与えられたのは、夢のように甘やかな言葉だった。 まるで、水の中にいるかのよう。イルゼの視界はたちまち揺れた。 自分にはきっと一生無縁だと思っていたもの。けれど、まさか身分違いな彼から与えられるなんて思いもしない。あれは全部優しい嘘だと思ったのに。 こんなに嬉しいことはないだろう。自分だって彼のことを好きだと伝えたい。けれど、うにも言葉が詰まり、上手に話せない。 それどころか、煩わしいほどに熱い雫が頬を伝い、嗚咽が絡み始めてしまい、まったく言葉にできそうにない。 そんなイルゼの様子を見て、彼は立ち上がるなり慌てふためき、イルゼの背を摩る。 「……ぇ、ちょ、ちょっと待て。嘘だろ、ごめんイルゼ、そんなに泣くほど嫌だったの?」 彼にしては珍しく、ものすごい取り乱しようだった。 そんな焦った表情が可愛らしいが、そうじゃない。 違う。と、意志表示に首を振ると、彼は心底安堵したのか「よかったぁ」と呟く吐息が頬を擽った。 「え、じゃあ……なんでそんなに泣くの? やっぱ俺にそんなこと言われても困る? ずっと、あんな昔からずっと想ってたとか確かにだいぶ気持ち悪りぃかもだけど……」 後半にいくにつれて、彼の声が萎んでいく。 それも心底困ったような顔で覗き込まれるので、イルゼは涙を払うように首を振り、改めて彼と向き合った。 「わたしも、貴方を好きになっちゃったから……嬉しいから、私、こんなに嬉しくて幸せに思って……本当に良いのかなって思っちゃったの」 やっと声に出た。嗚咽が絡んで震えているが、それでも聞き取れたのだろう。 彼は安堵の表情を浮かべて、イルゼを抱き寄せると後ろ髪を撫で始めた。 ──ここで過ごした日々も、遠い修道院に行って早く忘れた方が良いと思ったこと。だけど夏が終わらなければいいって思ったから、離れるのはとても寂しいって思って
Última actualización : 2026-01-14 Leer más