白川茉莉のことを、陽菜はまだ引き摺っている。胃もたれするような未消化の感情があるのだという。 白川茉莉はいま警察が管理している精神病院に入院している。入院中の白川茉莉の様子を「面談」という形で何度か見にいっているが、あれだけ俺に固執していたのが嘘のように毎回ぼーっとしているだけで面会時間は終わる。多分こうして様子を見に行っていることからして、俺も白川茉莉に対して未消化の思いがあるのだろう。情ではなくて、きっちり裁かれてほしかったという思い。陽菜があれだけ頑張って自分の心を犠牲にして白川茉莉に罪状をつけようとしていたのに、白川茉莉は兄さんへの暴行という罪さえ理解しないまま、その精神はどこかに行ってしまった。罪状をつけるだけなら、いまの白川茉莉に追加する形でつけられる。でも心のない人形の体にペタペタと貼りつけるようなもの。そんなことは意味がないと、陽菜は公訴を諦めた。ここで公訴しても何も得るものはない。ただSNS上でまた面白おかしく騒がれるだけ。兄弟とアシュフォード家の人たちは陽菜を説得したが、最終的に陽菜にそれを決めさせたのは海の存在だったと思う。騒ぎが落ち着いたからと海を迎えにいった日、陽菜は一人で子ども部屋に入り長い時間を海と二人で過ごした。邪魔はしないでおきましょうという先代アシュフォード夫人の言葉に俺たちは誰も逆らえなかった。 日本に帰ってきて、陽菜は海と、俺は二人とは違う部屋だけれど同じマンションで暮している。陽菜に言った理由は海の世話が楽だから。陽菜が夜まで仕事でも海を俺が保育園に迎えにいって部屋で預かっていれば簡単に迎えに来られる。立地も陽菜の条件に合った部屋を見つけた。部屋の候補はキャメロット日本支社の、蘇と名乗った女性がリストをくれた。蘇さんは不動産関係者に知り合いが多かったらしく、陽菜のあの事件がある少し前から陽菜の条件に合ったマンションを見つけてくれていた。駅から徒歩三分。間取りは居間スペースとは別に独立している部屋が三つ以上。近くにスーパーマーケットと病院がある。厳しい条件だが、蘇さんはよくあんなに部屋の候補を集めたと思う。その中に黒崎のマンションがあったから、丁度いいとそこに決めた。育児は手が多いほうがいいと祖母さんから聞いていた。ただ一点腑に落ちないのは、キャメロットには優秀な社員が
Terakhir Diperbarui : 2026-01-15 Baca selengkapnya