Lahat ng Kabanata ng 隠された愛 ~ 「もう少し」ってあとどれくらい?: Kabanata 91 - Kabanata 100

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病院にいる白川茉莉を見れば満足するかもしれないとも思った。だから面会の許可をとって、病院に行った。行ってよかったかというと、そんなことはなかった。 ―― 安心してください。白川さんが社会に出ることはありません。病院のスタッフにはそう言われたけれど、嬉しくとも何ともなかった。私は安心が欲しかったわけではないから。 白川茉莉がいる病院を見て落ち込みもした。罪人として収容されているに、白川茉莉のいる病院はきれいで清らかだった。病院だから清潔感は大事だと分かるけれど、全然惨めな環境ではなかった。深層の令嬢、その白川茉莉のイメージそのものだった。現代の日本でネズミが駆け回る地下牢やじめじめした座敷牢に入るなんてことはない。それは分かっていた。でも、白川茉莉のいた病院はあまりにきれいだから入口で「罪を償うって何?」と思った。この時点で会うのはやめようかと悩んだ。でも、せっかく来たのだから勿体ないという貧乏性が災いした。根性で私は建物の中に入った。 白川茉莉に会って、良かったこともある。私が案内されたのは、厚い透明な板で仕切られた部屋。刑事ドラマのセットのような面会室だったけれど、こちらとあちらが明確に分かれていて、透明な板の向こうは「罪人」とか「罪を裁かれた者」という感じだった。白川茉莉はあちら側にいる。そのことが感じられたことはよかった。 事前に面会許可を取っていたけれど、結構待たされた。待たされたけれど、これも良かった。白川茉莉は待たないと会えない存在。あちら側の時間軸は違う別世界のように感じられた。白川茉莉は私に会うのに時間がかかる。時間をかけないとこちら側、外にいる私には会えないということが遮断されたあちら側の世界にいると感じられた。 白川茉莉は女性スタッフ二人に挟まれる形できた。やせ細って髪はボサボサ。暴れたのだろうかと思った。白川茉莉は普段はぼんやりとしているが、時々狂ったように暴れ出すという。暴れ終わって脱力したその姿は、幽鬼がいるならこんな感じだろうかと思うような姿だった。スタッフはこういう患者に慣れていた。それが分かる動きで、二人は白川茉莉を手早く椅子に座らせた。他人を好き勝手に動かしてきた白川茉莉は、今度は好き勝手に動かされる立場になった。それを見れたことも良かった。スタッフの
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白川茉莉が精神病院に入ったことで、良かったことは一つだけある。白川茉莉は「責任をとれない者」と判断されたから、あの子どもの親権は蓮さんが持つことができた。当時の蓮さんはまだリハビリ中だったけれど、西山家の社会的信頼度が蓮さんの単独真剣の取得の後押しになったと三奈子さんから聞いた。 白川茉莉が有罪判決を受けただけでは、親権はそのまま白川茉莉がもった可能性があるらしい。犯罪歴があるからといって自動的に親権を失うわけではないから。もちろんその場合でも三奈子さんは家庭裁判所に親権者変更の申し立てをしたそうだけれど。勝てる見込みもあったみたい。あの子を実質養育していたのは蒼だったから。白川茉莉があの子の育児に全く関与していなかった。あの子の“保護者”として、蒼はあの子の養育環境を整えていた。ナニーを雇ったのは蒼で、ナニーから定期報告を受けて確認の署名をしてきたのは蒼。確認の署名は白川茉莉にも送られていた。でも白川茉莉は一度も確認の署名をしたことはなかった。 あの子を守るために蒼がしたことは正しい、と思う。蒼の行動はあの子の養育者であると第三者機関もきちんと認めるものだった。でも、そのために私の傍にいてくれなかったことも事実。穿った見方だと分かっていても、私を放っておいたからあの子を養育できたんじゃないのかって思ってしまう。 