼をもらっていた。それを失ったのは俺自身。前科があるから、陽菜の俺に対する信頼は明らかにマイナス。 前の俺は陽菜が「俺と結婚している」という事実に甘えて胡坐をかいていた。結婚という制度に甘えていた。俺は陽菜を捕まえて檻に閉じ込め、結婚という鍵を閉めて安心していた。俺と黒崎はこれで陽菜を守っているんだって気になっていた。―― 檻の中で愛情の自給自足させて何が守っているよ!黒崎妹に二人揃って怒られて分かった。黒崎妹の言う通りだった。俺のやっていたことは、俺は愛情からやっていたことでも、陽菜にその愛情は感じられなかった。感じられなければ意味がない。陽菜は閉じ込められた籠の中で、自分は妻だからとか、俺との思い出とかで俺の愛情を再確認していた。愛情の自給自足、黒崎妹に言いたいことはそれだ。白川茉莉が現れて、煌が現れて、陽菜の自給できる愛情はどんどん減っていった。体は生きていても、心を殺してしまったかもしれない。陽菜が
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-01-17
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白川茉莉が精神病院に入り、煌のことは白川家と西山家で親権争いとなった。当時の兄さんはまだリハビリ中だったが、司法に顔が利く西山家は社会的信頼度がとても高いため、「育てられる」と判断された。白川茉莉は「責任をとれない者」と判断されたことも大きかった。白川茉莉が有罪判決を受けただけでは、犯罪歴があるからといって自動的に親権を失うわけではない。親権はそのまま白川茉莉がもち続けた可能性があった。でも、三奈子さんは勝てると見込んだ。西山家と白川家では、司法と金融という畑違いではあるものの、単純に「力」であれば白川家のほうがあった。それでも、三奈子さんが勝てると見込んだのは、西山家側に俺がいたからだった。 煌を養育していたのは俺。白川茉莉は煌と一緒にいたが、育児はしていなかった。煌を養育していたのは三名のナニーであり、そのナニーたちを雇っていたのは俺だった。最初から煌の親権を奪うつもりでいたから、ナニーの勤務記録と業務日誌はいつかの裁判のために事細かく記録してもらい、検診や診療の際は白川茉莉が同行していなかったことを医療機関に証明してもらっていた。ナニーからの定期報告は、煌の保護者が確認することになっていた。その説明を白川茉莉は受け、その書類にはサインしている。しかし、その定期報告にサインをしていたのは俺だ。最初からそういう企てだったこともあるが、「興味はない」と言って白川茉莉も確認を拒否している。 煌の親権は兄さん、西山家が持った。しかし、最低でも煌が兄さんと西山家に慣れるために俺が協力するという条件込みのもの。 社会的に見て、煌を守るために俺がしたことは正しかった、と思う。俺の行動は「煌の養育者」と家庭裁判所も認める内容だった。でも、そのために陽菜の傍にいなかったことは事実。陽菜と煌の両方を、ということは無理だった。 陽菜も、煌に対して俺がやったことは「正しい
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-01-18
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【外伝】1-1

「カ、イ」体が艶めかしく捩らせた女が、俺の名前を呼んだ。男慣れした仕草。顔も、体も文句はない。しかし、飽きてきた。この女に、ではない。どの女でも結局は変わらないことに飽きてきた。 「あっ あんっ。凱、きも、ちっ……」女が俺の名前をまた呼んだ。李凱。俺がつけた、俺の名前。幼い頃は「風草」と呼ばれていた。風に翻弄される惨めな草、そんな名前を早く変えたかった。働ける年齢になると、犯罪以外はどんな仕事でもした。体でも顔でも、使えるものは何でも使った。その結果がいま。立ち寄ったクラブで、多くの男たちの物欲しげな視線を浴びていた女に声をかけたのが二時間ほど前。いま、こうして俺の体の下で喘がせている。でも、これが俺の望んだことだったのか? 「あれから、もう半年か……」半年前のロンドンでの生活を思い出しながら、俺は窓から牧歌的な風景を眺める。いや、牧場ではなく農場なのだが、それでも牧歌でいいのか?しかもあれ、「趣味の家庭菜園」と言われて紹介された、一応はこの家の庭の一部。アメ車みたいなトラクターが走っている。あれを「家庭菜園」でまとめていいかは未だに悩む。でも――。「見られなくなるのは、寂しいかな」ずっと見ているには退屈な風景だけど。 ―― 退屈は神様がくれた試練という。あの男の声が聞こえた気がした。―― 僕に会ったことが、君の人生の何かになればいいと思うよ。クリストファー・アシュフォードは、貴族の系譜に名前を連ねる血筋の男なのに、根無し草のようにふらふらと飄々とした男だった。   *  「凱、検査を受けておいで」「健康診断?」それなら毎年やっていると思いながら、上司、キャメロット・アーキテクツのCEOであるマクシミリアン・キャメロットから俺は書類サイズの封筒を受け取った。中に入っていたのはDNA検査の申込書。「俺の隠し子でも現れたのか?」「確かに凱は隠し子が現れそうな爛れた生活しているな」建築界で「王」と呼ばれるキング・マックスは豪快に笑う。「でも、残念。今回は、お前は子どものほうだ」「は?」「お前の顔。最初見たときも『似てるなー』って思ったんだけど、最近ますます似てるなって思ってさ」「誰と」「俺の友人。お前の年齢と生まれた場所のことを話したら、本人も『僕の子かも』っ
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-01-18
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【外伝】1-2

