Todos los capítulos de 罪の鎖に繋がれた没落令嬢は猟奇領主の執愛に溺れる~ローレライの夜想曲~: Capítulo 61 - Capítulo 70

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第60話 夏の終わりを止めた甘やかな口付け

 与えられたのは、夢のように甘やかな言葉だった。 まるで、水の中にいるかのよう。イルゼの視界はたちまち揺れた。  自分にはきっと一生無縁だと思っていたもの。けれど、まさか身分違いな彼から与えられるなんて思いもしない。あれは全部優しい嘘だと思ったのに。 こんなに嬉しいことはないだろう。自分だって彼のことを好きだと伝えたい。けれど、うにも言葉が詰まり、上手に話せない。 それどころか、煩わしいほどに熱い雫が頬を伝い、嗚咽が絡み始めてしまい、まったく言葉にできそうにない。  そんなイルゼの様子を見て、彼は立ち上がるなり慌てふためき、イルゼの背を摩る。 「……ぇ、ちょ、ちょっと待て。嘘だろ、ごめんイルゼ、そんなに泣くほど嫌だったの?」  彼にしては珍しく、ものすごい取り乱しようだった。 そんな焦った表情が可愛らしいが、そうじゃない。 違う。と、意志表示に首を振ると、彼は心底安堵したのか「よかったぁ」と呟く吐息が頬を擽った。 「え、じゃあ……なんでそんなに泣くの? やっぱ俺にそんなこと言われても困る? ずっと、あんな昔からずっと想ってたとか確かにだいぶ気持ち悪りぃかもだけど……」  後半にいくにつれて、彼の声が萎んでいく。 それも心底困ったような顔で覗き込まれるので、イルゼは涙を払うように首を振り、改めて彼と向き合った。 「わたしも、貴方を好きになっちゃったから……嬉しいから、私、こんなに嬉しくて幸せに思って……本当に良いのかなって思っちゃったの」  やっと声に出た。嗚咽が絡んで震えているが、それでも聞き取れたのだろう。 彼は安堵の表情を浮かべて、イルゼを抱き寄せると後ろ髪を撫で始めた。  ──ここで過ごした日々も、遠い修道院に行って早く忘れた方が良いと思ったこと。だけど夏が終わらなければいいって思ったから、離れるのはとても寂しいって思って
last updateÚltima actualización : 2026-01-14
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第61話 唾液の橋で結ばれたふたり ※

 まるで砂糖菓子のような甘く触れ合うような口付けが熱を帯びるにはそこまで時間がかからなかった。 次第にそれは角度を変えて、食むような口付けに……。  そうして間もなく、ほんのり開いた唇の隙間に彼の舌が滑り込み──甘い口付けが、深い調べに変わり果てる。 彼に抱き留められ、頤を摘ままれているので、逃げ場がない。  キスなんて初めてのこと。まさか自分がこの当事者になる日が来るなんて。まるで夢でも見ているかのようにイルゼは思う。 けれど、薄く瞼を開ければ睫の長い丹精な面輪が映り──これは嘘でも夢でもないのだと思い知らされる。 それでも、こうして抱き締められ、口付けされるのは胸の奥底から仄かに温かなものが込み上げ、途方もなく幸せに思えてしまった。  まるで、溺れるような口付けだった。イルゼは堪えきれず、縋るように彼の背に手を回す。 それに答えるかのよう。ルードヴィヒは抱き留める力を更に強めて、イルゼの唇の中を甘く貪った。 ぬめりとした塊が歯列を沿う。そうして、舌を見つけ出すと甘く吸われて、すべてを絡め取るように、彼の舌がねっとりと絡んだ。 ちゅ。じゅる──ぴちゃ。と、淫靡な水音が脳裏にひどく響く。 「んぅ……ぁ」  やがて、唇の隙間で漏らす息の音が甘くなり始めた頃、腹の奥に甘い熱が宿るのを自覚してイルゼが脚をもじもじと摺り合わせると、ルードヴィヒはゆったりと口付けから解放した。  まだほんのりと舌を出したまま。お互いの舌には銀の唾液の橋がかかり、淫靡な光を放っている。 しかし、どこか物欲しそうな彼の表情が、恐ろしいほどに妖艶な色香を放っているので、イルゼの鼓動が激しく高鳴った。 だが、彼は一言も発さず──イルゼを軽々と抱き上げると、ベッドへ運び、丁重な所作でシーツの上に下ろした。  しかし、ベッドに……。 彼がこれから何をしようとしているかどこと
last updateÚltima actualización : 2026-01-15
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第62話 初めに震え高鳴る胸の音 ※