あの子のことを考えると、白川茉莉以上にいろいろな感情が渦巻く。蒼のやったことは大人として正しいと思う。でも、それなら私ってなんだろう?蒼の正しさが証明されるたびに私の「妻」としての存在意義が薄らぐ。足元がグラグラして、感情が沸騰する。キーッと発散させれば落ち着くのだろうか。でも舞い戻ってくるに違いない。グラグラする感情。ふつふつ沸く感情。どれも消化の仕方が分からない感情。 気づけばいつも苦い思い。 振り返ると、この苦みは蒼が結婚を隠したいといったところからあった。でもこのときは苦みを飲み込めた。「もう少し」を信じられたから。蒼への不信感と苦みは比例した。あの子が現れて苦いのが一気に膨らんで、飲み込めなくなったから離婚を申し出た。飲み込めない苦みに苦しんだ。でも、いま考えるとその苦しみも愛みたいなことを考えていたのかな。妊娠するまで、なんだかんだと苦みを飲み込んでいた。苦しくて
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そもそも好意とは何か。好意は感情なので、したか、しないかみたいに傍目には分からない。好意を伴った行動?例えばデート。デートだという意図があって誘ったら、浮気。でも、そもそも、デートって何?一般的な定義なら、お互いに好意や関心を持つ二人が共に時間を過ごすために約束して会うことになるだろう。デートと定義するには相互性、つまりどちらが一方だけが好意を持っている状態は成立しなくなる。でも浮気かどうかの判断でいったら?明らかに好意もしくは行為に準ずる感情を持っている相手と夫もしくは恋人が一緒にいたら?よくある「ただの○○だよ」というやつ。夫もしくは恋人にその気はなくても、その気はあると疑わしき相手と一緒にいたら嬉しくはない。 私はこの「嬉しくない」が浮気のラインじゃないかと思っている。本人たちが何と言おうが、真実がどうだろうが、「嬉しくない」と思ったら浮気。そもそも論、浮気という言葉がおかしい。浮ついた気分って、浮気した側の主張になっている。俺は浮ついていないからあれは浮気じゃない、が罷り通る表現。逆だ。浮気かどうかは「したほう」の判断ではなく、「されたほう」の感情を優先すべき! ……ふう、落ち着こう。 蒼はいま、私と海のためにせっせと私たちのところに通ってくる。その姿はわき目も振らずに必死。 藤嶋建設のロビーでの白川茉莉とのガチンコ勝負の結果、蒼は独身だと周囲に知れた。白川茉莉ともなんともない。別れた私に未練がある風には思われているが、事実だけを見れば蒼は独身。チャンスだと思わないわけがない。純粋な善意なのか、それとも蒼寄りだから私に発破をかけているのかは分からないけれど、藤嶋建設での蒼の様子をルカがよく報告してくる。誰それに今日は言い寄られていました、って。スパイとしてルカの藤嶋建設への就職を応援したわけではないのに、スパイを送り込んだ気になる。ルカもまた、素直な気性だからか凱とアーサーの悪影響を受けてスパイごっこを楽しんでいる節がある。蒼に言い寄っていた「誰それ」が、どこの部署の何さんで「年齢は……」「趣味は……」と情報が実に細かい。仕事しろと思う反面、「若いな」とか「蒼と気が合いそう」とか情報を活用しちゃっているから何とも言えない。 蒼が、わき目など振っていないことは分かる。凱など呆れて「陽菜
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海を祖母さんのところに送り届けてから会社にいく。「おはようございます」上に向かうエレベータを待つ間、何人かと挨拶を交わしたあとに社長室に向かう。正確にはCEO室なのだろうが、昔から「社長室」と呼んでいたため今はまだ社長室と呼んでしまう。   *  父から代表取締役の座を継いだ。父に呼ばれて退任の意思を聞き、取締役会の決議が開かれて選任された。もともと後継者として育成されており、売上拡大、組織改革、海外展開など実績を積んできた。白川茉莉のことがあって父からその座を奪うと決めてからは他の取締役や株主などに積極的に関ってきたと自負していた。