死化粧師 人生の終わりに、最期の声を聞く者 普通はさ「ヒト」の声だと思うんだけど 俺は今なぜか 「鬼の最期の声」を聞くハメになっていたーーーー 「さ! 依頼だよ、気合い入れていこっか!」 夏妃のカラッと明るい声が響く 見ると、俺よりデカイ大剣をブンブン振り回していた。 いやいや聞いてないし。 俺の初陣は、せめて人間がいいし!「あのさ、俺まだ死化粧師としては半人前だから、人ならともかく鬼はちょっとっ」「あの子、人だよ」 「人? どうみても角生えてるけどっ」 そう、2本のツノが赤鬼の頭部から、そびえ立っていた。 ゆっくりゆっくりと、あの巨体が近づいてくる……! 雪を踏みしめる足取りは、時折ふらついて、おぼつかない。怪我でもしているのかな? まるで酒に酔って酩酊状態のような、足さばきだ。 「あの鬼さ、怪我してんのかな?」 俺は夏妃にたずねる。すると彼女は、持っていた大剣を俺にスッ……と渡した。「この剣、持っててくれる?」 「え、俺が?」 「私が声を聞く。千年はさ、もしもあの子が暴れ出したら……この大剣で戦って」「いきなり大きな剣とか、使えねーと思うけどっ」 そう、無理だと思った! 俺、運動神経はいい方だと思うけれど、鬼退治なんてやったことねーもん。「グルルルルルルルルルルルル」「言ってる間に、鬼が近づいてんだけどーーーーーーっ!」「この子の声を聞く。千年は補佐して」「は、補佐っ!?」 いうが早いか、鬼の元へと大きく跳躍する……! やっばいだろ鬼だぞ。 死んじまうぞ……っ! 月の輪熊の2倍はあろうかと思う紅き鬼は、もう少し走れば届いてしまう距離まで、近づいていた。ふらついているとはいえ、こんな巨体に腕でもブン回されたら、人なんか飴のように曲がってしまうだろう。 あろうことか夏妃は、跳躍からスタンと着地し、ゆっくりと鬼を見上げている。 まるで、迫りくる鬼を待っているかのようだ。 危ねえっって!「グオオオオオオオオオオオッッッッ」 熊のような咆哮! 巨大な紅い腕がブンッッと夏妃に向かって放たれた。危ない!!!! 夏妃は……まるで子供から身をかわすような気軽さで、しなやかに避ける。すぐに鬼の背後へと回ると、空振りしてうずくまった鬼の頭を、そっ……と撫でた。「君、泣いてるの?」
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