「あたし、一緒に行かないよ。水鏡さま」 鬼と果てた彼女に、あたしはキッパリと想いを告げた。 すると水鏡さまは、不思議そうに首をかしげたの。 「どうして? わらわと一緒に暮らしたいのではなくって?」 「ここで一緒に暮らしたいんだよ。夕月夜はいらないのっ!」 そうよ、この屋敷がいいんだ。 藤の花が咲き乱れる里で、夕月夜も含めていっしょに暮らしたいんじゃないもの。 その言葉をうけて、夕月夜が滑るように中庭へと降りてきた。あたしの背後で冬牡丹が、さやさやと揺れている。蘇芳色の大輪の花が、目の端に映った。そこに銀の髪をひるがえし、紫の着物を召した夕月夜が、スルリと風のようにあたしの眼前に迫る。 そして、あたしの腕をギュッと掴んだの。 「君も連れていってあげるよ、冬に咲く藤の都に」 「はなしてっ!」 片手なのに、なんて強い力なんだろう……っ! ふりほどきたい え、ちょっ、全然ほどけないよ! 夕月夜は、星の瞬く月の下で あたしを冷たく見下ろしたままだ。 「はなせ! 彼女は渡さねーぞ」 千年さまが割って入ってくれた。 血の滲む腹を押さえながら、かすかに震える足で来てくれた……! 痛いんじゃないかな。その姿に、胸の奥が……きゅっと疼いた。 「俺が守る! これより彼女は、俺の式神になるんだ!」 「ほう。たいした度胸だ」 「オン・アビラウンケン!」 晴明様の印を切る声 同時に、鬼童丸が夕月夜の眼前まで疾走する。 抜刀せずに鞘のままの火神剣で、足元を横なぎにシュンと切った! 夕月夜は上に跳躍し、松の木に登ってしまった。鬼童丸は勢いをつけると片手側転をする。 そのまま晴明さまの前に立ち、守るように火神剣をかまえ直した。 一連の動きを見ていた夕月夜は、松の木から華麗に飛び降りる。そうして松の下に立つ、水鏡さまの肩を抱いたの。 「気が変わった。また来るよ、水鏡といっしょにね」 「秋華、今度はともに帰りましょうよ」 懐かしい笑み あたしも、ずっと一緒にいたかったよ……! その言葉を伝えられないままに、彼女は夕月夜が抱き上げて、屋根へと飛んでいってしまった。そうして屋根から屋根へ跳躍し、あっという間に二人は…… 夜の闇に紛れてしまったの──── 「水鏡さま……また逢えるのかな……」 「逢えるさ。心配すんなって!」 見上げると、
Terakhir Diperbarui : 2025-12-11 Baca selengkapnya