でも実際に代表取締になったとき、あまりにあっさりしていて驚いた。これまでの父の妨害は何だったのか、と。 俺から見る限り、父は藤嶋建設の仕事に特に興味はないようだった。祖父から継いだから。俺が継ぐまで。そんな感じの中継であることをあまり隠してもいなかった。だから今まで通りの藤嶋建設を継ぐなら、父はあっさりと俺に代表取締役の座を譲ったと思う。妨害したのは俺が取引先の銀行を増やしたから。メインバンク制により日本企業には特定の銀行が資金調達・経営支援・人事介入まで担う構造があった。藤嶋建設は長らく白川家の銀行をメインバンクにし、融資を通じて白川家は藤嶋建設に影響力を持ち、銀行からの出向者が取締役や監査役に就任していた。白川家の直系である白川百合江と白川茉莉の意向に逆らえない空気はこうしてできた。俺は設備投資の融資を他行に依頼し、手形決済を別の銀行に切り替えるなどして取引銀行を増やす。。白川家の息のかかった取締役も任期満了や高齢化を理由に、社外取締役や中立的な人材の登用する。藤嶋建設と白川家の蜜月関係を解消する提言に白川系の取締役はもちろん他の取締役も難色を示した。彼らにも父自身が自分を中継ぎの代表取締役であると思っていることは分かっただろうが、白川家が関わると理屈なく強硬な姿勢を見せることが分かっていた。また本人にやる気はなくても、やってきた経験はある。経験による信頼もある。俺を代表取締役にするにはまだ早いという空気があったし、白川家との蜜月関係を解消するための大規模な構造改革を早急に進めようとする俺の姿勢は彼らに「若さ」や「未熟」と取られた。 一進一退の攻防戦だったが、白川百合
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病院は違うが白川百合江は精神病院に入院した。社長をやめた父は白川百合江に付き添っていた。取締役会の決議が開かれる前夜、俺は白川百合江の病室に行った。なんで行ったのかは今も分からない。父が何のために会社を、そして俺を、全てを捨てたのか。それを確認したかったのかもしれない。 ―― どなた?白川百合江は俺を見て首を傾げた。何も知らない、無垢な、まるで少女のような微笑みだった。記憶を失っているのか。現実から逃げているのか。人の心は分からないが、父にとってはそれでも白川百合江がいいらしい。 いま二人は箱根にある白川家の別邸でひっそりと生活している。二人の間に婚姻関係はない。父はまだ母と結婚しているし、白川百合江とその夫も離婚していない。それでも二人は一緒にいる。父の中に俺はいない。俺だけ父を追って馬鹿みたいだと思ったから、俺は代表取締役になると肩書きをCEOに変えた。海外ではCEOのほうが通じやすい。国際的な信頼感を得やすい。そんな理由を並べたが、父と同じ『社長』になりたくなかっただけ。今はまだ社長室と呼んでいるから、俺は父の影から完全に出きっていないのだろう。でもいつかは……CEO室は変だな。CEO Office?元社長室だけ英語?   *  「なぜここにいる?」部屋に入ると李凱がいた。「土産を渡しにきた」陽菜から李凱は出張中だと聞いてはいた。どうやら戻ったその足でここに来たらしい。「社長、おはようございます」「二人揃って朝からよくそんな甘いものを食べられるな」李凱と俺の第二秘書である黒崎妹、黒崎咲の手には俺の拳くらいの大きさのシュークリームがある。大きな口を開けて頬張る二人は実に楽しそうだし、まだ就業時間前だから何をしていてくれても構わないのだが――俺の部屋なのに身の置き場に困る。あまり得意ではない甘い匂いのせい。そして、この二人の甘い雰囲気のせい。いや、甘いのは李凱だけで黒崎妹は通常運転か。 ―― 凱は咲さんに興味があるっぽいのよね。―― 凱は咲に興味津々だよね。陽菜、ルカ、これは「興味がある」でも「ぽい」でもない。これは確実に惚れている。 「まるで給餌行動だな」実妹が明け透けな求愛行動を目の前でされている。兄である黒崎は俺より前にこの部屋にいたが、俺以上に身の