 そうして、ルードヴィヒはイルゼの唇を啄むように軽く食むと、無骨な手を首筋から胸元に滑らせて、胸の膨らみを確かめるように、丸く揉みしだく。 ツゥ──と、胸の中心に指を滑り、指先で軽く突起を擦られると、甘い快楽がじんわりと広がった。イルゼは背筋をピクピクと震わせ、彼の腕に縋るように抱きつく。 「あんっ……るい、そこだめ」  少し前に読んだ恋愛小説の知識の中で、愛撫のことはいくつも触れられていたが──実際にされると、こんなにも鮮烈な刺激だなんて。 首を振ると、ルードヴィヒは少し困ったような顔でイルゼの顔を覗き込む。 「だめなの? でもイルゼのここ……気持ち良くなって、ツンって尖ってきてるよ」  そう言って、彼はナイトドレスの上から主張する突起を知らしめるよう。指先で円を描いたのち軽く摘まみ上げ──母指と示指で挟むとやんわりと潰すように擦る。 「はぅ、んぁ……ぁあう」「可愛い声。イルゼ気持ち良いね……でももっと気持ち良くなろ?」  そう言って、彼はイルゼの腰を抱き、ナイトドレスの裾に手をかけると、さらりと脱がしてしまった。 身に纏うものは、肌着のシュミーズとショーツのみ。 裸同然の格好に羞恥で顔が熱くなるが、彼はそんなイルゼを見て、シュミーズの紐に手を掛けると、それも流れるように脱がしてしまった。 「あっ、あ……ルイ」  慌ててイルゼが胸元を手で覆い隠すが、彼はやんわりとその手を剥がすと、またも指を絡めて柔らかく繋ぎ止める。  胸を彼の前で晒してしまっている……。 痩せ細った体躯なので、胸は小ぶり。自分の体型なんてコンプレックスでしかないので恥ずかしくていたたまれない。 イルゼは真っ赤になるが、彼はイルゼの裸体を恍惚として眺め──「綺麗だよ」と蕩けるほど甘く告げる。 それも面輪もいつ
last updateÚltima actualización : 2026-01-16
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第63話 愛液の糸が白銀の瞳に輝く ※

  間髪入れずにだった。彼は、濡れて透けたイルゼのショーツのクロッチを指でひっかけて捲った。 露わになる、濡れそぼった割れ目に彼は恍惚と目を細め──ぬらりと唾液に濡れた舌をほんのりと出す。 「味あわせてね」  なんて、甘く囁いた息が淫らな芽を擽った──その瞬間だった。 ぬめりを持った彼の舌が花芽に絡み付き、甘い官能が閃いた。 「あんっ──ぁああ」  転がし弾くよう愛でられると、腹の奥から甘い熱が込み上げる。 そうして、今度は左右にスライドするよう大きく舌を動かされると、なんとも言えぬ甘い痺れが脊髄を伝って脳を痺れさせる。 しかし、彼がこんな場所を舐めるなんて……。 「あぅ、ん、んぅ……るい、るぃっ」  恥ずかしくなって、イルゼが彼に手を伸ばすとその手を両手で絡めるように繋がれた。 唾液で濡れそぼった舌を出し、熱欲に揺らぐ白銀の瞳でイルゼを見つめ──彼はまるで見せつけるように舌を厭らしく動かして愛撫する。  ──ちゅ、じゅ。むちゅ。と甘くも淫靡な調べを奏で、彼が僅かに花芽から唇を離す。出しっぱなしの舌と、官能を主張してふっくらとした花芽との間に粘着質な糸が輝いた。  そのさまは、視覚的にあまりにも淫靡だった。 けれど、彼はまだ、舐り足りないようで、もう一度イルゼの興奮を訴える淫らな芽に甘く食むような口付けをする。 ツゥ……と舌を下方に這わせ、今度は今も愛液を分泌させ潤わせる蜜穴へと辿り着く。 そうして、穴の周りを丸くぐるりと舐った次の瞬間だった。 隘路を掻き分けるよう、彼の舌がゆったりと挿ってきたのだ。 「あんっ──ぁあああ!」  まるで、内側の襞の感触を確かめ、ゆったりと解されていくかのよう。だが、思いのほか解れているのか、彼の舌は更に奥へと入ってしまう。 「あん、ぁ
last updateÚltima actualización : 2026-01-17
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第64話 痛みさえ甘い初体験 ※