運転席にいたマッチョから、「アシュフォード邸に用事なら乗せてくよ」と声をかけられた。座席は、運転席を含めて二つ。助手席にも、マッチョ。あれで「YES」といったら、伯父たちはどうするつもりだったんだろう。田舎だから交通ルール緩そうだし、「ちょっと詰めれば三人乗れる」とか言いそう。 「まあ、クリスの隠し子」徒歩で辿り着いたアシュフォード邸。執事のセバスが呼んできた祖母の第一声は、俺の想像の範囲内だったが……。 「マッチョじゃないわ。シュッとして、都会で育った子って感じね。格好いいわ」そうきて……。「ちょっと待ってね、みんな呼んでくるから」そう言って祖母はみんなを呼んだ。俺は集まってきたみんなに自己紹介され、「よろしく」と歓迎された。「えっと、これは何の騒ぎ?」クリスとの初対面は、アシュフォード到着から三時間後。昼寝しているからと祖母が起こさなかったクリス、つまり俺の父親は、みんなに歓迎されていた俺を見て首を傾げた。俺は、アシュフォード邸の料理人自慢のアップルクランブルに、「味変に」と伯母の差し出したカスタードクリームを乗っけているときだった。「君が僕の息子か。ごめんね、僕、知らなくて」そうなのだろうが、それでも放っておかれた子としての憤りが沸き上がっても良かったと思う。俺が、大人になっていたのか?いや、あまりにもクリスの雰囲気がぽやぽやっとしているから気がそがれたに違いない。 「よろしく。この年でパパは恥ずかしいから“お父さん”って呼んでよ」クリスの第一印象は、ふわふわとした男。出会って三ヶ月後、クリスは息を引き取った。あっという間に焼かれて、第一印象は最後まで変わらないまま、煙となってふわふわと天にのぼっていった。出会ったとき、クリスの余命は一ヶ月だった。それから三ヶ月。祖母は「三ヶ月も生きた」と言っていたが、俺が思い返すと「たった三ヶ月」。 何となく何もする気がなくて、クリスと過ごした三か月間と同じ長さの三ヶ月間を、クリスの遺品整理を手伝ったり、伯父たちと野菜作りとかをして、気ままなに過ごしてみた。そんなときだった。「ねえ、これで他の隠し子も見つかるんじゃないかしら」クリスの本棚で伯母が見つけた手帳。中に書かれていたのは、漢字や平仮名。クリスが書いたものというより、いろいろな人間が書い
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-01-19
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【外伝】1-3

「それで、妹を見つけたの?」「正確には妹候補、な」そう答えたあと、俺は一拍置いた。 「祖母に確認してもらったところ、若い頃の自分に似ている気がするとは言っているが……」「え、なに? そんなに深刻な問題が?」「アシュフォードには長らく女が生まれていないらしくて……」「ああ、そうだったっけ。つまり、信じられないというわけか」「いや。このヒナ・アサギリがどうか孫であるようにって、祖父とクリスの墓に毎日お参りに行っているらしい」親友であり、上司でもあるアーサー・キャメロットが笑った。 会社を一年間ほど休んでいたら、その間はリモートで働いていたから厳密には「休み」ではないが、復帰早々にCEOがマックスから息子のアーサーに代わった。仕事の忙しさと、それを心底楽しんでいたことが原因で、マックスは二度結婚に失敗している。そして子どもは二番目の妻が産んだアーサーのみ。俺をキッカケに交流を再開したクリスの、家族たくさん&田舎ライフを大いに羨ましがったマックスは、仕事をやめて、再婚して、田舎に移住した。父親がかなり年をとってからの子であるアーサーにしてみたら、マックスには持病もあったことだし、田舎でのんびり過ごしてほしいとのこと。再婚した三番目の妻は、最初の妻。マックスはアーサーの母親と浮気し、それが原因で最初の妻と離婚したと聞いていた。「父さんが未練たらたらなのは知っていたしね」と、アーサーは笑っていた。 「妹、ね」「嬉しくないの?」「どんな女か分からないからな」調査員からの報告書を見れば、ヒナ・アサギリが真面目な努力家だと分かる。「何が不満なの?」「結婚相手がな」「早速ヤキモチ? まだ妹候補なのに」「そうじゃない……と思うが、ヒナは結婚しているのに、なぜか周囲には秘密にしている」「勤め先の御曹司だからじゃない? 目立ちたくないんだよ、ソウ・フジシマって僕も時々名前を聞くし」「へえ」「フジシマの御曹司でなければスカウトしてたよ。優秀な男で、この容姿。やっかまれるのが嫌というのは、普通の感覚だと思うよ」「面倒だな。どうコンタクトをとればいいのか」結婚しているなら、俺が変に近づいて誤解を招いて、妹(仮)の夫婦仲に亀裂を入れるような真似をしたくない。結婚していないならしていないで、俺が近づいて変な勘違いを妹(仮)にされるという
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