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「忘れてた」 そう言って李凱が鞄から出し、俺の机の上に置いたのは……計画書? 「次にうちが狙っている仕事なんだけど、藤嶋建設と協力したほうが勝率が上がりそうだから誘いにきた」 どうやらお土産以外にも用事があったらしい。 小学生が遊びに誘うような口調だが、誘っているのは……莫大な利益となる大プロジェクト。 軽いノリに戸惑うが、申し出を受けない理由はない。 陽菜と仕事ができるかもしれないし。 陽菜だってルカに声をかければ一緒の仕事を喜ぶだろう。  「陽菜は他の仕事で手一杯だから今回は俺が担当するよ」 「あ、そう」 やる気が六割くらい落ちた。 「あからさまだなあ。仕事くらいなんだよ、今朝だって陽菜に会ったんだろう?」 「まあな」 「パートタイムダディしてるねえ」 俺と陽菜は離婚した。 海の親権は陽菜が持つことになったが、離婚する前に海の出生届を出すことを陽菜が受け入れてくれたから海の戸籍に『認知』という言葉を残さずにすんだ。 嫡出子と非嫡出子を区別しないように法整備は進んでいるけれど、人間の心情は簡単に割り切れず、非嫡出子には「愛人の子」というイメージがあるから差別は避けられない。 認知手続きについて調べたら、少々面倒そうだった。 黒崎がTO DOリストのように認知手続きをまとめてくれて、それは陽菜の説得にとても役立った。 しかし、実際にやってみると面倒臭かった。 陽菜の性格が一度やると決めた以上は最後までやり通すタイプでよかった。 当人同士が良ければいいじゃないかと黒崎に愚痴ったら、拗れに拗れて俺を夫婦喧嘩に巻き込んだお前がいう台詞じゃないと怒られた。 陽菜のパスポートが『朝霧陽菜』に戻るのを待って俺は彼女とイギリスに行った。 彼女の父親の生家であるというアシュフォード家では総出の歓迎を受けた。 これから戦でも始まるのかのような敵意がずらっと並んだものを歓迎と言えればだけど。 俺はアシュフォードの皆さんにDV夫だと思われていた。 否定はしなかった。 陽菜を閉じ込めていたのは事実だから。 海との対面は、全身を槍で刺されるような感覚を味わいながらだった。 海を見た瞬間、全身をブスブス刺す感覚は消えた。 こんな可愛いものがこの世にいていいのかと思った。 目に入れて持ち運びたいほどの可愛さだったが、目に入れるのは不
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兄さんは長く昏睡状態にあったため動くことはもちろん、意思疎通をすることでさえリハビリが必要だった。でも意識は明瞭で周囲を認識できていること、そして判断力や理解力などの認知機能に問題がないことが確認された。この頃俺は日本に戻り、代表取締役になるべく行動していた。陽菜はあの男たちを公訴する準備をしていた。 あの男たちは戸田刑事への公務執行妨害で逮捕された。公務執行妨害では一時的な足止め。だから陽菜は急いで彼らを訴える準備を始めたが、余罪があるかもしれないからと西山さんがストップをかけた。西山さんの予想通り、別の暴行事件で再逮捕され執行猶予なしで三年の懲役刑になった。ここまで俺は、西山さんは陽菜が傷つくことがないように、つまり陽菜に公訴を見送らせるためにそんなことをしたのだと思った。でも――。 ――これで共犯者は動くわ。そうすれば白川茉莉さんまでの太い線ができる。――事件のことを陽菜さんが沈黙しても白川茉莉がSNS上で吹聴するわよ。西山さんも祖母さんも陽菜があの男たちを公訴する前提で動いていた。アシュフォード家も日本と一緒、男性陣は陽菜の公訴を反対し、女性陣は先手必勝と言わんばかり。――こういう女性は24時間主人公じゃなきゃ嫌なのよ。アシュフォード夫人のこの一言は名言だった。 喧嘩は派手に、と陽菜は白川茉莉が得意とするSNSを合戦の舞台に選んだ。白川茉莉を煽れと陽菜を煽るご婦人方には腰が引けた。これが性差かと思ったが祖父さんはそれを見て満足気に頷いていて、李凱と共に男としての経験値の少なさを思い知った。