 彼は下衣をずり下ろすと同時──ぶるんと怒張した雄芯がまろびでた。 それは興奮を訴え、既に鈴口からは透明な体液を吐き出しぬらぬらと厭らしい光沢に包まれている。  初めてまともに男性のそれをみた。イルゼは固まってしまう。 奇人変人の猟奇領主とはいわれるが……ルードヴィヒの面輪はどこか穏やかそう。とても綺麗な男性だ。 線が細く綺麗な男性ではあるが……彼の持つそれは、なかなかに太く逞しい。 「イルゼ、あのさ……」  その声にイルゼがはっと我に返れば、彼は目の縁を紅潮させて、頬を掻く。 「じっと見られたら俺でも恥ずかしいんだけどなぁ」  ──えっち。 なんて付け添えられて、しまい、イルゼは一瞬にして真っ赤になる。 「違うの、その……でもごめんなさいっ」  そう謝ると、彼は首を振り、イルゼにやんわりと微笑む。そうしてイルゼの手を握ると、そっと自身の中心に触れさせた。 それはまるで別の生き物のよう。硬いとはいえ、その茎はどこか柔らかい温かさがある。自分の手首とそう変わらぬ太さだろう……。 イルゼは真っ赤になって彼のものを見る。 「これがイルゼの中に挿るんだよ。じっと見たら怖くなっちゃった?」  どこか心配げに聞かれて、イルゼがそっと頷くと、彼は柔らかく笑んで、イルゼの頬に唇に口付けする。 「大丈夫。イルゼが怖くないようにうんと優しくするよぉ……」  いいかな。なんて訊かれて、頷くも間もなく──彼はイルゼの脚の合間に入り、膝を持ち上げると、熱の楔を蜜口に宛がった。 そうして、入り口で愛液を絡め、いざ挿入されるかと思った途端に彼は肉冠を上部に滑らせ、イルゼのふっくらとした快楽の芽に擦り付ける。 ちゅ。ぷちゅ。|厭《いや
last updateÚltima actualización : 2026-01-18
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第65話 奥深くで貪り、溶け合うふたり ※

 それから暫く、ルードヴィヒは動くこともなく、ただ甘い口付けをイルゼに与え続けていた。頬を撫で、髪を撫でて……心底愛おしむような甘い口付けにイルゼは陶酔の波にのまれそうになる。 その狭間にいると、先程まで感じた痛みは無くなって、甘い疼きだけを腹の奥に残す。「あんっ……ふ、んぅ……るい……」 口付けの合間で彼を呼ぶと、ルードヴィヒは緩やかに唇を離して、愛おしげにイルゼを見つめた。「可愛いねイルゼ……きゅうきゅう俺のこと締め付けてる。もう痛いのは大丈夫?」 そう訊かれて頷くと、彼は「動いてもいい?」なんて甘く囁くので、イルゼは小さく頷いた。 そうして間もなくだった。イルゼの膝を掴み、大きく脚を開かせるとルードヴィヒは緩やかに抽送を始めた。 その感覚は、体内の襞を熱く蕩けさせるよう。 破瓜のひりつく甘い痛みとは別に、背筋に甘い痺れが這い、イルゼの唇からは自然と甘えた嬌声が漏れる。「あんっ……ぁあ、あぅ、るい、るいっ」 堪らぬ感覚だった。イルゼはシーツを掴み、彼を見上げると。甘い情欲に蕩けた白銀の瞳とはっきりと視線が絡み合う。「イルゼ……可愛い。ねぇ見て、俺たちちゃんと繋がってる」 そういって彼が身体を僅かにそらせると、結合部がはっきりと見えてしまった。 ふっくらと膨れた淫らな芽。その下の蜜口に彼の怒張が刺さっている。 それは、破瓜の血液ととも、ぬめりを持った愛液が絡み――二人繋がる結合部は、薄紅の泡が立ち、濃厚な性の匂いをまき散らす。「俺がイルゼの処女奪ったの分かるでしょ」 ぞっとするほどの甘い囁きだった。そうして、見せつけるように彼はゆったりと浅い抽送するが、彼のふっくらとした肉の冠を出したり入れたりとする卑猥な光景が鮮明に見えてしまい、イルゼの頬に夥しい熱が攻め寄せる。 そして
last updateÚltima actualización : 2026-01-19
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第66話 白銀の瞳に溺れる甘い誓い ※