陽菜はアドバイスに従ってストーリーを仕立ててSNSに投稿した。――いつの世も、世界中のどこでも、お姫様やご令嬢に勝てるのは『シンデレラ』よ。分かる気はする。陽菜はすでにSNS上で注目されていた。他でもない白川茉莉によって。SNS上で『朝霧陽菜』は白川茉莉の愛する『藤嶋蒼』を体で誘惑する悪女、あの李凱と二股をかける毒婦となっていた。悪女と毒婦。そんな煽り文句の効果で白川茉莉の投稿のコメント欄には『朝霧陽菜』へのヘイト、悪口雑言がずらっと並んだ。陽菜たちはそれを狙っていた。陽菜と李凱はクリストファー・アシュフォードの写真を両側から持つ写真をSNS上に投稿。その写真には【私たちの父親】という文章が添えられた。騒ぎにな
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二人兄妹が五人兄弟になったというSNSは反響を呼んだ。「捏造は罪、妄想を煽るのは商売」というアシュフォード夫人の名言その二の通り、陽菜たちをネタにした妄想は四方八方に飛び散った。 このあとすぐ、あの男たちが逮捕されたことがSNS上にあがった。婦女暴行した過去もあるというところから陽菜も暴行された一人だ囁かれた。白川茉莉の仕業だろうが証拠はないし、そんな投稿がされると注目されて『朝霧陽菜』の新たなスキャンダルはすぐに大騒ぎになった。『朝霧陽菜』について好き勝手な投稿、コメントが相次いだ。俺たちが一番懸念していたことだった。陽菜は覚悟していたから大丈夫と言っていたけれど、日に日に沈んでいった。 取材と称した輩にも追い回されていた。俺たちは陽菜に警護をつけたが、体は守れても心は守れない。陽菜は精神的に披露していって、李凱が命令という形でリモートワークをするように陽菜に言った。ホテルに閉じ込めたからと言っても何の解決にもならない。青山のマンションに閉じ込めて物事を解決しようとしていた俺が言うなって感じだけれど、その反省があったから俺は毎日陽菜のホテルに行った。陽菜は「また来たの」と言いつつも、陽菜は少しだけ嬉しそうな顔もしてくれた。  ―― 藤嶋建設がバズってる。黒崎の報告によると、会社の正面ロビーで騒ぎが起きていた。うちの女性社員、陽菜の後輩の田山が白川茉莉とその友人たちの話をSNS上でライブ配信していた。《この女を押さえて》白川茉莉の冷たい声、そして田山の悲鳴。あの日の陽菜の姿が重なり、俺は急いでロビーに向かった。黒崎が連絡したのか、ロビーには警備員がいたが相手が白川茉莉だったことで躊躇していた。どう見ても加害者は白川茉莉であり、田山は両側を白川茉莉の取り巻きに掴まれていて、誰が見ても一方的なリンチだった。それなのに白川茉莉を誰も止めようとしない。藤嶋建設は淀んでいた。 俺は白川茉莉の手を掴んで止め、警備員に指示して取り巻きを逃がさないように指示すると、白川茉莉も遅れてやってきた警備員二人に預けた。白川茉莉が俺の名を呼んで抗議したが、知ったことではなかった。白川茉莉の言いなりになる義理はないという思いもあった。俺が白川茉莉に従う形になったのは煌がいたからで、その煌が祖母に保護されているならもう遠慮などする気
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白川茉莉とやりあう陽菜の姿は、流石はあのアシュフォード先代夫人の孫娘だと思わせた。ことあるごとに「品がない」という白川茉莉よりもよほど品があった。陽菜がライブ配信をされていたことを説明すれば五人はギョッとした目で田山を見た。自分たちでも品のない発言をしていたと自覚していたのだろう。―― 誤解しないでほしいの。ちょっと不安でお友だちに相談していただけなのよ。陽菜と俺の距離が近すぎることに不安を覚えていたと白川茉莉は言った。煌は手元にいないのに抜け抜けとよく言うなと思ったが、煌のために白川茉莉の我侭を聞いていただけだが白川茉莉の中でそれは俺が彼女を愛しているからという考えに変わったのだろう。なんだその誤解。話にならない。好きなようにしてくれ。何もかも面倒臭くなって、申しわけないこと続きだけど陽菜に丸投げした。 陽菜は白川茉莉を煽った。俺と結婚するためのなりふり構わない様子を「ナイスガッツ」と称したことは、優雅さを売りにしている白川茉莉にとって屈辱だったらしい。陽菜が再登場した父の誕生日パーティー以来、うちの社員も影で白川茉莉を笑っていたから、人の評判を何よりも気にする白川茉莉は社員に影で笑われていたことも「ナイスガッツ」に重なったのだろう。――白川さん、あなたは私と藤嶋さんの関係を完全に誤解しています。白川茉莉は鼻で笑って兄妹かと笑った。いつもみせている優雅さの欠片もなかった。―― 私と蒼は元夫婦よ。―― 離婚したての、ホカホカの元夫婦よ。勝ち誇った顔で堂々宣言する姿はまさにヒロイン。……ホカホカの元夫婦ってなんだ? 陽菜の宣言で、白川茉莉は俺の愛人になった。NTRがブームの時代、NTR女となった白川茉莉に軽蔑の目が大量に向く。白川茉莉は逃げるように会社を出ていった。失笑がその背中を追ったが、白川茉莉が完全に退場すると周囲の目は俺と陽菜に向いた。――朝霧陽菜が暴行されたから副支社長は離婚した。そんな発言に怒りがわき、その男に詰め寄ろうとしたところを陽菜に止められた。平気なふりをしていたがその手は震えていたから、俺は陽菜の手を取ると個室になっている打ち合わせスペースに行き、扉を閉めて鍵をかけた。――ごめん。俺は陽菜を抱きしめた。ずっと思っていた。俺と結婚しなければ陽菜はこんな目に合わなかった。こんな目にあ
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広報部の渡辺が提出してくれた白川茉莉と陽菜を攫った男が二人並ぶ写真。二人は談笑し、かねてからの知人のように見えた。でも黒崎妹に見てもらったら、社交の範囲内ではないかと言われた。つまり先入観次第で解釈は変わる。だから俺たちは先入観を与えてしまえばいいと思った。戸田刑事も頑張ってくれているのは分かっているが、白川家の厄介さは俺がよく分かっていた。多分、陽菜も同じだったのだろう。俺と陽菜。どちらがSNSにその写真にあげるかで揉めた。俺はそのような汚い行為は陽菜を白川茉莉と同列にしてしまうから嫌だった。でも陽菜は頑なで、結局陽菜を俺には止められなかった。陽菜はその写真をSNSにあげた。コメントはシンプルに【パーティーに来ていたみたい】とだけ。そして俺たちの期待通り、コメント欄は荒れた。陽菜に対する卑猥なコメントには腹が立ったが、狙い通りあの事件の裏にいるのが白川茉莉と臭わせることができた。こうなるとみんなが名探偵を演じたくなる。二人が会うならどんなところがあるのか。ラブホに決まっているというコメントばかりだったけれど、クラブの名前や二人に繋がりのある友人の名前など有力な手掛かりが集まっていった。【駅前のラブホに藤嶋蒼とマッチョな男と三人で入っていくのを見た】この内容は本当かと聞かれたとき、俺は目を疑った。確かに一見すると俺だが、そこに写っていたのは兄さんだった。そしてマッチョは白川家のあの運転手。戸田刑事に連絡し、警察が発信者に問い合わせて写真データを回収してくれた。白川茉莉の顔に見覚えがあって、芸能人か何かだと思い、男はいつか売れるかもと思って撮ったらしい。自宅の最寄りの駅付近にあるそのラブホがSNSで話題になって、写真のことを思い出したから、お祭り騒ぎに乗ろうとあの写真を投稿したらしい。警察は捜査協力で写真データを提出してもらい、分析した結果、写真が合成ではないことが確認された。 あの写真で兄さんの事件の捜査は一気に進んだ。兄さんと白川茉莉は当時面識らしき面識はなく、白川茉莉を兄さんの転落事件の捜査線上に上げることができなかったからだ。あの写真で白川茉莉を兄さんの転落事件の容疑者候補にすることができた。ホテルに行ったくらいでは有力候補にはならないが、捜査線上には上がった。そしてこの頃に兄さんが目を覚ました。
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