 彼は深い場所で抽送し、その腰使いは次第に烈しいものに変わり果てた。 ぐちゅぐちゅと卑猥で粘っこい水音が聴覚を支配し、彼の息づかいが間近に落ちる。 こうして深い場所で抽送されると、彼の身体に花芽を押しつぶされる感覚もあり、これまでに感じたこともない、甘い悦楽が背筋をゾワゾワと甘く痺れさせる。「っく……でも、今はだめだね……色々段取りできたら」 ──そしたら、イルゼのナカにいっぱい俺の注がせて。 なんて、彼は余裕なく囁くとイルゼの顔を覗き込んでほんのりと微笑んだ。 綺麗な彼だ。けれど、そんな表情はやっぱりどこか可愛らしくイルゼの胸を甘く締め付ける。 痛みなんてもう感じなかった。心の中を埋め尽くすのは途方もない多幸感ばかり。 イルゼは縋るようにルードヴィヒの背に手を回し、甘えた嬌声を張り上げる。「あんっ……るい、るいっ! ぁあ……!」 そうして間もなくだった。彼の屹立が体内でぶるりと一際大きく震えた瞬間にイルゼの脳裏に立った白波は弾けた。「んぁ、あぁあああああ!」 まるで体の中の力はすべて抜けてしまうかのよう。甘い絶頂の波が押しては返す。その狭間、何か押し殺すような声を上げたルードヴィヒは、イルゼの体内から怒張を引き抜く。 間髪入れず、腹の上に熱い滴が注がれた。 月明かりのもと、自ら自身を扱き、射精する彼はひどく淫靡だった。余裕のない快楽で蕩けた端正な顔。白銀の瞳は情欲に揺れたまま。 そんな綺麗な面輪に似合わず、扱くものは凶悪で……。先程自分とつながり合っていた彼そのものすべてをまじまじと見てしまったイルゼは、ひどく鼓動が高鳴った。 それでも、感じるのは底知れぬ愛おしさばかり。 そんな彼はというと、少し照れたような顔をするもののすぐにイルゼの顔を覗き込んで、唇に食むような口付けを与えた。 そうしてやんわりと唇が開くと、再びぬ
last updateÚltima actualización : 2026-01-19
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第67話 奪った純潔と守りたい想い

 ※※※ 貪るように彼女を抱き、甘い熱が緩やかに冷め始めたのは、柱時計が四つ鳴った頃。空が白んでからだった。 ルードヴィヒが彼女の体内から自身を引き抜き、二度目の後処理をして間もなく。すっかり疲れさせてしまったのか、イルゼはすぐに眠りに落ちてしまった。 そんな甘やかな行為の余韻に浸りながら、ルードヴィヒは眠りに落ちたイルゼの髪を撫でていた。 何度も名前を呼んでくれた小さな唇。 今は固く閉ざしている、涙で蕩けた深い青の瞳。 必死に自分を抱きしめてくれた華奢な腕。 彼女の何もかもが愛おしくて、胸の中の暖みと幸福感はいつまでも消えそうになかった。 しかし同時に、胸の奥に小石が転がり込んだよう、どうにも不審に思えることがあるのは事実だった。 ──イルゼは正真正銘の処女に違いなかった。 だが、明らかに不自然に感じたことがあったのだ。 そう。それは彼女の内部に触れたとき。 散々にほぐされているような柔らかな感触と彼女の反応に少しだけ戸惑いを覚えた。 普通であれば、処女は膣内で快楽を得られることなんて、ほぼ皆無に等しい。 こうも反応が良くなるのは、何度か行為を重ねてから。媚薬を盛れば話は別だが、そんな小細工は当然していない。 ああも初な反応を示すイルゼだ。 感情が完全に欠落していた彼女が自ら花芽を触れて自慰行為にふけることだって、まず考えにくいのに……蜜穴に指を差し入れるなんて到底思えなかった。 そこでふと、よぎったのは「性的虐待の疑い」だ。 否、彼女の悲惨すぎる家庭環境を掘り下げて浮かぶものは、もはやそれしかないだろう。 ワケアリな自分が言うのもなんだが、彼女だって相当なワケアリだった。 そもそも再会のきっかけが「意地悪な義姉に怒りが抑えられなくなり、包丁を振り回したことで捕縛」が発端というくらいなのだから……。 イルゼの義姉は娼婦だ。 嫌がらせとして、男に頼んでイルゼに厭らしいことをさせたことがあってもお
last updateÚltima actualización : 2026-01-20
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第68話 元盗賊に託す真実

 ──硝子窓の外は、空が完全に白みつつあった。もう間もなく陽光が差し込むだろう。 薄明るくなりつつある空を横目に、ルードヴィヒは燭台を持ち、真っ暗な廊下を歩み、冷たい石の階段を静かに下りていく。 向かった先は、城の中間層。使用人たちが居住する階層だった。 少しばかり廊下を歩んで幾許か。一室を叩扉もせずに開けると、ルードヴィヒは燭台をそっと吹き消し、ツカツカと部屋の中に踏み入った。 窓際には簡素なベッドが一つ。こんもりと上掛け布団がふくれあがっているので、間違いなく就寝中……と窺える。 しかし、ルードヴィヒがもう一歩を進めたところで、ベッドの中にいた者は音もなく跳ね起き、どこから取り出したのか刃を瞬時に構えた。それに感心したと同時だった。 すぐさま背後に人の気配とギラリと金属質な光沢が見えた。僅かに視線を下げると、銀色のナイフが朝の薄明かりに冷たく光っている。 しかし、ルードヴィヒはそれに驚くこともせず、すぐに後ろを振り向いた。「おはよ。っていうかさぁ……それ、物騒だからいい加減にやめろし」 やれやれといった調子で言えば、ため息と同時に首元に当てられたナイフはすぐに引っ込んだ。「いやいやいや。あんたが〝城に土足で踏み入る奴がいたら、容赦なく排除しろ〟って言ったじゃん? 元盗賊が寝首を刈られるほどダセェことはないだろなんて散々に煽ったのは誰だよ」 背後を取っていたザシャが心底呆れた調子で言う。「ええ、そうですよ。ついでに、僕たちが鈍らないように〝鍛錬になるなら構わない〟って貴方自身が言ってたではないですか?」 片や、ヘルゲはナイフを鞘に戻し、懐にしまう。こちらもどこか呆れた調子だった。「まーそうだけどさぁ。毎回これやられるのはもう、さすがにウザイっていうか……」 ──もういい加減に俺の足音くらい分かれよ、減給するぞ。 なんて、心底気怠げに言えば……二人
last updateÚltima actualización : 2026-01-21
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第69話 香油の選択と秘密の計画

 午後六時──帳簿を付け終えたルードヴィヒは気怠げに伸びをして窓の外を眺めていた。 同じように今日の仕事を終えたのだろう。葡萄畑の農夫たちが皆、帰路につくためになだらかな斜面を歩んでいる姿が見える。 イルゼと特別な関係になってから早三日──仕事を終えるこの時刻からがルードヴィヒにとって幸福な時間になりつつあった。 ようやく見つけ出したローレライ。 そしてめでたくも彼女と思いを通わせ合った。 その幸福は三日経過しても冷めぬもので、できることなら二十四時間べったりとイルゼに引っ付いていたいとさえ思った。 しかし、事務仕事が山のようにあるので当たり前のように不可能に違わない。 すべてが税金絡みだが、内訳は多種多様。 まずは領地の外れにかかっている古い橋の架け替えの件。南側の丘陵を切り開き、そこにも新たに葡萄畑を設ける件。その人件費のことや、ワイナリーの整備の改善他。 自分が大して外を歩き回らないので、こういった要望をヘルゲやザシャが自警団や街長から聞き出して持ち帰ってくる。 それを考えて片っ端から消化する役割が自分だが……朝から通しで暗算ばかり。時折手紙を書くこともあるが、基本的に椅子にかけているのでそこらじゅうが凝り固まって仕方ない。 だが、今日はもう終わりだ。急ぎでないものは明日改めて手を付ければ良い。 今夜もイルゼと食事をして、一緒に眠る。そんな安らぎの時間が楽しみだからこそ、妙に仕事に張り合いが出たとルードヴィヒは自覚した。(とっとと湯浴みでも済ませちゃおうかな。湯、運んで来ないと) 固くなった肩を回しながら、ドアノブに手をかけようとしたと同時だった。 ガチャリと先にドアが開き、少し驚いたルードヴィヒは一歩下がると、ヘルゲが部屋に踏み入って来た。「ミヒャエル。今良いですか」「ノックしてよ……」 ぶつかるところだった。と少しふて腐れると、ヘルゲが意地の悪い笑みを浮かべる。「おや。貴方がしないで良いと言ったじゃないですか。何を今更」
last updateÚltima actualización : 2026-01-22
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